坂道を上ったところにある桜の木。「ソメイヨシノ」と書かれた札が風に揺れている。すっかり葉を落とした桜、周囲の紅葉が「少し恨めしかろう」とちょっと同情しながら見上げたら、小枝の先に膨らんだものが見える。
葉を落としたら「春に向かって備えを初めていますよ」という子どもの蕾たちが空に向かって手を伸ばしている姿に見えた。そういえば桜紅葉という。このソメイヨシノは一足先に紅葉を終え、休むまもなく次に進んでいるのだ。
桜が綺麗に開花する条件のひとつに「暖かくなる前の寒さ」があるという。これからの長い冬を耐え抜いていく、小枝の先の子どもの蕾はそんな姿に見える。
思わずポッケトから手を出し子どもの蕾を撮った。綺麗に咲けよ、と声をかけながら。
(写真:ソメイヨシノの子ども蕾)