アメリカの金利引き上げは仕切り直し
アメリカの超金融緩和からの脱出は矢張り容易ではないようです。
FOMCの発表で「忍耐強い(patient)」という言葉が削除されるかどうかが注目されていました。若し削除され、忍耐強くなくなれば、利上げは早くなり、金融緩和の是正は仕上げに入ることになります。
しかし、実体経済というものは、そんなに甘くありません。FOMCは、金融正常化への政策を着実に進めているという証拠に「忍耐強い」という言葉を削除しました。
しかし、発表の内容は、金利引き上げはやるとしても9月以降(6月かという観測は消滅)、金利引き上げ幅は大幅ダウン、「すべては失業率とインフレ率を見て」ということのようです。
こうして「忍耐強い」という言葉は消えても、マネー・マーケットはドル安、株価上昇という 予想された動きになりました。状態は「従来通り」に戻り、いよいよと思われた金融緩和脱出作業は、実質的には「仕切り直し」です。
これも、イエレンFRB議長が、労働経済という実体経済をきちんと見ているからかもしれません。まだまだ離乳食は無理で、ミルクを飲ませ続けないと駄目だということなのでしょう。
赤ちゃんなら、ミルクを飲ませているうちに、自然に離乳食の時期が来るのですが、アメリカ経済には、そうした時間経過による体力増強は中々望めないようです。
世界トップクラスの技術力や資源を持ち、それをベースに世界のリーディング企業が育ち、芸術、文化の面でも華々しいアメリカですが、社会の大きな部分は格差や貧困の問題を抱えるのがアメリカの特徴です。
人口3億、大幅な多様性を持つアメリカです。華々しい部分だけではなく、より大きいマスの部分の実体経済活動への認識と参画、経済は消費によって前進するのではなく、バランスの取れた生産と消費の循環の中で健全な前進をするものといった基本的な認識が、「マネーに偏り過ぎた」アメリカのなかで早く生まれてほしいものです。
ベンジャミン・フランクリンの多くの言葉が示すように、かつてのアメリカはそうだったのではないでしょうか。