梅雨の季節になると、読みたくなる作家さんの本。
この人の文は、窓ガラスを伝う水滴のように、ゆっくりと伝ってゴールまで流れ落ちていくように感じるからでしょう。
上手な文章の書き方などのハウツー本には、センテンスを短くしようと書かれていることが多いけど、この人の文は逆なのだ。
例えば、冒頭の1文が11行続く。なかなか「。」がつかないから、何気ない描写の文でも、どこへ連れていかれるのかわからない緊張感が楽しめます。
時折、挿入される文学作品は、「こういう風に生活の中で味わうのだよ」と言うような文学に対する著者の愛情が示されているように思えます。
雨の日の落ち着いた時間に読書を堪能できる作品です。