18日(月)。昨夕、コンサートのため横浜みなとみらいに行きました。ランドマークタワーではクリスマス・ツリーが出迎えてくれました
横浜みなとみらいホールで第32回横浜市招待国際ピアノ演奏会を聴きました プログラムは①リスト「ピアノ協奏曲第1番変ホ長調」(ピアノ:関本昌平)、②ショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第2番ヘ長調」(ピアノ:イリヤ・ラシュコフスキー)、③ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番ト長調」(指揮&ピアノ:ミシェル・ダルベルト)、④ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」(ピアノ:萩原麻未)、⑤ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」(ピアノ:アレクセイ・ゴルラッチ)です。③を除く指揮は高関健、オケは日本フィルです
自席は1C17列10番です。会場は8割方埋まっている感じです 日本フィルは向かって左から後方にコントラバス、前方に第1ヴァイオリン、右にチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置を採ります。言わば高関シフトです どうも日本フィルは馴染みがないせいか、華やかさがないように見えて仕方ありません。よ~く考えてみたら、他のオケのようなスタープレーヤーがいない上、東響、東フィル、新日フィルなどに比べて女性比率が低いのです N響、読響に次いで男性比率が高いのではないかと思います。舞台中央に構えるピアノはヤマハです。この会場の備えつけのピアノなのかも知れません
1曲目のリスト「ピアノ協奏曲第1番変ホ長調」は1849年に完成し52年に初演されました。ピアノ協奏曲としては珍しく4楽章形式を取ります。トップバッターの関本昌平が登場します。彼は1985年大阪生まれですが、見た目が年齢より上に見えるのは良いのか悪いのか?ショパン・コンクールで4位に入賞しているので実力者ではあります。この曲は相当テクニックを要する難曲ですが、関本は楽にクリアします
小休止中に椅子が取り替えられ、ピアノの鍵盤がきれいに磨かれます。1984年ロシア生まれのイリヤ・ラシュコフスキーの登場です2012年の浜松国際ピアノコンクールで優勝し注目を集めました。ショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第2番ヘ長調」は第1番から24年後の1957年に作曲され、息子のマキシムのピアノによって初演されました
ラシュコフスキーは私が注目しているピアニストです。このブログでも2回取り上げましたが、将来有望な若手ピアニストの一人です 第1楽章アレグロが軽快なテンポで開始され、すぐに超スピードで突っ走ります 一転、第2楽章アンダンテはリリシズムの極致です。第2楽章から第3楽章へは間を空けずに突入します。再びラシュコフスキーは確かなテクニックを駆使して軽快にぶっ飛ばします。だれか、止めてくれと叫んでも彼の演奏は止められません
ここで1回目の休憩時間となります。私は休憩時間には必ずトイレに行く習慣があるので、行きました。すると体に揺れを感じました しばし揺れが続いているような感じがしたので、きっと地震があったのだと思いましたが、自信はありませんでした(下手なシャレは水に流してください)。帰りの電車のアナウンスで、やはり地震があったことが判りました。これが5分前だったらラシュコフスキーの演奏の真っ最中で、会場はパニックで地震過剰になっているところでした。アブナイ、アブナイ
休憩後はベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番ト長調」です。1806年に完成しました。ピアノ協奏曲というと、彼の前の時代までは、長い序奏があって、おもむろにピアノが登場するパターンが多かったのですが、この第4番は冒頭からいきなりピアノ独奏が入ってきます
今回はミシェル・ダルベルトがピアノを弾きながら指揮をする”指揮振り”で演奏します。したがって、彼は聴衆に背中を見せる形でスタンバイします。ピアノを弾きながら指揮をするので、当然タクトは持ちません。その代わり楽員とはアイ・コンタクトを取ります 悠然と入る第1楽章から実に堂にいった指揮振りです カデンツァでは存分に聴かせます。遠目に見てジョージ・クルーニー似のダルベルトはカッコいいです
ここで2回目の休憩に入ります。休憩のたびに、椅子が代えられ鍵盤が磨かれます。休憩後は待望の萩原麻未の登場です。藤色のドレスに銀のベルトラインの付いたドレスで登場します ラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」は、第1次世界大戦で右手を失ったウィーン出身のパウル・ヴィトゲンシュタインの依頼に応じて書かれました。単一楽章ですが、3つの部分から成ります
萩原麻未は右手を椅子に置いて身体を支えながら左手で力強い演奏を繰り広げます 第1部のカデンツァは聴きごたえがありました ジャズのイディオムを採用した第2部を通過して、再び第3部でカデンツァが奏でられます。目を瞑って聴いていると、はたして本当に左手1本だけで演奏しているのだろうか、と疑問に思うほど曲の構成がしっかりしており、それを萩原麻未が忠実の再現します。彼女は何を弾いても並外れた集中力で弾き切ります
最後は1988年ウクライナ生まれ、2011年ARDミュンヘン国際音楽コンクール優勝者のアレクセイ・ゴルラッチです
ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」は1934年に完成しました。パガニーニが作曲した「24のカプリス」の第24曲を主題として24の変奏を展開した作品です。第18変奏「アンダンテ・カンタービレ」であまりにも有名な曲です ゴルラッチは速いパッセージも激することなく極めて冷静に演奏します。かなり理知的なタイプのピアニストかも知れません。1曲1曲の弾き分けも見事でした
すべての演奏終了後、ソリスト5人が再度舞台に登場、小さな子供たちから花束を受け取っていました最後に付け加えれば、高関健の指揮はいつもきちっとしていて気持ちの良いものがありました。彼の”伴奏”は演奏する側にとってやり易いのではないかと思います
終演は8時50分、休憩2回を入れて2時間50分のコンサートでした。ピアノ協奏曲だけを一晩で5曲を聴いたのは、清水和音のオール・ラフマニノフ・プログラムを聴いて以来これが2回めです。存分にピアノを堪能しました
なお、この公演に先立って昨日午前、予習のために聴いたCDは以下の通りです
ショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第2番」
ピアノ:エリザベス・レオンスカヤ
ヒュー・ウォルフ指揮セントポール室内オーケストラ
ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」
ピアノ:サンソン・フランソワ
アンドレ・クリュイタンス指揮コンセルバトワール・オケ
ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」
ピアノ:ウラジミール・アシュケナージ
ベルナルド・ハイティンク指揮フィルハーモニア管弦楽団