青春小説。
主人公が新設の大学の一回生として、入学届を出しに来るところから始まり、卒業とともに終わる見事に青が散るお話です。三月の雨の中、ヒロインである夏子と出会います。
大学の建設も途中なのでテニスコートがまだないため、主人公とテニス部設立に燃える大男金子くんが手作りで作るところから始まることや、主人公が巻き込まれ型でライトノベル(あるいは漫画)の王道展開に面食らいました。芥川賞作家でバリバリの純文学肌の宮本輝が、ライトノベル風の話を書きたくなったのかなあといぶかしみました。
ところが、全国の高校テニス大会のチャンピオンが入学していることを知り勧誘するのですが、テニスをやめたことを知ります。彼は遺伝性の精神疾患を患い、自分が自殺するのではないかという恐怖と戦っていたのでした。
いきなり、純文学テイストが出てきて、さすがだなあと思いました。
青春時代に、プロになる目標もなくただスポーツに打ち込むことが何の意味があるのかと思っていましたが、この作品を読んでよく理解できました。己の領分を知り限界を知ること、それは何かをとことんやってみないとわからないだろうなと思います。
主人公は二流の下のプレイヤーとしてテニスに打ち込み、いろいろな人と出会い、彼らの成功と挫折を目の当たりにしながら、成長してく話です。
話はかわりますが、この本を読むきっかけは自分の中で、松田聖子の一押し曲である『蒼いフォトグラフ』が高速道路のSDで売っていた松田聖子ベスト1、2のどちらにも収録されておらずショックを受たことに始まります。この曲は、『青が散る』がドラマ化されたときの主題歌なのです。ドラマは見ていませんが歌詞が好きでした。本を読んでみると夏子の心情をうたった曲だとわかりました。小説の内容をよく表している歌だと思います。