人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

東響交響楽団「名曲全集」第91回公演を聴く~レイ・チェンの弾くシベリウスのヴァイオリン協奏曲

2013年11月04日 09時00分03秒 | 日記

4日(月・休)。昨夕、NHKスペシャル「至高のヴァイオリン ストラディヴァリウスの謎」という番組をやっていました ちょうど息子が日本シリーズ第7戦「巨人対楽天」を見ていたので諦めていたのですが、そのうちパソコン・ゲームをやりだしたので、これ幸いにチャンネル権を奪いました 番組が始まってすでに20分が経過していました

ストラディヴァリはバロック時代の弦楽器職人ですが、300年前に作られたヴァイオリンが、なぜ今もなお人々を魅了して止まないのか、科学的なアプローチによってその魅力に迫ろうとする番組です

番組では、音楽関係者を集めてブラインド・テストが紹介されました。会場にいる音楽関係者は、スクリーンの向こう側で演奏されるストラドが本物か偽物か判らないようになっています つまり演奏者の影絵を見て音だけで判断するのです。解説によると、音楽を専門にする人たちでさえ、本物を聴き分けられるのは2割から5割しかいないとのことです それほど偽物が本物に近づいているということでしょう

興味深かったのは日本人の研究家による42チャンネル同時録音です。無音室の真ん中に設置した42本の集音マイクの前で、諏訪内晶子ら3人のヴァイオリニストが一人ずつストラドを演奏して、それを録音しコンピュータで音の志向を調べる実験です

実験の結果、他のヴァイオリンが均等に音が広がっていくのに対して、ストラドは特定の志向性をもっているということが解ったとのことです グラフで言えば、右の上の方に向かって音が広がっていくような図になっています。つまり、より遠くへ音が届くようになっているということです これを裏付けるように、ストラド「ドルフィン」を所有する諏訪内晶子は「ストラドは音が会場の奥まで飛んでいくような気がする」と語っています

また、アメリカの研究者は病院のCTスキャンでストラドを透視し、物理的に分析します。その結果、上板も底板も、箱の中の中央にある根柱(こんちゅう)でバランスが取れている、つまり重さが均一になっていること、同時に上半分と下半分で容積が同じになっていることを証明します

もう一つの謎、ニスについては「木の葉や鉱石が混じっているのではないか」「女性の血が混じっているのではないか」など過去からいろいろと言われてきましたが、分析の結果は、今とまったく変わらない成分であることが判明したということです

番組では、本物のストラドと、分析の結果を総合して作られたストラドの完全コピーを続けて演奏しましたが、まったく違いが分かりませんでした 科学的には相当本物に近づいていることが分かります

しかし、それはあくまでもコピーであって本物ではない。観ていてますます疑問が湧いてきました

 

  閑話休題  

 

昨日、ミューザ川崎で東京交響楽団の「名曲全集」第91回公演を聴きました プログラムは①シベリウス「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」、ブルックナー「交響曲第4番変ホ長調”ロマンティック”」で、指揮は音楽監督ユベール・スダーン、①のヴァイオリン独奏は2009年エリザベート王妃国際コンクール優勝者レイ・チェンです

 

          

シベリウスのヴァイオリン協奏曲は、先日入手したばかりの「2012年エリザベート王妃国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門セミ・ファイナル&ファイナル・ライブ」(CD4枚組)にシン・ヒョンスの演奏が収録されていたので、聴いたばかりです 図らずもこの日の予習になりました

このヴァイオリン協奏曲は、1902年に交響曲愛2番で成功を収めたシベリウスが、その翌年に書き始めて1904年に完成しました その後1905年に改訂し、その年の10月にリヒャルト・シュトラウス指揮ベルリン宮廷歌劇場管弦楽団、同楽団コンマス、カレル・ハリールのヴァイオリン独奏で改訂初演されました

ソリストのレイ・チェンが指揮者スダーンとともに登場します。1989年台湾生まれと言いますから、まだ24歳の若さです

第1楽章「アレグロ・モデラート」は、さざ波のような伴奏に続いてレイ・チェンの独奏ヴァイオリンが慎重に入ってきます 大袈裟な動作はいっさいなく、自然体で演奏します

第2楽章「アダージョ・ディ・モルト」は、木管楽器の長閑なメロディーに導かれて独奏ヴァイオリンが美しいメロディ―を奏でます 気持ちよく聴いていると、急に身体に揺れを感じました 明らかに地震です。すぐに時計を見ると14時25分でした。第2ヴァイオリン首席のHさんほか何人かの表情に動揺が見られます しかし、スダーンはじめオケのメンバーは、恐らく揺れに気づいていたと思われますが、あくまでもソリストの演奏をバックアップすることに専念するため、何事もなかったかのように演奏を続けます。これは立派でした これがプロというものでしょう

第3楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」は、軽快なリズムで始まります。レイ・チェンは次々と曲想が変わる音楽を、躍動感溢れる演奏で見事に弾き切りました

前に一礼、後ろを向いて一礼、右を見て、そして左を見て一礼し、歓声に応えます。4回目に舞台の戻った時に元気な日本語で「ありがとうございました。カプリース、ナンバー、トエンティワン」と言って、パガニーニの「24のカプリース」から第21番を鮮やかに演奏しました 演奏も素晴らしかったですが、ステージ・マナーも素晴らしい将来有望な若きアーティストだと思います

休憩後は大曲、ブルックナー「交響曲第4番変ホ長調”ロマンティック”」です この曲は作曲者が53歳にして初めて交響曲作曲家として認められるきっかけとなった作品です。副題の「ロマンティック」はブルックナー自身が付けたものですが、これは「ロマンチックな夜」というあのロマンティックではありません。「古典的な」に対する「ロマン的な」というような意味で、絶対音楽ではなくむしろ標題音楽に近い意味合いで付けたものです ブルックナーはこの曲の内容について、第1楽章は1日の始まりを告げるホルンの音、シジュウカラの鳴き声、第2楽章は歌と祈りとセレナーデ、第3楽章は狩り、というように周りの人々に語っていたと言われています

譜面台の右側には背もたれのない椅子が置かれています。前回この会場でスダーンの指揮で聴いた時、足を引きづりながら歩いていたので、その後遺症があるのかも知れません。念のためにいつでも座って指揮ができるように準備されたものでしょう

第1楽章は森の中に立ちこめる霧のように弦楽器がトレモロを奏で、おもむろに独奏ホルンがメイン・テーマを奏でます ここで上間善之のホルンが裏返ったりしたら、この演奏は滅茶苦茶になりますが、さすがは首席です。完璧にクリアしオケ全体に安心感を与えます 第2楽章を経て、スケルツォの第3楽章に入ります。ホルンによる”狩り”のテーマが生き生きと奏でられます

そして、厳かに第4楽章が始まります。弦楽器のトレモロにのせて金管楽器の咆哮が展開され、最後は管楽器が”神に捧げる”かのようにコラールを演奏しクライマックスを築き上げます ホルンの6人は音が良く通るように楽器を持ち上げて演奏します。これはマーラーの第5交響曲等のフィナーレで見られる情景ですが、私はブルックナーでは初めて見ました

会場一杯の拍手にスダーンは、まずホルンの上間善之を立たせ、ホルン全体を立たせます 次に金管楽器をグループごとに立たせます。そして、以外にも弦楽器はヴィオラ・セクションのみを立たせました。個人的にはチェロが良かったと思いましたが、指揮者から見てヴィオラが健闘していたのでしょう

スダーンは、あらかじめ用意されていた予備の椅子に座ることなく、タクトなしで最後まで精力的に指揮を続けました 今年度限りでスダーンが契約満了となるのは非常に寂しい思いがします

 

          

 

実は、この日のプログラムと、今日サントリーホールで開かれる定期演奏会とまったく同じプログラム・演奏者なのです 昨日気が付きました。7月の時も「名曲全集」とサントリーシリーズがまったく同じプログラム・演奏家(ミシェル・プラッソン指揮によるフランス音楽)でした。あの時は両方とも聴きに行って、結果的には良かったのですが、さて今回はどうでしょうか

コメント (2)
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