トロット(速足)あるいはキャンター(駈歩)での騎乗中、あぶみが外れたらどうするか。こんな時の対処法は二つある。一つは、後続が離れてて、しかも地面が安全な草地ならあっさりと落馬。手綱を最後に放し、できるだけ足から着地するように落ちる。そして落ちたら体を回転して受け身。墜落のダメージを少しでも和らげるようにする。
もう一つの方法は、馬の首に縋り付いて停止するのを待ち、止まってからあぶみを履き直せばよい。
この時は、馬の首に縋り付くなど思いつきもしなかったので、ぶざまに落馬。理想とは程遠く、背中から落ちて息がつまった。来た道を引き返すということでなめていたぼくは、頭を締め付けるヘルメットを嫌がってかぶってもいなかった。
起き上がり、骨に異常がないことを確かめる。背中がひどく痛むが打ち身ていどの様子。Flushはと探すと、すぐそばでびっくりしたようにたたずんでいた。落馬は乗り手にダメージを与えるが、乗ってる馬にも精神的なダメージを与える。
すぐにFlushに駆け寄って、「へたくそでごめんな」と謝って顔を撫でてあげた。
Flushは嫌がりもせずに顔を撫でられていた。この時だった。ようやく彼と心が通じたと思ったのは。
心配して駆け寄ってきたトムに大丈夫だと合図すると、ぼくは再びFlushの背中に飛び乗った。それから先の帰り道は、手綱をルーズにしてFlushの好きなようにさせていたが、道草を食うそぶりもなく、リズムのよいトロット(速足)。落馬の後は、彼もぼくに目いっぱい気を使ってくれてるようだった。
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