その前に、ちょっと出戻りを修理しておりました。この個体は、O/Hを終えてお返ししてしばらく経過したPEN-FTですが、ミラーフリーズで戻りました。原因はシャッタースプリングの破断です。このカメラは、ロータリーシャッターでスピードを上げるために、かなり無理をしているのですが、材質にスェーデン鋼を採用して性能を実現しています。しかし、長期間の使用によりスプリングが老化して、修理を終えて本格的に使用しようとすると破断となるものがあります。車やバイクでもレストア時は問題は無くとも、実際に走り始めるとあちこち部品が壊れるのは経験していることです。特に20万台以前のスプリングの条数が少ない変更前の個体に多く起きていると思います。みなさんのFTも、巻き上げた状態で長時間放置しないなど労わるようにお願いします。
でと。カメラはこの次にやりますのでご容赦のほど。いつもセイコーの時計がメインですが、たまには業界の三男坊、オリエントの時計などを直します。若い頃の仕事でオリエント時計の日野工場に出入りをしていた経験があるので親近感があります。社員の皆さんはおっとりとしている方が多かったです。モデルはオリエントのHPによると1957年頃のモデルのオリエントスターダイナミック17石です。機械は1956年から生産のT型で落径23.30mmと小さい機械で、セイコースーパーが10型、ユニークが11型ですから、中間ぐらいのサイズです。
例によって不動品を入手しましたが、こちらはなんと香箱真と蓋以外に香箱とゼンマイが入っていませんでした。あちぁ~、またやられちゃいましたね。それが嫌ならちゃんと動く個体を買いなさい。ハイハイ・・で、別の個体から香箱を調達して洗浄注油をしたところ。側面にポンチがあるところに蓋の切り欠きを合わせる。
機械的にはオーソドックスな設計で、加工はあまり良くない感じでスーパーと似ている感じですかね。受けの合いもあまり良くありません。
まっいいや。この機械もガンギとアンクル爪に注油をすると動きが全く違って来ますね。
日の裏を組み立てて文字盤を着けますが、機械サイズよりかなり大型の文字盤です。時代の流行りです。文字盤は汚れを掃除しましてが落としきれません。
で、針を着けると、長針の孔の返りが全く無くなっていて留まらないことが判明。それでは他の個体から調達をすると、今度は秒針のカシメが緩んでフラフラして長針と接触をします。ポンス台でカシメ直して取り付けました。この時代の機械は、何度も分解をされているので、まともな状態の針はないみたいです。
で、こんなことに。。本当はオリジナルの針の方が気に入っているのですが仕方ありません。ケースは本体はステンレスでラグとベゼルは14Kメッキです。ラグに素材の露出はありますが、まぁ、14kだからこの程度で残っていたのでしょう。軽く研磨。風防は汎用新品と交換していますが、ちょっと厚い感じ・・
機械をケースに収めて歩度を見ます。まぁ、そんなに悪くはありませんよ。裏蓋は洗浄をしてヘアラインを再生してあります。
いつの時代のベルトかは不明ですが、オリエント純正のベルトです。(新品)
まぁ、こんな感じです。オリジナルの針の方が厚みがあって高級感があります。このペットネームは現在でも健在で、多くのモデルが生産されています。セイコーとはまた違った雰囲気で、これも良い感じですね。
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