昨日8月分の毎月勤労統計が発表になりました。このブログでは家計調査の方を優先してきていますので、昨日は家計調査の平均消費性向が下がったことを書いていましたが、毎月勤労統計も見ていまして、賃金指数で「現金給与総額」も「決まって支給する給与」も「所定内給与」も共に対前年上昇率3.0%だなと確かめて、消費者物価指数の上昇は総合で3.0%、政府がいつも使う「生鮮を除く総合」で2.8%の上昇だから、実質賃金の低下は免れたなと思っていました。
ところが夕刊が来て、実質賃金0.6%の低下と出ているのでびっくりしました。改めてネットで見ると何処も「0.6%のマイナス」と同じ見出しで、名目賃金が3.0%上がって、実質賃金が0.6%下がっている同じグラフもあちこちに出しています。
そう言えば、そうかと気が付いたのは、毎月勤労統計は労働省の統計ですが、消費者物価指数については「持ち家の帰属家賃を除く」指数を使う事になっています。
我々が総務省統計局発表という事で使い、政府も消費者物価指数として発表しているのは「持ち家の帰属家賃を含む」消費者物価指数なのです。
ご承知の方には不要な説明ですが、「持ち家の帰属家賃」というのは自宅に住んでいる人は家賃を払っていませんが、その家を借りていると仮定し場合の家賃支払い額のことです。
それなら、その分は架空の収入として、払わないでいる家賃は所得に相当するという計算になるわけで結局、自分で払い自分がもらう「入り払いチャラ」という事ですが、GDPの計算では、もらって払った計算にしようというのが国際的に一般的な方法という事で、日本もそうなっているという事です。(GDPがその分大きくなる)
その際の家賃の推計は、民間の家賃の相当額という事だそうです。そしてこれが消費者物価指数のウエイトでは15%ほどもあるようで(殆んどが持ち家)、GDPにも消費者物価指数にかなりの影響を与えているようです。
そして、この所、家賃はほとんど上がっていないので、架空の家賃支払いを入れた消費者物価指数の上昇は低くなり、「持ち家の帰属家賃を除く」と、その分上昇率が高くなるのです。
という事で、通常の消費者物価指数の「総合」と「持ち家の帰属家賃を除く総合」をこの1年ほど並べますと下のグラフです。
資料:総務省統計局
確かに、持ち家の帰属家賃は現実に支払いをしているわけではないので、実際の支出の方が合理的という事でしょう、家計調査の消費者物価指数(デフレータ)でもこちらが使われています。
そうしますと、実質賃金の水準はその分だけ下がることになりますので、実質賃金の黒字化は、かなり難しくなるようですね。
このブログでも、解り易いより現実を正確に表した方がいいという意味で、通常の消費者物価指数を使っていますが、これまでの「グラフ」と「説明」を変えた方がいいのかなと迷っているところです。