人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

下野竜也 ✕ 音楽大学フェスティバルオーケストラでブルックナー「交響曲第4番”ロマンティック”」、三善晃「祝典序曲」を聴く / 芸術と政治プロパガンダ ~ 日経「文化時評」から

2022年03月28日 07時00分26秒 | 日記

28日(月)。昨日の日経朝刊「文化時評」に同社編集委員・赤川省吾氏が「政治プロパガンダの甘美な調べ 待ち望まれるのは強権を支えるのではなく、倒す芸術」という見出しのもと 世界の音楽界を取り巻く状況について論評しています 超略すると次の通りです

「ロシアがウクライナの国土を踏みにじり、欧米ではクラシック音楽でもロシア排除が進む。やむを得ないだろう 政治と音楽が関係ないというのは詭弁に過ぎない 戦後欧州史を振り返れば、強権国家における芸術分野は常に政治プロパガンダと表裏一体だった 日本も覚悟を問われる。ミュンヘン市の名門オーケストラ、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めるロシアのワレリー・ゲルギエフは、『プーチンの仕掛けた残虐な侵略戦争を批判してほしい。そうでなければ契約を打ち切る』と市長から通告を受けたが、明確な返答をしなかったため解任された 仮に残留ならどうなっていたか。聴衆は総スカン。コンサートのたびにブーイングの嵐となっていただろう 欧州はオケや歌劇場を手厚く財政支援する。行政として侵略戦争を是認する音楽家は、誰であろうと税金で抱えることはできない 即時解任は当然の帰結だ。音楽が政治と無縁というのは幻想だ。強権国家で芸術家の地位が高くなれば権力に近づくことを、欧州は経験則として知っている。人事や予算を握るには、反体制派の弾圧など人権抑圧に目をつぶって体制の一部になるしかないからだ しかし、高い芸術性があってもプロパガンダに協力すれば、汚点は一生ついてまわる。ロシアのオケを欧州に招くのは難しい。興行収入は経済制裁の抜け穴になるからだ。欧州から遠い日本にこの緊張感はなかなか伝わらないが、今後は鈍感ではいられない。待ち望まれるのは強権を支えるのではなく、倒す芸術。1989年、チェコスロバキアの共産独裁を終わらせたビロード革命の主役は劇作家ハベルだった いまはロシアの民主化につながる、勇気ある芸術パワーに期待したい

日本と違い、欧州諸国ではオーケストラや歌劇場に対する経済支援が手厚いだけに、責任者としては納税者である国民から批判される前にリスク回避の行動を取らざるを得ないのだと思います それにしても「高い芸術性があってもプロパガンダに協力すれば、汚点は一生ついてまわる」という言葉は、ナチスを美化した映画監督リーフェンシュタールや、元ナチス党員だった指揮者カラヤンなどの歴史的事例があるだけに重みがあります

ということで、わが家に来てから今日で2634日目を迎え、ウクライナ侵攻で苦戦を強いられているロシアのルドスコイ第1参謀次長は侵攻開始からの1か月を総括し、ウクライナ軍の戦闘能力を弱体化したので、今後は親ロ派の支配地域を含む東部のドネツク、ルガンスク2州全域の「解放」に注力すると説明した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     かつて日本軍が「後退」を「転進」と言い換えたレトリックをまんまと応用したな

 

         

 

昨日、「東京・春・音楽祭2022」主催者から東京春際ワーグナー・シリーズ「ローエングリン」の出演者変更お知らせメールが届きました それによると、3月30日と4月2日に東京文化会館大ホールで開催予定の「ローエングリン」のオルトルート役エレーナ・ツィトコーワ(メゾ・ソプラノ)は「本人の都合により出演が出来なくなり、代わってアンナ・マリア・キウリが出演することになった」としています 本番の3日前になって急きょ代役通知とはどうなっているのでしょうか それと、いつも気になるのは「本人の都合」とは何なのか、ということです その都度、契約ってなに?と言いたくなります

 

     

 

         

 

ヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ「こうもり」の映画のチケットを取りました 4月23日(土)13時から銀座ブロッサムホールで上映されます 1972年オットー・シェンクの演出による作品で、ロザリンデ=グンドゥラ・ヤノヴィッツほか、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルの演奏です

 

     

     

 

         

 

昨日、東京芸術劇場コンサートホールで「第11回  音楽大学フェスティバルオーケストラ」演奏会を聴きました プログラムは①三善晃「祝典序曲」、②ブルックナー「交響曲第4番 変ホ長調 ”ロマンティック”」です 演奏は音楽大学フェスティバルオーケストラ(上野学園大学、国立音楽大学、昭和音楽大学、洗足学園音楽大学、東京音楽大学、東京藝術大学、東邦音楽大学、桐朋学園大学、武蔵野音楽大学の選抜メンバー)、指揮=広島交響楽団音楽総監督の下野竜也です

弦は左から第1ヴァイオリン(15)、第2ヴァイオリン(14)、チェロ(10)、ヴィオラ(12)、コントラバス(8)という並び メンバーリストによると、コンミスは洗足学園の松本志絃音さんです 管楽器は1曲目と2曲目でメンバーが入れ替わるようです

 

     

 

1曲目は三善晃「祝典序曲」です この曲は三善晃(1933‐2013)が1970年の大阪万博に際して万博から委嘱されて作曲した作品で、同年3月14日の開会式で太陽の塔が立つお祭り広場で岩城宏之指揮NHK交響楽団により初演されました

下野の指揮で演奏に入りますが、西洋風の音楽と和風の音楽がミックスされたような曲想で、弦楽器も管楽器もパーカッションもリズム感に満ちたアグレッシブな演奏を展開しました

 

     

 

休憩なしで2曲目に入りますが、ステージの準備の合間に下野氏がマイクを持って登場しトークに入りました

「昨日、ミューザ川崎で同じ曲を演奏しました このフェスティバルはコロナ禍のため20年、21年の2年間中止になってしまいました 今回はコロナ感染拡大を防ぐため休憩なしのプログラムを組みました これから演奏するブルックナー『交響曲第4番』では朝比奈隆、ギュンター・ヴァントといった大巨匠を思い出します 若い指揮者がブルックナーを演奏するのはどうしたものか、といった議論があるかもしれませんが、若い頃からチャレンジすることは大事なことだと思います 一方、学生時代にブルックナーを演奏する機会もあまりないと思います ちなみに、舞台上の学生の皆さんで今回初めてブルックナーを演奏するという人は を挙げてください」と問いかけると、約半数の学生が を挙げました。これにはビックリしました

さて、準備が整ったのでブルックナー「交響曲第4番 変ホ長調 ”ロマンティック”」(ハース版)の演奏に入ります この曲はアントン・ブルックナー(1824‐1896)が1874年に作曲(その後数度改訂)した作品です この日は、1878年と80年に改訂した楽譜をもとにロベルト・ハースによって校訂された「ハース版」によって演奏されます 第1楽章「躍動して、しかし速すぎずに」、第2楽章「アンダンテ・クアジ・アレグレット」、第3楽章「スケルツォ:運動的に」、第4楽章「躍動的に、しかし速すぎずに」の4楽章から成ります

弦楽器の微妙なトレモロに乗ってホルンが主題を奏でますが、このホルンが素晴らしかった ここで失敗するとズッコケますが、安定感抜群でした 第2楽章ではオーボエ、クラリネット、フルートといった木管楽器が素晴らしい演奏を展開していました 第3楽章ではホルン、トランペット、トロンボーンといった金管楽器が冴えわたりました 中間部のレントラー風の音楽では弦楽器と木管楽器のやり取りが楽しく聴けました 第4楽章では弦楽器群の渾身の演奏に、ホルンを中心とした金管楽器、木管楽器、打楽器が加わり、音の大伽藍を築き上げました

満場の拍手に、下野はセクションごとに学生たちを立たせ、スポットライトを当てました

下野氏の指揮を見ていて感じたのは、丁寧な音楽づくりです 短時間のうちに、よくもここまで学生の寄せ集めオケを仕上げたものだ、と驚きます 流石は「オーケストラ・ビルダー」と言われているのも伊達ではないと思いました

この日の演奏をもって大学を卒業していく学生も少なくないのではないかと想像しますが、進学先・就職先は決まっているのでしょうか? 他人事ながら心配になります 小さな親切、大きなお世話でしたね

 

     

コメント
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