南総里見八犬伝は何度も映像化されているので、八犬伝の物語自体にそれ程心動かされない
今回の映画の肝は作者の滝沢馬琴が主人公であり、八犬伝が完成するまでの物語が軸になっていると言うことだろう
はっきり言って、八犬伝の本編ストーリーは邪魔だった。ファンタジー要素があった方が映画的な見せ場が増えるし、8人使われている美男子のファンを動員したい下心は理解しているつもりだ
それにしても、今までの八犬伝のどれより陳腐でつまらなかった
役所広司と内野聖陽が馬琴と北斎を演じられては分が悪かろうと同情したいところだけど、それにしても見劣りが過ぎる
夢落ち程度に出て来るならまだしも、ダイジェスト版であの下手な芝居を見せられるのは辛い
あの本編部分をやめて、馬琴の半生が深く描かれていたなら傑作になったんじゃないかな
史実はどうだか知らないけど、鶴屋南北だけじゃなく歌川広重まで絡ませて、当時の天才たちが考えた虚と実に踏み込んだら相当見応えがあっただろう
正義が報われる事を信じて筆を取り続けた馬琴の気高さにも感服した
隠れた名演は馬琴の女房を演じた寺島しのぶだと思う。始終、口汚く亭主と北斎を罵る気風の良さで笑わせてくれたが、今際の際に見せた凛気の表情は流石としか言えない
それにしても、もったいない作品だ