プリズンとは、東京の戦犯収容所である巣鴨プリズンのことです。
主人公の刑務官から見た戦犯たちを取り巻く状況が、淡々とした文章でつづられています。
戦犯とはなんであったか、巷にはイデオロギーによって偏った戦犯像が氾濫していて、よくも悪くもその影響を受けざるを得ない現在でありますが、この小説はミクロの視点から客観的に戦犯のおかれた状況を知ることができます。
巣鴨プリズンで行われた処刑~減刑~そして形骸化したプリズンが時の流れで消滅するまでを見つめていけるのです。
戦犯に興味を持った人は一読の価値があります。
恐らくは、戦犯を理解するうえで新しい切り口が一つ増えるはずです。
以下、余談。
この本は太平洋戦争の戦犯を描いていますが、吉村昭の『赤い人』は、明治維新の内戦に敗れた人々が北海道の開拓に駆り出される姿が描かれています。これも一つの戦犯の姿だと思い、時代によって翻弄される敗者の姿であることに違いないと思いました。