29日(金)。昨日昼、某シンクタンクの会合があり、帝国ホテルの宴会場で東京大学大学院薬学系研究科准教授の池谷裕二さんの公演を聴きました テーマは「脳はだまして使え~やる気と記憶の秘密」というもので、1時間半みっちりとパワーポイントを使用しながらオモシロおかしく話されました
「なるほど、これはいい話を聴いた」と思ったのは、「脳は入力よりも出力を重要視する」という話です。実験の結果、あることを100覚える時、何回も繰り返して覚え込むよりも、覚えたことをテストすることを繰り返す方が、結果的にはより多くを覚えていることが判ったということです 例えばドイツ語の単語を100覚えるのに、暗記カードを使って何度も覚え込むよりも、いったん覚えたら、テストをして、また覚えて、またテストをしてということを繰り返した方が、最終的にはより多くの単語が覚えられるということです その意味では日記を書いたり、ブログを書いたりすることは脳にとっては非常に良いことだそうです
また、「楽しいから笑う」と言うのはおかしい、「笑うから楽しいのだ」という話など興味深い話が聴け、充実した1時間半でした
閑話休題
昨夕、初台の新国立劇場でオッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」を観ました キャストはホフマンにメキシコ出身のアルトゥーロ・チャン=クルス、ニクラウス&ミューズにアメリカ出身のアンジェラ・ブラウアー、オランピアに幸田浩子、アント二アに浜田理恵、ジュリエッタに横山恵子、リンドルフ、コッペリウス、ミラクル博士、ダベルトゥットの四役にマーク・S・ドスほか、フレデリック・シャスラン指揮東京フィルで、演出はフィリップ・アルローです
私の左斜め前の席には指揮者の飯守泰次郎さんが座っていらっしゃいました。彼は新国立劇場2014/2015シーズンのオペラ部門の次期芸術監督に就任する予定です。したがって、あの席が彼の指定席なのでしょう
公演プログラムに、新国立の過去の「ホフマン物語」の公演記録が載っており、アルローの演出による公演は今から10年前の2003年11月、2005年11月に次いで、今回が3回目だということが判りました2003年の時のキャストを見て意外だったことが2つあります。一つは、オランピアを歌ったのは、てっきり当たり役の森麻季だとばかり思っていたのに、幸田浩子だったことです。つまり彼女は10年ぶりに新国立でオランピアを歌うことになります もう一つ意外だったのはニクラウス&ミューズをエリナ・ガランチャが歌っていたということです。彼女はMETライブビューイングのビゼー「カルメン」でタイトルロールを歌って人気を博したメゾソプラノです ちなみにその年にジュリエッタを歌ったのは佐藤しのぶでした
物語は、詩人のホフマンが3人の女性との失恋の思い出を語り、酒に溺れて自殺を図り、彼の死をミューズが温かく見届けるというものです 3人の女性とは、機械仕掛け人形のオランピア、胸を病む歌手志望の女性アント二ア、ヴェネツィアの高級娼婦ジュリエッタですが、ほかに現在の恋人ステッラが加わり、さらにホフマンの友人であるニクラウスは実は芸術の女神ミューズの化身なのです。したがって、物語は1人の男と5人の女性の絡み合いによって進んでいきます
この舞台を観るのは3回目ですが、舞台が実に美しいのです とくに第4幕(ジュリエッタの幕)は有名な「ホフマンの舟歌」のメロディーが流れる中、幕が開きますが、幻想的な舞台作りで目を楽しませてくれます
歌の点では、出演者は誰もが素晴らしい歌声でしたが、とくにニクラウス&ミューズの二役を演じたブラウアーは高音も低音も美しい声で、メゾソプラノの魅力にあふれていました 幸田浩子は10年ぶりのオランピアでしたが、時計仕掛けの人形の動きといい、良く通る高音部といい素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました
もちろんホフマン役のクルスも、リンドルフなど四役を歌ったドスも、演技ともども申し分のない歌声で、充分楽しませてくれました
18時半に始まった公演は、30分の休憩を2回挟んで22時15分に終了しました。火曜日は福島の葬儀に参列、水曜日は23時過ぎまで送別会で飲んでいたのが効いて、座って聴いているのが辛いものがありましたが、何とか最後まで眠らずに聴き通しました。やはり演出がいいと眠気は感じません