先にも書いたが、ジャックとエンゾが自らの命をかけて記録へ挑戦を続けていた当時は、人間の潜水限界は全くの未知であった。したがって、彼等、フリーダイビング競技者が自らの身体を実験台にし、深海での人体生理学の調査を行ったと言える。そして、彼等の実績は、水中での人体生理学に対して長足の進歩をもたらした。ここで、人間が水中に深く潜った場合の人体への影響を見てみよう。
深さ10mのプールの底では、水圧が1kg重/cm^2となる。これは、1cm^2という小さな面積に1kg重もの力が働く圧力であり、大気圧と同じぐらいであるが、実際に物体が受ける圧力は「大気圧+水圧」なので約2気圧となる。これゆえ、空気の入った風船を水中に沈めると、10m沈めたところで2気圧となり風船の体積は半分となる。この圧力と体積の関係をボイルの法則といい、スクーバダイビングの教科書の第1ページに出てくる物理学の基礎である。
さて、体外の圧力が増すと、その圧力は血液や体の組織にも伝わる。しかし、人体の大半は水で構成されているために圧縮されることない。そのため腕や脚などは、水圧が上がってもあまり圧力を感じない。一方、肺の内部、副鼻腔、耳の内部の空気は、外部の圧力の増大に伴って圧縮し、そこの部分でスクイーズ、すなわち痛みや組織の損傷が起こる。肺は水圧がかかると横隔膜がせり上がり、同時に、胸郭が変形することで、肺の体積変化に追従するようになる。このためには、横隔膜と胸郭の柔軟性が不可欠である。もし、肺が損傷すればラングスクイーズが発生し、症状としては血痰がでる。これは、フリーダイビングの競技者の多くが経験しているようである。また、深い海の底では肺が水圧で潰されるのを防ぐため、肺胞から血漿が浸透する。それにより、小さくなった肺の中が血漿の液体で満たされる事になる。これをプラズマフィリングという。浮上と共にこの液体は逆に血液中に戻っていくが、若干は残る。このため、唾に黄色い液体が混ざる現象が起こる。このプラズマフィリングは、ラングスクイーズに比べれば特に大きな問題ではない。
鼓膜にかかる圧力は、鼻をつまんで息を吐き出すことで、あるいは唾液を飲みこむことで中耳と喉の奥をつなぐ管(耳管)を開き、中耳の内部の気圧差を無くすことで鼓膜の破裂を回避できる。フリーダイビング競技で,海中に潜って行くダイバーたちが、水中で鼻をつまんでいるのを見かけるが、それは耳抜きと呼ばれるこの動作である。また,ダイビングマスク内部の気圧の増大は,場合によってはガラスの破損を引き起こし怪我に繋がる恐れがあるが,鼻から息を出すことでマスク内部の圧力を上げて外との圧力差を解消することができる。
深さ10mのプールの底では、水圧が1kg重/cm^2となる。これは、1cm^2という小さな面積に1kg重もの力が働く圧力であり、大気圧と同じぐらいであるが、実際に物体が受ける圧力は「大気圧+水圧」なので約2気圧となる。これゆえ、空気の入った風船を水中に沈めると、10m沈めたところで2気圧となり風船の体積は半分となる。この圧力と体積の関係をボイルの法則といい、スクーバダイビングの教科書の第1ページに出てくる物理学の基礎である。
さて、体外の圧力が増すと、その圧力は血液や体の組織にも伝わる。しかし、人体の大半は水で構成されているために圧縮されることない。そのため腕や脚などは、水圧が上がってもあまり圧力を感じない。一方、肺の内部、副鼻腔、耳の内部の空気は、外部の圧力の増大に伴って圧縮し、そこの部分でスクイーズ、すなわち痛みや組織の損傷が起こる。肺は水圧がかかると横隔膜がせり上がり、同時に、胸郭が変形することで、肺の体積変化に追従するようになる。このためには、横隔膜と胸郭の柔軟性が不可欠である。もし、肺が損傷すればラングスクイーズが発生し、症状としては血痰がでる。これは、フリーダイビングの競技者の多くが経験しているようである。また、深い海の底では肺が水圧で潰されるのを防ぐため、肺胞から血漿が浸透する。それにより、小さくなった肺の中が血漿の液体で満たされる事になる。これをプラズマフィリングという。浮上と共にこの液体は逆に血液中に戻っていくが、若干は残る。このため、唾に黄色い液体が混ざる現象が起こる。このプラズマフィリングは、ラングスクイーズに比べれば特に大きな問題ではない。
鼓膜にかかる圧力は、鼻をつまんで息を吐き出すことで、あるいは唾液を飲みこむことで中耳と喉の奥をつなぐ管(耳管)を開き、中耳の内部の気圧差を無くすことで鼓膜の破裂を回避できる。フリーダイビング競技で,海中に潜って行くダイバーたちが、水中で鼻をつまんでいるのを見かけるが、それは耳抜きと呼ばれるこの動作である。また,ダイビングマスク内部の気圧の増大は,場合によってはガラスの破損を引き起こし怪我に繋がる恐れがあるが,鼻から息を出すことでマスク内部の圧力を上げて外との圧力差を解消することができる。