24日(木)その2.よい子は「その1」から見てね。モコタロはそちらに出演しています
昨日の日経夕刊第1面のコラム「あすへの話題」に文化人類学者・上田紀行氏がエッセイを寄せています 新国立劇場でヴェルディのオペラ「椿姫」を鑑賞した時のことを書いていますが、たぶん21日の千秋楽公演をご覧になったのだと思います ヴィオレッタを歌った中村恵理の”全身全霊をなげうった哀切極まりない絶唱”に感動を覚えたことを書いたうえで、後半はカーテンコールの様子を次のように紹介しています
「終演後は万雷の拍手。オペラはどんな悲劇でもカーテンコールで歓びを爆発できる 指揮者が呼び寄せられ舞台中央に。しかしそこからが違った。歌手たちが客席を指す。そして彼はそこから涙が止まらなくなった 聴衆が掲げていたのはウクライナの国旗だった。ウクライナ人指揮者ユルケヴィチは胸のチーフに何回も触れながら、涙をぬぐった。ウクライナカラーのチーフ。来日直後に母国が侵攻された中、公演を成功に導いた 魂が引き裂かれる毎日、どんな思いで椿姫に向き合ったのだろう。気づくとオーケストラのコンサートマスターが立ち上がって熱烈に舞台に向かって拍手をしていた ロシア生まれ、滞在歴約30年のニキティン。泣いた。この一瞬に。希望に。いや無力さに。分からない。ただただ泣いた」
これを読んで、そこにいた聴衆は上田さんと同じ思いでユルケヴィチに拍手を送り 涙したのではないか、と思います
新国立オペラ「椿姫」については3月10日のプルミエ(初日)公演の様子を翌11日付toraブログでご紹介しました 興味のある向きはご覧ください
本公演上演中の11日間にロシアのウクライナ侵攻は市民への無差別攻撃に変わってきました 祖国ウクライナが、グレーテス国連事務総長が「生き地獄」と呼ぶまでの国家存亡の危機にある中、全5公演を成功に導いたユルケヴィチ氏のプロフェッショナル魂には頭が下がります また、オーケストラピットからユルケヴィチに拍手を送ったグレブ・ニキティンの態度を見ると、音楽に国境はないことをあらためて感じるとともに、一人の独裁者の妄想のために多くの無実の市民が理不尽に殺されていくことに大きな怒りを覚えます