22日(金)。昨夕、虎ノ門のJTアートホール”アフィニス”でクァルテット・フモレスケのコンサートを聴きました JTビル正面玄関を入るとクリスマス・イルミネーションが輝いていました
クァルテット・フモレスケは東京藝大で学んだ4人の仲間が今年結成した弦楽四重奏団です。メンバーはヴァイオリン=對馬哲男、山本美樹子、ヴィオラ=脇屋冴子、チェロ=佐古健一です 「フモレスケ」という名称はドイツ語のHumor(フモール)に由来しているとのことで、シューマンが「豊かな心情と幸福な融合」と形容した言葉のことだそうです
プログラムは①ハイドン「弦楽四重奏曲第36番”プロシャ弦楽四重奏曲第1番”」、②メンデルスゾーン「弦楽四重奏曲第2番イ短調」、③ベートーヴェン「弦楽五重奏曲ハ長調」です
自席は11列4番、左ブロックの右通路側席です。会場は8割方埋まっている感じです 1曲目のハイドンの弦楽四重奏曲第36番は1787年に書かれました。メンバーは左から對馬、山本、佐古、脇屋という態勢を採ります
第1楽章はチェロが通奏低音のようにテーマを奏で、ヴァイオリンとヴィオラがかぶります。第2楽章は途中、ヴァイオリン・ソロがありますが、對馬のヴァイオリンは切々と哀しみを歌い上げます
第3楽章のメヌエットを経て軽妙な第4楽章に移ります。最終場面では、終わるかと思わせて、また演奏を再開し、フィナーレになだれ込みます。ハイドンならではのウィットです
さて、今回の目的は2曲目のメンデルスゾーンの「弦楽四重奏曲第2番」を聴くことです。この曲はポピュラーとは言えないので、ゲヴァントハウス・クァルテットのCDで予習しておきました
第1楽章はメンデルスゾーン特有の劇的な曲想で、時にベートーヴェンの”運命の動機”が顔を見せます。彼のピアノ協奏曲や他の曲にも同じような傾向が見られます。メンデルスゾーンは巷間言われているようなモーツアルトからよりも、むしろベートーヴェンから、もろに影響を受けているのではないかと思います
第2楽章では、ベートーヴェンよりもバッハの「音楽の捧げもの」のような感じのメロディーが顔を覗かせ、びっくりします 第3楽章から第4楽章へは間を空けずに演奏します。第4楽章終盤の對馬のヴァイオリン・ソロは哀しみを湛えた感動的な演奏でした
休憩時間にロビーに出ようと席を立つと、最後部席にヴァイオリンの第一人者・岡山潔さんが座っていました。この日の出演者のうち女性二人は岡山さんの指導を受けています
最後のベートーヴェン「弦楽五重奏曲ハ長調」は珍しい曲です。あらかじめ予習しておこうと思ってCD棚を片っ端から探してみたのですが、どこにも見当たりません 弦楽四重奏曲全集はバリリ、アルバン・ベルク、ウィーン・コンツェルトハウス、ヴェーグの各弦楽四重奏団の演奏で持っているのに、弦楽五重奏曲は1枚も持っていないことが判明しました。情けないこと限りないです
このコンサートのプロデュースした元N響首席で、現在藝大教授の川崎和憲が加わります 左から山本、對馬、佐古、川崎、脇屋という態勢を採ります
生まれて初めて聴く曲でしたが、ベートーヴェンらしい、なかなか味のある曲だと思いました 弦楽五重奏曲と言えばモーツアルトのそれが傑作として有名ですが、ベートーヴェンはそれを意識して1曲しか作れなかったのかも知れません
若い演奏家たちにこのような発表の機会を与える「JTが育てるアンサンブルシリーズ」は素晴らしい企画だと思います 主催者のJTグループにはこれからも是非続けてほしいと思います