始めにPEN-Fメーター修理のご依頼を頂いておりましたので、おかしなタイトルとなりましたよ。突然作動しなくなったとの由。ということはCdsは生きている可能性が高い。回路の断線か、メーターコイルの断線かな? と分解していくと・・・あらら、これはいけませんね。金属片の回路が電池のガスによってボロボロに腐食しています。これじゃあ、半田付けも出来ないなぁ・・・
パーツリストを見ても、そもそも、この部品は部番の設定がないようです。(非売品) まぁ、今となってはどちらでも同じことですが。じゃ、細いリード線で回路を作るしかありませんね。
PEN-Fメーターも、随分と程度の悪い個体が増えていますね。私のところにも、気が付けば幾つも在庫があります。箱付きの美品なんていうのもありました。
多少、針の動きがゆっくり目ですけど、作動はするようになりましたね。あまり目くじら立てて使ってはいけません。問題は、後ろに見える、お供で付いてきたPEN-FVですよ。一見、巻上げも軽く、特に問題の無い個体と見えましたが、製造№と各部の特徴が合わないと思いますけどね。私の推理では、この個体の本体はPEN-FTの19万代付近の個体でしょう。それにFVの専用部品を組み込んだものと思われます。手馴れた作業から、プロが作ったものでしょう。
今日はカメラの作業はしませんでしたよ。依頼されていた懐中時計のO/Hをしておりました。腕時計サイズに慣れていると、懐中時計の機械は巨大で、時計組立の練習用のようですね。Watex というメーカーで、一応SWISS MADE と書かれてはいますけど、私にはどうみても中華時計に見えてしまいます。しかし、殆ど新品のような機械でした。普段、新10Aなどを組んでいる手には、あっという間に組立が終りました。各石に注油をしています。
テンプの石にはインカブロックを使用しているようです。注油をしてピンセットで所定の位置まで収めます。快調にテンプが動き出しました。
文字盤を付けましたけど、これが針穴を抜くためのプレスで文字盤に大きな歪みが出来ています。スイス製かなぁ? 剣(針)は、とりあえず短針はどこの位置にあっても構いませんので、剣入れで押し込みますが、ここで問題が。腕時計用の工具ではサイズが小さすぎて使えない。まぁ、別の方法で入れました。短針を12時にセットして、長針を重ねます。スモールセコンド針はどこにあっても良いです。針回しで針同士が干渉しないかチェックをしておきます。
と、ここで、一つ前にやりましたタイマーレバーがクロームのPEN-FT(B)のオーナーさんから、丁寧なお礼状と地元のお菓子、それに思わぬプレゼントのプラモを頂きました。オーナーさんは私と同じで旧軍の飛行機ファンでいらっしゃいまして、コレクションのレベル1/32「飛燕」をプレゼントして頂きました。これはすごい。私が子供の頃に発売された古い金型のキットですが、すばらしいプロポーションで、名作と言われているキットです。当時は1,000円ぐらいだったかな? 子供の私たちは三共のピーナッツシリーズか、精々、1/72の零戦が精一杯でレベルの高級キットなど高嶺の花でした。他にB-17なんてありましたね。アメリカでは住宅が大きいため1/32が人気でしたが、日本では1/48が主流となっています。画像は、昔作ったハセガワの1/32隼ですが、(ボロボロですね)1/48までのスケールには無い、圧倒的な存在感です。しかし、細かなところまで手を抜けないという難しさもあります。エァフィックスだったか、1/24というキットもあったかと思いますが、このサイズになると、重量が重くて強度的にスチロールでは無理があると思います。ボックスアートも良いですね。舗装の滑走路と格納庫が見えますから、内地の基地を想定したものでしょう。機首のスピナーとのつながりが1型としては滑らかすぎで、2型の感じなのはご愛嬌です。近年、ハセガワから1/32の飛燕が発売されるまでは、1/32唯一の名キットと言われていました。ありがとうございました。しかし、隼を作った頃はメガネ無しでの作業が出来た頃です。エンジン後部のカウルフラップはアルミ板でワンピースづつ作り直して開口状態(空戦時)とし、丙型の排気管も開口するように作り直しています。1/32スケールでは、この辺りに手を入れないと逆にスケール感が出なくなります。隼は1型が隼らしいですけどね。
PEN-FVに戻ります。オーナーさんも困惑されているようです。私としても余計なことは言わない方がと迷う時もあるのですけどね。個体維持のために行った作業と思いますが、多分オリジナルの本体フィルムレールに大きな腐食でもあったのではないかと推測します。そこで、なぜFTと断定できるのか? です。FVとしては各部の特徴が合わない点以外に、↑部分。なにか二重丸のように見えますね。ここは、FTにあるシンクロターミナル用の接片をダイカスト本体に固定するためのビス孔です。瞬間接着剤が硬化したようになっていますが、これは、絶縁用のベークワッシャーを固定していた痕です。そもそもFVには、この部分に接片は付かないのです。(M-X)
では、洗浄した本体ダイカストに組み込んで行きます。この個体は、スプールの滑りが重くて、急速にフィルムを巻くとパーフォレーションを傷めることがあったとのことで、スプールバネのグリスがカラカラの状態です。グリスUPして組んで行きます。
突っ込みどころ満載の個体なんですが、シャッターユニットも疑問がありますね。FTの19万代ベースだと仮定すると、テンションシャフトとバネは変更前であるはずが、変更後が付いていますね。巻上げギヤ軸の磨耗が、あら~、結構進んでいましたね。
前板のリターンミラーと#2プリズム部分ですが、↑の遮光クロスの組立位置が変。そもそも、この遮光クロスは純正ではなくて、後から作って貼ったものですね。
フレネルレンズですが、ホワイトバランスのせいではなくて、下側が黒く汚れが目立ちますね。静電気の汚れだと思います。超音波洗浄をします。
で、洗浄したフレネルレンズを組み込んで、ミラーユニットをO/Hして完成。遮光クロスの通り方をよく比較してください。
本体がFTベースであると推測する理由。巻き戻しボタン留めのネジに付いているリターンスプリングですが、→のところが不自然に曲がっています。FVは電池室が無い関係でFTとはスプリングの形状が異なるのです。この個体は、FT用を無理に付けてあるということ。
ピンセット先の接着されたベークワッシャーですが、これは、FTのシンクロ接片と本体が接触しないように絶縁目的で接着されているもの。オリジナルのFVであれば、そもそも必要はないので接着されていません。↑の部分にはダストカバーが接着されているはずですが、欠落していますね。FTとFVでは部品の形状が異なるので、FT用を接着しなかったのでしょう。短めですけど、FT用を付けておけば良かったのに。
都内の中古屋さんで購入されたそうです。まぁ、単純にニコイチでは説明が付かない部分もありますが、組立はきれいに出来ていましたので、プロのまじめな作品と考えましょう。巻上げの軽さはビックリするほどスムーズで、調子も良好ですから。名づけてPEN-FTV hybrid かな?
最後に、本物のキ-43隼が登場する戦意高揚映画「加藤隼戦闘隊」の全編がYouTubeにUPされていますのでご覧ください。主演の藤田 進は大好きな俳優です。(97戦、97重爆なども登場)
http://www.youtube.com/watch?v=YcuGt2ZVZrE
懐中時計のその後ですけどね。作動時間が短い。ゼンマイを巻いても巻き止まりしない。これはゼンマイが切れているのですね。中間付近が切れている場合は、ある程度の時間は作動するのです。で、香箱を分解してみると・・・やっぱり。
中華時計だと思いますので、ゼンマイの調達は難しいので、柱時計などの大型ゼンマイで行う、ゼンマイ継ぎの方法でついで見ます。両端を画像のように加工しておきます。しかし、画像は拡大していますので大きく見えますが、1.5mm幅に加工はかなり困難でした。そもそも、香箱内には油はなく、この時計は全く油脂なしで組まれているようです。
こんな感じで継ぐのですね。当然、トルク変動はありますから、精度に影響はありますが、まぁ、動くことが先決です。
ゼンマイを巻上げて、快調に作動しています。規格の合う汎用のゼンマイはあると思いますので、そのうち交換した方が良いと思いますね。
焼きなましてからの加工ですかね?
手先の器用さに感服いたします。
私もあまりやりたくは無いのですが、修理費用を掛けられないので、仕方なくですが、柱時計やせめて置時計のサイズなら良いですが、懐中時計や腕時計では、さすがにきついです。お察しの通り、そのままの素材では焼きが入っていますので、焼きなましをしてからの加工となります。ライカのセルフタイマーなんかの修理と一緒です。ピンバイスと精密やすり1本で、電動工具は使いません。