所用で朝食を早く済ませ7時前に家を出る。たまに通る交通難所の峠は標高350㍍ほど、早朝の平地からは濃霧に遮られその頂が覆われているのは何度も見ている。峠道、といっても県道で片側一車線、急カーブの連続する難所を上る。中ほどから霧が次第に濃くなる。ライト点灯、夜や大雨以外では始めての経験になる。対向車も大方が点灯運転。
峠のトンネルを越えて下り山あいの盆地に近づくと霧はますます濃くなり、なれない道なのでスピードを落として控えめに走る。見えにくい見えないということが、運転することにどれほど緊張をもたらすか、よく分かった。訪ねた先で聞くと「このくらいの霧は珍しくない」という。山間地と街での違いをまた一つ知った。
気象予報では濃霧注意報が発表される。これは、濃い霧により災害が発生する恐れ、例えば濃い霧により見通しが悪くなり交通障害が予想されるなどの時に出される。注意報発表の基準は、見通しが陸上で100㍍、海上で500㍍以下になると発表される。
減速して走った濃霧の直線個所、3本目の電柱がほぼうすぼんやり、4本目はどんなに目を凝らしても見えない。100㍍の基準に納得している。山の霧にこんな説明がある。「たちまち襲ってきて視界を奪い、晴れるのも早く、その動きは音をたてて去るがごとし」。あれほど緊張を促した道、わずかの間に霧は消え何事も無かったように峠道へ誘う。