AKB48 チームBのファンより

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乃木坂46『おひとりさま天国』を聴く。(ときめき研究家)

2023-08-10 18:56:42 | ときめき研究家
乃木坂46の『おひとりさま天国』は、わかり易く、それでいて色々なことを考えさせる楽曲だ。

友達は皆いつも恋バナばかりで、おひとり様は肩身の狭い思いをして来たが、慣れるとおひとり様は快適で天国だという歌詞。他人の目を気にせず、自分の心地よい生き方でいいのだというメッセージソングである。

ただ、影響力のある乃木坂46が歌うには、このメッセージは10年遅すぎたのではないか。既に現在の日本社会において、おひとり様は充分に市民権を得ており、敢えて世に訴えるという役割は無用と思われる。どちらかと言えば、世の中の風潮に追随して歌を作った感さえある。
という私の感覚がずれている可能性もある。若者の世界では、今もって恋愛至上主義、恋人自慢が盛んで、恋人がいない娘はかわいそう、一人が好きなんて変わり者、そんな空気が残存しているのだろうか。若者は案外保守的だし、空気を読むことに過敏だと聞く。もしそうだとすれば、人気アイドルグループである乃木坂46のメッセージは、少数派であるおひとり様たちにとって救いとなるのかもしれない。

そもそも「おひとり様」には2つの意味がある。1つは、恋人や配偶者のいない独身、シングルという意味。
もう1つは、恋人がいる・いないに関わらず、1人で行動する人という意味だ。独身であっても、1人で食事や映画に行くことができず、いつも友達を誘うというタイプの人もいる。逆に、恋人がいても常時2人で行動するのではなく、1人でキャンプや旅行に行くのを好む人もいる。人それぞれだ。

この歌の「おひとり様」とはどちらの意味なのか? 1番は前者、2番は後者の意味のように聞こえる。恋人がいなくても平気、1人で行動するのも平気。両方の意味でおひとり様は天国だと歌っている。2つの意味をあまり区別せず使っているようだ。恋人がいれば2人で行動するのが普通、恋人がいなければ1人で行動するのが普通、そう決めつけているようだが、本来はそうではないのではないか。

一方で、世の中で市民権を得ているのはどちらの意味の「おひとり様」なのか考えてみたが、主に後者だろう。1人焼肉、1人カラオケ、1人キャンプ、1人旅など、「1人〇〇」は普及して来ている。それは経済的要因であって、1人客を獲得することがお店やサービス提供者の利益になるからだ。
一方で前者の「おひとり様」を貫いて「生涯独身」で過ごす人も増えてきているが、彼らにとって住みやすい社会かどうかは微妙だと思う。少なくとも「天国」ではなかろう。少子化、晩婚・非婚化に焦る政治家たちは、「早婚多産社会(産めよ増やせよ)」への回帰を望んですらいるだろう。そう考えれば、乃木坂46の『おひとりさま天国』は、遅すぎたとも言えないのかもしれない。

曲調はアップテンポで心地いいが、どこか野暮ったく、日本的なサウンドだ。「〇〇音頭」的なノリを感じる。イントロや間奏の俗っぽいメロディーに心を奪われる。特にAメロは何かに似ていると思ったが、NMB48『ワロタピーポー』のAメロに雰囲気が酷似している。
カップルで過ごす日として「誕生日、クリスマス、バレンタインデー、ゴールデンウイーク」を挙げているが、AKB・坂道グループ伝統の「3大きっかけデー」にゴールデンウイークを追加しているのが新しい。
(「3大きっかけデー」は、『気づいたら片想い』『1,2,3,4ヨロシク』などに登場)

ちょっと脱線して、『〇〇天国』というタイトルが付いたアイドルの楽曲を思い出してみる。
『学園天国』(1974年:フィンガー5、1989年:小泉今日子がカバー)は、両バージョンともロック調の派手なアレンジでヒットした。歌詞の内容は、クラスの「席替え」で憧れの彼女の隣になれるか祈るという他愛のない学園ソング。その他愛なさがシンプルでいいのだろう。
『メビウス天国』(1987年:水谷麻里)は、不思議系アイドル水谷麻里の7枚目のシングル。「ヘッドフォン電車で聴くな」とか「ファッション雑誌を持つな」とか「振られて海など見るな」とか、オタク系男子を叱咤激励するような歌詞が秀逸。本人もノリノリで歌っていて、エンディング近くの「メビウス天国」の部分の声が裏返っているのに、制作側もそのテイクをそのまま使う荒業を見せていた。何がメビウスなのかは未だに不明。
『フリフリ天国』(1990年高岡早紀)もアンニュイな雰囲気の隠れた名曲。
アイドル以外では『おさかな天国』(1991年:柴谷裕美)、『サーフ天国、スキー天国』(1980年:松任谷由実)などという曲もあった。

『〇〇天国』ではないが、『天国のキッス』(1983年:松田聖子)、『天国にいちばん近い島』(1984年:原田知世)などもある。AKB48では『天国野郎』(2009年:チームB:センターは浦野一美)。天国ではないが英語だと『稲妻パラダイス』(1984年:堀ちえみ)、『パラダイス銀河』(1988年:光GENJI)も懐かしい。
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