わたしは基本的にミステリー小説を避ける傾向にあるのだけど、加納朋子の小説だけはなぜか読んでしまいます。
日常に起こった不可解な現象の種を明かす形式なので犯人探しとは違ったニュアンスが面白いからです。
この短編集は、幽霊話が多く含まれていて、最後に「なあんだ、そういうことか」程度の種明かしがあります。
そこに人間の感情や思いが込められているところが暖かさとなって伝わるのでしょう。
巻末に収められている表題作『沙羅は和子(わこ)の名を呼ぶ』は、少し変わっていて、本物の幽霊というかパラレルワールドが出現します。ボリュームも一番あり、読み応えもありました。久しぶりに面白いと思ったファンタジーワールドです。
少しだけ内容を話すと、「もし妻以外の女性と結婚していたらどんな家庭になっていたか」そんなパラレルワールドからやってきた、生まれなかったはずの沙羅と、現在の妻との間に生まれた和子(わこ)がお互いの世界を行き来しながら、巻き起こす不思議な物語です。