tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

東京ウェーデルン(12)

2007-03-06 20:06:49 | プチ放浪 山道編
リフトを降りてすぐの斜面で車座になったぼくらは、まずはタナカ氏に斜面の中ほどまで先に降りてもらってそこからビデオを撮影してもらうことにした。Bコースは中級コースということもあって修学旅行生たちで結構込み合っているので、コースの端の比較的すいている林のすぐそばを滑ることにした。最初は個人個人それぞれの自由滑降だ。トップに滑るのはぼく。ぼくは、ポンとポールを交差させると、大きくスキーを踏み出して、ステップしながら加速して斜面をすべり始めた。ターンの際に意識的にステップして加速する。コントロール限界近い速度で、ひざを揃えて半月型の大きなシュプールを2つ描いて速度を落とすと、細かくスキーをスウィングし始めた。これが、伝説の東京ウエーデルンだ。スキー板のサイドカーブに頼ったカービングターンを除いて、能動的なターンの操作には、大きく分けて骨盤の動きを主体とするものと足から下のひねりを利用するもの2種がある。このうち、足から下のひねりを多く用いるものが東京ウエーデルン。どちらかというと、高速のすべりには不向きで女性のデモンストレーターが得意とするターンかもしれない。レーシング系の競技スキーヤーが、ひねり主体のターンを東京ウェーデルンと呼んで馬鹿にしていた時期があったが、コブ斜面を滑る場合には非常に有用な滑り方の一つである。
スキーのエッジで派手に雪煙を立て、瞬時にターンの途中からエッジングを弱めてスキーを前に滑らせていく。・・・ここのゲレンデが、コブのあまりない整地だから思い切ってスキーを前に送り出せる。そしてフィニッシュ。滑りながらフィニッシュをどうしようといろいろ考えたが、ジャンプ系の技をみんなはやるだろうから、ここは目立つため寝技系で行くにした。片足で山足1本のエッジに乗ったまま大回りターンへ、そして踏みかえる。ターン前半、山足にも荷重がかかり始める。山足と谷足の行程差(ディファレンシャル)に備え、雪面すれすれまで腰を落としていくと同時に、足を大きく開いてゆく。目線は雪面より30cmを維持しつつ、板の先端に加重していく。ものすごいスピード感と横Gを感じながら手を斜面にすれすれに伸ばし、加重は今度は徐々にテールに移行。そう、これが幻の技クラマーターンスペシャル。腰の位置をそのままに、さらに踏み変えてもう一つのターンを形成させつつ、トップを斜面の上に向かうまで回しこんでストップ。完璧なクラマーターンスペシャルが決まった。「やった!」と心の中で、叫ぶ。上で見ていた他のメンバーから賞賛の声がかかる。しばし、余韻にひたりながらビデオカメラを構えているはずのタナカ氏の方を見ると、・・・ビデオカメラを構えていなかった。
「すいません・・・転んだのかと思いました・・・・」
「えー撮ってないの!?」
そうなのだ。クレマーターンは腰を雪面すれすれまで落として、やや内傾ぎみにターンをする。バイクで例えるなら、ハングオン。一生懸命膝を入れてバイクを倒してカントを付ける。だから、見る角度によっては、雪面につけたお尻、あるいは雪面にすれすれに伸ばした手を支点に高速回転しているようにも見える。タナカさんに言わせれば、こけてお尻をつけたまま滑り落ちてきたように見えたらしい。残念!!。

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