小さい頃、ナスが嫌いだった。野菜の中でまったく味のしないナス。なぜ、大人たちは好んで食べるんだろうと不思議だった。ナスの漬物にミョウバンを使うことも嫌いな理由の一つだった。
ナスに含まれる紫色の色素であるアントシアニンは水溶性で、漬物にすると乳酸と反応して変色してしまう。これをミョウバンに含まれているアルミニウムと反応させて錯塩をつくり、アントシアニンを安定化させるのだ。
・・・大昔からの生活の知恵なんだろうが、食べるものにミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)を入れるというのが生理的に許せなかった。
苦手だったナスの漬物を何とも思わなくなったのは、高校生のころだったろうか。それでも古漬けはイヤだった。
そして、油をたっぷりと吸ったナスの素揚げが克服できたのは、つい最近のような気がする。
ナスの細胞はスポンジ状になっていて、そのまま炒めると油をどんどん吸ってしまう。切ったナスを塩水につけ、水分を抜くことでしんなりし、油が入り込む隙間を減らすことができるらしい。
うん、これならいける。