ドストエフスキーの小説を精力的に光文社古典新訳文庫で訳している亀山郁夫氏が、文学界のタブーに挑んだ無謀な挑戦。
『カラマーゾフの兄弟』の序文に、これは第一の小説で13年前の出来事が書かれている、もう一つの第二の小説は現在の物語であり、どちらが重要かと言えば第二の小説であると書かれているのです。
しかし、ドストエフスキーは、第二の小説を書かぬまま、急逝してしまったのでした。
『カラマーゾフの兄弟』の評価はすこぶる高く、その続編ともなれば、それ以上の出来が期待されているだけに、どのような内容か気になるところです。
だけれども、巨匠ドストエフスキーが書いたであろう物語を予想し公表するなんて大それたことをする人はいませんでした。それをやってやろうじゃんとがんばって、プロットをなんとかまとめたのが本書です。
さすがに、小説そのものを書くことはできませんでしたので、読者が空想できるように材料を提供して、自分はその材料をもとにこんなプロットを考えました程度の内容になっています。
考えれば考えるほど、大人しめの内容になってしまっていて、ドストエフスキーなら、もっとあばれただろうなと思うのですが、凡人にその程度がわかろうはずがありません。
書かれなかった、史上最高の小説に思いをはせて、いっしょに悶々しようじゃないですか。