15日(金)。わが家に来てから今日で1873日目を迎え、トランプ米大統領は13日、ウクライナ疑惑をめぐる米議会の公聴会について「いかさまで、こんなことは許されない」と述べ、20を超えるツイートを連発し民主党を非難した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
人間だれしも 本当のことを言われると 怒りを露わにするものだよ ワトソン君!
昨日、夕食に「肉豆腐」と「ホウレン草の胡麻和え」を作りました 超コスパ料理ですが、あったまります
昨夕、東京藝大奏楽堂で藝大フィルハーモニア管弦楽団「第395回定期演奏会」を聴きました プログラムは①藤倉大「Glorious Clouds for Orchestra」、②マーラー「交響曲 第5番 嬰ハ短調」です 指揮は藝大教授・高関健です
全席自由です。1階16列25番、右ブロック左通路側を押さえました
開演に先立って6時半からプレコンサートがあり、ウェーベルン「弦楽四重奏のための緩徐楽章」が、第1ヴァイオリン=河野由里恵、第2ヴァイオリン=宮本有里、ヴィオラ=麻柄明日香、チェロ=山澤慧の入団歴の浅い4人によって演奏されました この曲はマーラーが第5交響曲を書いた後の1905年に作曲され、12音技法による作曲より前の時期の、マーラーの影響下にある作品とのことです 演奏を聴いていると、なるほどマーラーの「ピアノ四重奏曲断章」のような雰囲気を漂わせていて、映画音楽にでも使えそうだな、と思いました とても素晴らしい演奏でした
次いで高関健氏によるプレトークがあり、演奏される2曲について簡単に説明がありました マーラーの研究をしている彼のプレトークはとても有益で、いつも感心します
さて本番です。オケは左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります コンマスはソロ・コンマスの植村太郎です
1曲目は藤倉大「Glorious Clouds for Orchestra」です この曲は藤倉大(1977~)が名古屋フィル、WDR交響楽団、イル・ド・フランス管弦楽団共同委嘱により作曲し、2019年2月に第67回尾高賞を受賞した作品です 藤倉大といえば、このブログでもご紹介した映画「蜜蜂と遠雷」の課題曲の「カデンツァ」を作曲した作曲家です 長木誠司氏のプログラム・ノートによると、この曲は「腸内微生物の生態やその環境世界でのあり方を音楽にするという発想から生まれたもので、大量の微生物が『輝ける雲(グロリアス・クラウズ)』のようにあちこちをうねり回り、踊り回るような音楽」とのことです
とんでもない曲想を予想していましたが、曲を聴いた第1印象は「洗練された 統率のとれた作品」でした。現代音楽に特有の”こけおどし”的な爆音がなく、音楽が一定の秩序を保ちながら進んでいきます。とても聴きやすい現代音楽だと思いました
休憩時間にトイレに行って驚いたのは、男子トイレだけに長蛇の列が出来ていたことです トイレのある地下から1階に続く階段の途中まで列が続いています。藝大奏楽堂でこれほどの列を見たのは初めてです ブルックナーの交響曲のコンサートでは男子トイレに長蛇の列が出来ることは30年くらい前から気が付いていましたが、マーラーでこれほどの列が出来るのには驚きました マーラー愛好家に男性が多いことをあらためて感じました
さて、プログラム後半はマーラー「交響曲 第5番 嬰ハ短調」です この曲はグスタフ・マーラー(1860-1911)が1901年から翌02年にかけて作曲し、1904年に初演されました 第1楽章「葬送行進曲:正確な歩みで。厳粛に。葬列のように」、第2楽章「嵐のように激動して。最大の激烈さをもって」、第3楽章「スケルツォ:力強く、速すぎずに」、第4楽章「アダージェット:非常に遅く」、第5楽章「ロンド:アレグロ~フィナーレ:アレグロ・ジョコーソ」の5楽章から成ります なお 第1、第2楽章は間を置かずに演奏、この2つの楽章を第1部とし、第3楽章を第2部、そして続けて演奏される第4、5楽章を第3部と捉えています
ステージ上のホルンは7人、右サイドにはハープが2台スタンバイしています。文字通りフルオーケストラ態勢です
第1楽章冒頭はトランペットのソロによりファンファーレが奏でられますが、この女性トランペット奏者が素晴らしい演奏を展開しました 彼女は この演奏を成功裏に導くパイロット的な役割を果たしました 木管を見ていると、マーラーの指示によるものでしょう。時にクラリネットとオーボエが楽器の先端を持ち上げて吹く「ベルアップ奏法」を見せます 彼らは第4楽章「アダージェット」を除くすべての楽章でベルアップ奏法を見せました 第2楽章はマーラーの指示通り「嵐のように激動」した演奏が展開します オケは高関氏のメリハリのある指揮にピタリとついていきます
第3楽章に入るにあたり、高関氏がプレトークで予告していた通り、ホルン独奏者が指揮者の左サイドにスタンバイします。ほとんど「ホルン協奏曲」の態勢です かなり若いホルン奏者ですが、時にベルアップ奏法を交えながら素晴らしい演奏を繰り広げました 第3楽が終わると彼は定位置に戻り、オケはチューニングを始めます
さて、この独奏ホルンの演奏位置変更には大きな意味があります 一つは、プレトークで高関氏が語っていたように「マーラーは第5番を10回くらい指揮しているが、最後の3回ほどは独奏ホルンを指揮者の傍らで演奏させた」という事実です もう一つは、第3楽章に入る前と第3楽章が終わった後に”間”を置くことによって、この作品が第1部(第1、2楽章)、第2部(第3楽章)、第3部(第4、5楽章)の3部から構成されていることを時間的な感覚の中で示したことです 高関氏はダテに独奏ホルン奏者の位置を変更したのではないのです
第4楽章「アダージェット」はヴィスコンティの名作「ヴェニスに死す」のテーマ音楽としてあまりにも有名です あの映画における演奏はイタリア・ローマのサンタ・チェチーリア管弦楽団による演奏ですが、あまりにも甘くロマンに満ち満ちた演奏です この日の高関氏の指揮による演奏は、過度な甘さを抑えたビターで引き締まったシンフォニックな演奏でした 第5楽章の「ロンド:フィナーレ」はアルマとの結婚を果たしたマーラーの喜びを表したかのような極めて楽観的で無防備な音楽ですが、藝大フィルハーモニアは高関氏の明快な指揮のもと渾身の演奏を展開、マーラーの喜びを素直に表出しました
最後の一音が鳴り終わるや否や、満場の拍手とブラボーがステージに押し寄せました 高関健のマーラーはいい 来年は交響曲第10番(アダージョ)を取り上げるとのことです
なお、この日の演奏は12月20日(金)午後9時からNHK-Eテレ「ア・ラ・ラ? クラシック」、もとい、「ラ・ラ・ラ・クラシック」で放送されるそうです ご覧になってはいかがでしょうか