人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

熱狂の公演!=テオドール・クルレンツィス ✕ パトリツィア・コパチンスカヤ ✕ ムジカエテルナでチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」「交響曲第4番」を聴く~すみだトリフォニーホール

2019年02月12日 07時23分33秒 | 日記

12日(火)。わが家に来てから今日で1593日目を迎え、戦後生まれを描き、流行語にもなった代表作「団塊の世代」で知られる作家で経済評論家の堺屋太一さんが8日、多臓器不全のため死去した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      1970年の大阪万博の提案・企画者だったね 未来を予言できる貴重な人財だった

 

         

 

昨日、夕食に「豚バラ肉のエリンギ炒め」と「もやし豚汁」を作りました どちらも娘の大好物です

 

     

 

         

 

昨日、すみだトリフォニーホールで テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナの初来日公演を聴きました プログラムは①チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35」、②同「交響曲第4番ヘ短調作品36」で、ほぼ同じ時期に作曲された作品です ①のヴァイオリン独奏はパトリツィア・コパチンスカ、指揮はテオドール・クルレンツィスです

当日券売り場には長蛇の列が出来ています 午後2時半開場ですが、取りあえずロビーまでの開場ということで早めに入場できたのは良いのですが、2時半になってもホールのドアが開けられず、クロークにコートを預ける人、預けない人で狭いロビーがごった返しています 結局10分遅れでドアがオープンしました リハーサルに厳しいクルレンツィスのこと、ギリギリまでゲネプロをやっていたのだろうか、と勘繰ってしまいました

テオドール・クルレンツィスはギリシャのアテネ生まれ。ギリシャ国立音楽院で学んだ後、サンクトぺテルベルク国立音楽院でイリヤ・ムーシンに師事。自ら組織した精鋭の管弦楽団ムジカエテルナとムジカエテルナ合唱団を率い、ロシアのペルミ(「バレエ・リュス」を率いたディアギレフの生地)を拠点に、ザルツブルク音楽祭、ウィーン・ムジ―クフェライン、ベルリン・フィルハーモニー、ミラノ・スカラ座などで演奏し大きな反響を巻き起こしている

ムジカエテルナはクルレンツィスにより、ロシアを中心に世界各地から集められた精鋭たちによる楽団で、レパートリーによってピリオド(古)楽器やモダン楽器を使い分け、その作品に相応しい響きを追求している 日本からも第2ヴァイオリンとチェロに各1名女性奏者が参加している

パトリツィア・コパチンスカヤは1977年、音楽家の両親のもとモルドヴァに生まれる ウィーン国立音楽演劇大学とベルン音楽院でヴァイオリンと作曲を学ぶ。2001年に「クレディ・スイス・グループ・ヤング・アーティスト賞」を受賞し、翌年9月にルツェルン・フェスティバルでマリス・ヤンソンス指揮ウィーン・フィルとの共演を果たした

 

     

 

自席は1階25列11番、左ブロック右から2つ目。会場は文字通り満席です 自分が演奏するわけでもないのに、待望のコンサートということで緊張します

大きな拍手の中、オケのメンバーが入場し配置に着きます 弦は左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります 管楽器は中央後方ですが、ホルンだけは右手後方にスタンバイしています。配布されたこの日の出場楽員名簿によると、コンマスは AFANASII  CHUPINさんです

黒の衣装のコパチンスカヤがクルレンツィスとともに颯爽と登場、ステージ中央にスタンバイします 指揮台はありません。クルレンツィスはソリストと同じ地平で指揮をすることを選ぶようです 二人とも楽譜を見て演奏しますが、クルレンツィスはタクトを持ちません

1曲目の「ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35」はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840‐1893)が1878年に作曲した作品です チャイコフスキーはホモセクシャルだったことは良く知られていますが、この年の3月、スイスのクラランで同性の恋人だったヴァイオリニストのヨーシフ・コーテクと落ち合い、彼からヴァイオリンの奏法に関する助言を受けながらこの協奏曲を書き上げました 彼はロシアの巨匠レオポルト・アウアーに初演してもらうつもりでしたが、拒絶されてしまいます 「ピアノ協奏曲第1番」にしても、この協奏曲にしても、チャイコフスキーはどういうわけか初演を拒否されています 両曲とも当時としては あまりにも先進的だったからでしょう

この曲は、第1楽章「アレグロ・モデラート~モデラート・アッサイ」、第2楽章「カンツォネッタ:アンダンテ」、第3楽章「フィナーレ:アレグロ・ヴィヴァチッシモ」の3楽章から成ります

クルレンツィスの指揮で第1楽章が開始されます コパチンスカヤの演奏は極めて起伏が大きく、最弱音と最強音の落差が半端なく大きい演奏です。またテンポもフレーズごとに速まったり遅くなったりとかなり揺れ動きます 終盤のカデンツァも同様で、かなり起伏の大きい揺れの激しい演奏ですが、説得力を持ちます 第2楽章は最弱音による美しさの極みと言うべき繊細で優しさを感じる演奏でした 第3楽章は一転、再び第1楽章と同様ダイナミックレンジが大きく、テンポが自由自在に揺れる演奏を展開します 彼女の動きはまるで獲物を狙う雌豹のようです。狙った相手は絶対逃がさないという瞬発力を感じます 私はこの曲でこれほど激しい演奏を聴いたことがありません

ここで初めて気が付いたのですが、コパチンスカヤは演奏する時は素足だったようです 演奏し終わってからスリッパのような履物を履いたので気が付きました。ピアニストではアリス・紗良・オットが素足で演奏するので有名ですが、コパチンスカヤもそうだったのか、と初めて知りました

会場いっぱいの拍手とブラボーの嵐に、コパチンスカヤはクラリネット奏者を迎えに行き、アンコールにヴァイオリンとクラリネットによりダリウス・ミヨーの「組曲」の一部をノリノリで演奏 鳴りやまない拍手に、今度はコンマスを迎えて、リゲティ「バラードとダンス」(2つのヴァイオリン編)より「アンダンテ」を鮮やかに演奏 それでも鳴りやまない拍手に、ホルヘ・サンチェス・キョン「クリン1996~コパチンスカヤに捧げる」を、口で猫の鳴き真似などを交えながらヴァイオリン独奏でハチャメチャに楽しく演奏し、やんやの喝采を浴びました

 

     

 

休憩後は「交響曲第4番ヘ短調 作品36」です この曲は「ヴァイオリン協奏曲」に先立ち1877年から78年にかけて作曲されました 彼は文通相手でパトロンだったナデージダ・フォン・メック夫人に献呈する目的でこの交響曲を書き始めたのですが、その最中の1877年春に若い女性から結婚を申し込まれ、彼女に押し切られる形で結婚しましたが、望まない結婚はすぐに破たんし、精神的に落ち込んだ彼はロシアを離れスイス、イタリア、フランスに赴いて保養に努め、イタリアのサン・レモでこの曲を完成させました その後、彼はメック夫人あての手紙で、この作品が彼自身の人生の危機を表現したものであることを明らかにしています

この曲は第1楽章「アンダンテ・ソステヌート~モデラート・コン・アニマ」、第2楽章「アンダンティーノ・イン・モード・ディ・カンツォーナ」、第3楽章「スケルツォ:ピツィカート・オスティナート:アレグロ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ・コン・フォーコ」の4楽章から成ります

オケのメンバーが再登場しますが、ヴァイオリン、ヴィオラ、そして管楽器群の奏者には椅子がありません 早い話が、チェロ、コントラバス以外の奏者は立ったまま演奏するのです なぜ、クルレンツィスはそういう演奏スタイルを取るのか? 演奏を聴きながら考えることにしました

クルレンツィスが再登場し指揮台に向かいますが、指揮台の高さは極めて低いです

クルレンツィスの指揮で第1楽章が金管のファンファーレ〈序奏〉で開始されます もっと派手に鳴ると思っていましたが、極めて落ち着いた音で、予想外でした この序奏のテーマは「交響曲第4番全体を支配する宿命」です この第1楽章を演奏するヴァイオリン、ヴィオラ、あるいはオーボエ、フルート、クラリネットなどの奏者を見ながら、なぜクルレンツィスは彼らを立ったまま演奏させるのか、と考えました 私の考えは「『一人ひとりがソリストのつもりで演奏しなさい』というクルレンツィスのメッセージではないか」ということです 本当のところは本人に聞いてみなければ分かりませんが

第2楽章はオーボエ、フルート、ファゴット、クラリネットといった木管群が特に美しい演奏を展開し、オーケストラ全体が呼吸しているように感じました 第3楽章のスケルツォは超高速で演奏されましたが、楽しい演奏でした 弦楽セクションは弓を譜面台に置いてピツィカートを奏でていました 第4楽章は高速演奏で開始され、ほとんどお祭り騒ぎです フィナーレはさらに輪をかけた超高速の弦・管・打楽器総力によるダイナミックな演奏で、「宿命」を吹き飛ばすが如きでした

すごい演奏でした 会場は割れんばかりの拍手とブラボーの嵐で、会場の温度が一気に2度上昇しました 何度も何度もカーテンコールが繰り返されます クルレンツィスは弦の最前列奏者と握手、管楽器の方に出向き、セクションごとに楽員と肩を組んで一礼し、隣のセクションに移ります これは「われらは家族だ」という彼一流のメッセージなのでしょう

やっとアンコール曲の演奏が始まります 曲の冒頭、クラリネットとファゴットによる幻想的で荘重な和音が鳴り出した時、私は「まさか」と思いました。その「まさか」は当たり、チャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」の演奏が始まりました この曲はごく普通のテンポで演奏して25分くらいかかります それほど長い曲をアンコールに演奏するのか という驚きです。さらに、「交響曲第4番」で金管楽器は精力を使い果たしているだろうに、アンコールでも吹かせるのか、というです。

クルレンツィスはしなやかな指揮で、ムジカエテルナからスケールの大きなドラマティックな演奏を引き出し、スタンディング・オベーションを呼び起こしました これほどの熱狂は本当に久しぶりです

少し冷静に考えてみると、幻想序曲「ロメオとジュリエット」は2日後の13日(水)にサントリーホールで開かれるコンサートの演奏曲目の一つです 当日券がまだ残っているとすれば、強力なアピールになったはず それと同時に、今回のアンコールが次回の絶好のゲネプロになったはずです この辺にクルレンツィスのしたたかさを感じます

午後3時に始まったコンサートが終了したのは5時40分でした ここ数年では経験したことのない熱狂的なコンサートでした 早くも「今年のマイベスト3」に入りそうな予感がします

 

     

     

     

     

     

コメント (2)
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