昨日日銀から企業物価が発表になりました。マスコミは一斉に前年比2.8%の上昇と報道しています。
物価動向の見方の基本として、企業物価の動向は海外物価と円レートの動きが大きく影響し、一方消費者物価は賃金コストの動向に大きく影響されるというのが一般的な見方でしょう。
今、日本経済は、新しい安定成長の時代への準備期間という感じの時期にありますが、これには物価動向、特に消費者物価の動向が大きく関係してくる状況です。
というのは日銀が政策金利を引き上げる条件に日本経済としての消費者物価の2%上昇という項目も入っているようだからです。
ただ、消費者物価は当然輸入物価や企業物価の影響も受けるわけで、この辺りを日銀がどう読んでいるかも重要な点でしょう。
消費者物価指数は総務省の調査ですが、輸入物価、企業物価は日銀が調査をしているのです。今回はそのあたりを見てみたいと思います。
企業物価2.8%の上昇がどんな状況を示しているかです。
そこで輸入物価と企業物価の今年に入ってからの動きをグラフにしてみました。
資料:日本銀行
先ず、赤と青の線が輸入物価です。輸入物価は海外の物価の動きの上に、このところ乱高下する円レートの影響も受けます。円建ての輸入物価は青い線、契約通貨建ては赤い線です。青い線が赤い線より上になるのは、主として基準時点(2020年)より円安になっているからですが、このところの動きを見ると、取引の中で円レートの乱高下はかなり調整されているようです。
灰色の線が企業物価ですが、取引段階でのいろいろな調整があって平準化されてています。
円建ての青線の動きはずっと高めになっていますが、これは主に基準時(2020年)より円安になっているせいで、7月を境に円高になって大きく下がって、9月はマイナス2.6%です。9月には海外物価自体も下げているようです。
企業物価はと言いますと、8月は円高の影響が微かに見えるようですが9月は逆に上がって2.8%です。
上がった原因は、マスコミの解説にもありますがお米の値上がりのようです。これは為替レートは関係ありません。
為替の動きに馴れない石破さんの発言で円レートが乱高下しましたが、これからはそれはないでしょうから赤い線が落ち着いている限り物価は落着くのではないでしょうか。
若し日銀が金融正常化(金利引き上げ)を急いだり、FRBがサプライズの政策金利引き下げをやったりすれば、円高になり、企業物価、引いては消費者物価の下げにも通じるところですから、客観情勢としては物価は安定基調でしょうか。
残念ながら、家計の消費支出も値上げへの警戒感から伸びていません。政府は景気回復と言いますが、消費不振で、状況はそう簡単ではないようです。
期待するのは連合の賃上げ要求姿勢が強まることですが、それは来年の話です。年末にかけて景気はどうなのでしょうか。