ローライ35の初期生産と思われる#30356XXですが、かなりラフに使われたようでトップカバーはへこみが大きく、状態はよろしくありません。この状態ですと通常のメンテナンスと言うよりはレストア的な作業になりますね。点検した不具合を列挙してみると、低速止まり、露出計感度低下、接眼枠キズ、メーターガラス割れ、内部に錆びと多量の水油の塗布、トップカバーへこみ、レンズ汚れ、ヘリコイドグリス抜け、カバー背面ねじ規格外、シューレール曲がり、B(バルブ)で羽根閉じず、トップカバー横ネジ規格外、沈胴自重で下降、などがあります。ふぅっとため息が出ますね。
露出計の窓は上側(表面)が樹脂製で下側が本物のガラスになります。(生産後期は樹脂)樹脂製は傷だらけ、ガラスは割れています。
ドイツ製の初期型は裏蓋の開閉レバーと巻き戻しクランクが以後のモデルと異なります。
内側から見るとネジによる組立式。以降はCリングによって固定されています。
トップカバーは軽く板金しますが元には戻りません。返ってそのままの方が良い場合もあります。レバーアテの欠落と右の化粧ネジは規格外です。
巻上げギヤの地板が錆びています。ファインダー窓から水か侵入したのでしょう。ギヤ列はすべて金属製はお約束です。巻上げギヤ(レバーが付く)は固着していて分離困難でした。すべて分解洗浄で組み直します。
下側(メーター側)のガラスが割れています。衝撃と言うよりはトップカバー上からの圧力で割れたのでしょう。
管理の悪い個体のプリズムファインダーは剥離をしているものがありますが、幸いこの個体は剥離や曇りはありませんでした。接眼部に1点キズ。
メカ部とファインダーの組立が終りました。露出計の調整と純正ガラスを接着しておきます。
トップカバー横のネジも規格外。純正に交換です。
B(バルブ)で羽根が閉まらない不具合があります。原因は軽微の場合は↑のレバーの動きが渋い場合。
しかし、この個体はそれでは改善しません。前板を分離して点検します。↓の部分でレバーにより解除されますが、バネの張力劣化です。そもそも気になっていたのですが、この個体は注射器のようなもので大量に注油されています。沈胴部の樹脂フードも艶ありになっています。洗浄脱脂をします。
これですからね。洗浄します。右は内部から出て来たフィルムの切れっぱし。このカメラはフィルムにやさしくないのか、他の個体でも目につきます。意外に沈胴回転部やレバー接点部に挟まると不具合の原因にもなります。
他の部分と比較してレンズとシャッターユニットは悪くはありません。洗浄とグリス交換をします。
完成後に点検をしていると沈胴が自重で下降しだしました。おかしいなぁ最初の点検時には問題は無かったのに・・古い機械では再び作動を始めると不具合が出ることは良くあります。
見にくいですが、初期の個体は絞りダイヤルのフィルム感度ダイヤルがシャッターダイヤルと同じデザインになっています。しかし、感度設定がやり難いので以後のモデルでは爪を掛ける突起が2つ付いています。
レバーアテは旋盤で削り出したものを熱カシメしてあります。ネジは新品と交換しました。
と言うことで、色々と問題の多い初期型でしたが、貴重な個体なので頑張って直しました。基本の部分では意外に状態は良かったので快調に仕上がっています。