映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

若おかみは小学生

2018-10-16 20:43:06 | 新作映画


信頼している方のブログ記事を読んで、観ても良いかなとは考えていました。
それでも当然抵抗ありました。題名があまりにも幼稚ですし、今更文部省特選と謳われてもね。
そうこうしながら見逃して後悔した作品も沢山ありますので、この作品もその中の一本になる可能性大であったのですが・・・。





日曜日の朝9時過ぎ、150人くらいの座席が5割くらい埋まっていましたでしょうか、殆どは小学生(それも低学年)連れの親子です。いつものように最前列に座る勇気がなくて3列目に席を取りました。それでも悪目立ちをするかと思いちょっぴり恥ずかしいのですが。

いきなり主人公の女の子は父と母を亡くしてしまいます。
児童文学だと聞いてますし、小学生をメインターゲットにして作られているのだから、あまりの展開に唖然としてしまいました。今時の子はこのくらいのインパクトがないと物語に乗ってきてくれないのでしょうか?
それでも救いは優しくも頼りになるおばあちゃんが居た事です。温泉旅館の女将だから作法にはうるさいけど気風の良いおばあちゃんです。旅館で働く女中さんも板前さんも気持ちの良い人です。わたくしもそこそこ大きな温泉地で生まれ育ちましたし、友達の家が温泉旅館を営んでたりしましたので温泉旅館けっこう詳しいですよ。(アルバイトもしましたしね)

何より女の子にとって心強かったのは、同い年くらいの男の子と女の子の幽霊そして子鬼でした。受け入れてしまえばどんな悩みも打ち明けられる親友になってゆきます。このあたりが児童文学であるし、アニメだからこそ違和感なく観るものの心に飛び込んできます。
幽霊たちの応援を受けながら若女将として成長してゆく姿を、わたくし達はあたたかい気持ちで見守ります。子鬼が引き寄せた心に傷を抱えるお客さんを丁寧に心こめて接客していくことが若女将の成長にも繋がってゆくのですね。この映画を観た子供たちもここのところを感じとって欲しいな。母を失って自分の殻に閉じこもる子や占い師の自分に疑問を感じている女性も若女将の接待を受けて前向きに歩き始めます。父母の死亡事故の原因となったトラック運転手の挿話は泣いちゃいました。
ライバルの大旅館の娘とも心通じ舞う神楽は晴々しく、こんな若女将の居る温泉旅館なら泊まってみたいなと思うのでした。

かの宮崎駿だったか高畑勲だったか、アニメは子供のために作っていると聞いたことがあります。
日本ではいつしかアニメは大人のオタクに喜ばれる文化の側面が大きくなってしまい、単純に子供のためのアニメ作品はドラえもんと妖怪ウオッチみたいなキャラクターを楽しむだけになりつつあります。キャラを介して学んだり感動したりすることもあるだろうからそれはそれで良いと思うけど、一年に一度くらいはこんな映画も観て欲しいと思うのです。わたくし達大人が子供に観てもらいたい良いものを選択する度量をまず身につけなくてはなりませんね。

監督は存じ上げません。
脚本の吉田玲子は「けいおん!」はじめとする京都アニメーション作品で馴染み深いので、今回も期待に違わずプロフェショナルな仕事でした。
声優に関しては全く知識ありませんが、主人公織子をあてた星蘭ちゃんが上手だったのには驚きました。今時の子役は本当に上手です。