4月9日放送のNHK-BS『AKB48 SHOW』で、藪下柊のピアノ伴奏、梅田彩佳ソロ歌唱による『抱きしめちゃいけない』を観た。非常に感動的で、心揺さぶられるパフォーマンスだった。
『抱きしめちゃいけない』は、2011年の第3回選抜総選挙で22位~40位となった「アンダーガールズ」により歌われた。1位~21位の選抜メンバーが歌った『フライングゲット』のカップリング曲である。当時の記事その1、その2。
メンバーは、梅田彩佳、高柳明音、中川遥香、多田愛佳、平嶋夏海、宮崎美穂、(当時はまだ才能の全容を明らかにしていなかった)山本彩、大家志津香、大矢真那、小森美果、秦佐和子、仁藤萌乃、佐藤すみれ、大場美奈、須田亜香里、前田亜美、松井咲子、市川美織、藤井れいな。個性派ぞろいで、実に錚々たる顔ぶれだ。そんな中、22位でセンターを務めたのが梅田彩佳である。この曲は彼女にとって思い入れのある曲だと察する。
3~4人ずつ代わる代わる歌うミュージックビデオは、1カットの長回しで撮影されていて、その労力に驚嘆した。何よりメンバー全員が楽しそうな様子で、キラキラと輝いていた。
別れの歌をそんなに楽しげに歌ってもいいのかという意見もあろうが、それもまたアイドルポップの醍醐味の1つだと思う。歌詞の世界観は一旦置いておいて、何よりアイドルの輝きを引き出すのが楽曲の務めである。そして、ふと歌詞の内容を気に留めると、楽しげな歌唱の中に一抹の寂しさも感じられるようになるのだ。「泣きながら微笑んで」「顔で笑って心で泣いて」「白鳥は水面下で必死に水を掻いている」ようなものだ。
今年4月1日に、宮澤佐江、梅田彩佳、小林香菜という2期生の3人が卒業した。4月8日には、初代総監督高橋みなみが卒業した。1つの時代の終わりを感じさせる季節だ。
4月9日のオンエア時には既に卒業していることが決まっていた梅田彩佳は、どういう気持ちで収録に臨んだのだろうか。彼女のことを慕っているという薮下柊とアイコンタクトを交わしながら、慈しむように歌った『抱きしめちゃいけない』は素晴らしい歌唱だった。テンポを少し落としたバラード調で、1フレーズごとに歌詞をはっきり歌い上げるスタイル。堂々としていて、慈愛に満ちていて、神々しくさえあった。歌唱技術ももちろん巧みであったが、それよりも自分の歌いたいように自由に歌っている感じが圧倒的だった。
アレンジを変えたバージョンは、えてしてオリジナルには及ばないものだが、今回は違った。オリジナルとは全く違った別の楽曲と言ってもいいくらいの、新しい感動を湧き起こしてくれた。
そしてまた、この曲は、長年応援してくれたファンへのメッセージにもなっていた。「すれ違った中学生たち あの頃どういう夢見た?」とは、今の若いメンバーを見てデビュー当時の自分を思い起こす彼女自身の心境にシンクロしているだろう。
「サヨナラが言えなくなるから」とは、明るくサヨナラを言いたいという彼女の思いを代弁している。
「思い出は味方なんだ いつだって輝いているだろう」とは、彼女がAKBグループでの10年間を「キラキラしていた」と全肯定する今の心境なのではないか。
そして彼女のことを慕っているという薮下柊と最後のパフォーマンスができたことは、薮下へバトンを渡すという象徴にもなったのだろう。
こういう曲を、こういうタイミングで放送した『AKB48 SHOW』の粋な計らいに感謝する。
「アイドルは抱きたい存在ではなく、抱きしめたい存在」という名言(読み人知らず)がある。アイドルに抱く感情はセクシャルなものではない、プラトニックな思いなのだという趣旨だ。『遠距離ポスター』でも「プラトニックでいい」と歌っている。
しかし、ここでは「抱きしめちゃいけない」と歌っている。プラトニックに思っていても、いつかは去って行ってしまう。アイドルを好きになるのも辛いものだ。
ところで、同じ日の番組の中で、NGT48の『Maxとき315号』のパフォーマンスも放送された。
これも素晴らしかった。生歌なので、各パート、各メンバーの声量がまちまちで、臨場感があった。ほとんどのメンバーがまだ声を充分に制御できていない歌唱だが、一生懸命で、歌う喜びは充分伝わった。また、それほど激しいダンスではない「振り付け」だったが、必死に踊りながら歌う姿は、正にアイドルの原点を見る思いだった。特にセンターの「おかっぱ」こと高倉さんは、緊張のあまり固い表情で、踊りもぎこちなく、決めの場面でもふらつく有様で、もう目が離せなくなってしまう。
アイドル道を極めて去る者もいれば、これから始まる者もいる。
ナッキーさんが、前の記事でいいことを書いている。
プロ野球ファンは、豪快な満塁ホームランも見たいし、盗塁やスクイズといった緻密な野球も見たいのだ。
梅田彩佳の円熟した歌唱に泣きそうになったり、NGT48の拙い歌唱や振り付けにたまらなく愛おしさを感じるのも、どちらもアイドルを鑑賞する醍醐味なのだ。
『抱きしめちゃいけない』は、2011年の第3回選抜総選挙で22位~40位となった「アンダーガールズ」により歌われた。1位~21位の選抜メンバーが歌った『フライングゲット』のカップリング曲である。当時の記事その1、その2。
メンバーは、梅田彩佳、高柳明音、中川遥香、多田愛佳、平嶋夏海、宮崎美穂、(当時はまだ才能の全容を明らかにしていなかった)山本彩、大家志津香、大矢真那、小森美果、秦佐和子、仁藤萌乃、佐藤すみれ、大場美奈、須田亜香里、前田亜美、松井咲子、市川美織、藤井れいな。個性派ぞろいで、実に錚々たる顔ぶれだ。そんな中、22位でセンターを務めたのが梅田彩佳である。この曲は彼女にとって思い入れのある曲だと察する。
3~4人ずつ代わる代わる歌うミュージックビデオは、1カットの長回しで撮影されていて、その労力に驚嘆した。何よりメンバー全員が楽しそうな様子で、キラキラと輝いていた。
別れの歌をそんなに楽しげに歌ってもいいのかという意見もあろうが、それもまたアイドルポップの醍醐味の1つだと思う。歌詞の世界観は一旦置いておいて、何よりアイドルの輝きを引き出すのが楽曲の務めである。そして、ふと歌詞の内容を気に留めると、楽しげな歌唱の中に一抹の寂しさも感じられるようになるのだ。「泣きながら微笑んで」「顔で笑って心で泣いて」「白鳥は水面下で必死に水を掻いている」ようなものだ。
今年4月1日に、宮澤佐江、梅田彩佳、小林香菜という2期生の3人が卒業した。4月8日には、初代総監督高橋みなみが卒業した。1つの時代の終わりを感じさせる季節だ。
4月9日のオンエア時には既に卒業していることが決まっていた梅田彩佳は、どういう気持ちで収録に臨んだのだろうか。彼女のことを慕っているという薮下柊とアイコンタクトを交わしながら、慈しむように歌った『抱きしめちゃいけない』は素晴らしい歌唱だった。テンポを少し落としたバラード調で、1フレーズごとに歌詞をはっきり歌い上げるスタイル。堂々としていて、慈愛に満ちていて、神々しくさえあった。歌唱技術ももちろん巧みであったが、それよりも自分の歌いたいように自由に歌っている感じが圧倒的だった。
アレンジを変えたバージョンは、えてしてオリジナルには及ばないものだが、今回は違った。オリジナルとは全く違った別の楽曲と言ってもいいくらいの、新しい感動を湧き起こしてくれた。
そしてまた、この曲は、長年応援してくれたファンへのメッセージにもなっていた。「すれ違った中学生たち あの頃どういう夢見た?」とは、今の若いメンバーを見てデビュー当時の自分を思い起こす彼女自身の心境にシンクロしているだろう。
「サヨナラが言えなくなるから」とは、明るくサヨナラを言いたいという彼女の思いを代弁している。
「思い出は味方なんだ いつだって輝いているだろう」とは、彼女がAKBグループでの10年間を「キラキラしていた」と全肯定する今の心境なのではないか。
そして彼女のことを慕っているという薮下柊と最後のパフォーマンスができたことは、薮下へバトンを渡すという象徴にもなったのだろう。
こういう曲を、こういうタイミングで放送した『AKB48 SHOW』の粋な計らいに感謝する。
「アイドルは抱きたい存在ではなく、抱きしめたい存在」という名言(読み人知らず)がある。アイドルに抱く感情はセクシャルなものではない、プラトニックな思いなのだという趣旨だ。『遠距離ポスター』でも「プラトニックでいい」と歌っている。
しかし、ここでは「抱きしめちゃいけない」と歌っている。プラトニックに思っていても、いつかは去って行ってしまう。アイドルを好きになるのも辛いものだ。
ところで、同じ日の番組の中で、NGT48の『Maxとき315号』のパフォーマンスも放送された。
これも素晴らしかった。生歌なので、各パート、各メンバーの声量がまちまちで、臨場感があった。ほとんどのメンバーがまだ声を充分に制御できていない歌唱だが、一生懸命で、歌う喜びは充分伝わった。また、それほど激しいダンスではない「振り付け」だったが、必死に踊りながら歌う姿は、正にアイドルの原点を見る思いだった。特にセンターの「おかっぱ」こと高倉さんは、緊張のあまり固い表情で、踊りもぎこちなく、決めの場面でもふらつく有様で、もう目が離せなくなってしまう。
アイドル道を極めて去る者もいれば、これから始まる者もいる。
ナッキーさんが、前の記事でいいことを書いている。
プロ野球ファンは、豪快な満塁ホームランも見たいし、盗塁やスクイズといった緻密な野球も見たいのだ。
梅田彩佳の円熟した歌唱に泣きそうになったり、NGT48の拙い歌唱や振り付けにたまらなく愛おしさを感じるのも、どちらもアイドルを鑑賞する醍醐味なのだ。