作家であり精神科医でもある帚木蓬生(ははきぎほうせい)が、松岡子規や香月泰男のエピソードを交えながら、生きる上で大切なことを書き綴っていきます。
ベースにあるのは、森田正馬の教えです。
森田正馬は、明治から昭和初期にかけて生きた精神分析の大家です。
精神分析の始祖はフロイトとされていますが、正馬の場合は、フロイトとはまったく別の角度から斬り込んでおり、東洋的で、日本人としては腑に落ちる考え方です。
今でいうメタ認知などと同じようなことが語られており、50歳をすぎた自分にとっては、わかり過ぎていることが書かれています。しかし、わかっているからと言って、絶えず実行し、有効に使えているかと言えば否であり、たまにこういう本を読んで再認識することが重要だと思います。
現在も精神病患者の治療に使われている森田療法ですが、その考え方は健康な人間にも有効であると著者は言います。
やがて、病の床に臥すことがあっても、この書を思い出せば、生きる力を漲らせ、最後の一呼吸まで有意義に生きられそうです。