コロナ騒動が長引いて、図書館がずっと閉鎖されている。
片道1時間40分の通勤に欠かせない小説を借りることが出来ず困っている。
本は買わずに借りるものとして30年以上過ごしてきたが、お気に入りの作家のお気に入りの作品だけは手元に置きたくて、古本屋で見かければつい買ってしまうこともある。
この三作がそれ
「雨鱒の川」
貧しい母子家庭ながら絵を描く事と魚捕りに夢中な少年心平と、裕福な造り酒屋の一人娘として育つが耳の不自由な少女小百合のお話し。二人には会話がなくとも意思が伝えあえる心の疎通がある。青年になっても心平には小百合がいなければ、小百合には心平がいなければ生きていけない。
番の雨鱒に約束したように、二人は周囲の反対や困難な環境を乗り越えて、初恋は東北の川を下り大海原を目指す。
「ららのいた夏」
何よりも走ることの大好きな高校生ららと、野球に明け暮れる高校生純也の青春物語。
学校のマラソン大会で出逢った二人はその場で惹かれ合う。ららは天性の才能で一般参加のハーフマラソンを走り、ゆくゆく国際女子マラソンで世界新記録まで出しちゃう。しかし、彼女は白血病を発症してしまう。
湘南の海沿いを走っていると嬉しくてつい笑ってしまうららのキャラクターが素晴らしい。
プロ野球選手になった純也がチャイニーズホームランを打たれることでららの最期を知るラストに涙は止まらない。
「翼はいつまでも」
十和田湖周辺に住む中学生神山君は、ビートルズの音楽と出会うことで引っ込み思案な性格から脱皮して、大人の階段を登り始める。同級生の斉藤多恵は顔に傷がある無口で陰湿な雰囲気のある少女。夏休み、女性と”へっぺ”ができると信じて十和田湖畔でキャンプする神山君の目の前に、山女魚の様な美しい裸体の多恵が現れ暁の湖で泳ぎだす。
彼女の隠された秘密を知ることで、神山君は多恵に恋をする。真っ正面に好きだと叫べる素直な少年、その気持ちにかつての活動的だった自分を取り戻して行く少女の燦めくような初恋物語。
ダメだ。
また東海道線の電車内で泣いている。
在宅勤務だし時差出勤だから車内ガラガラなので、気にすることないか。
思う存分泣いてやる。