人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ウクライナの指揮者ユルケヴィチによる新国立オペラ「椿姫」を巡る出来事 ~ 日経「明日への話題」文化人類学者・上田紀行氏のエッセイから

2022年03月24日 08時15分39秒 | 日記

24日(木)その2.よい子は「その1」から見てね。モコタロはそちらに出演しています

昨日の日経夕刊第1面のコラム「あすへの話題」に文化人類学者・上田紀行氏がエッセイを寄せています 新国立劇場でヴェルディのオペラ「椿姫」を鑑賞した時のことを書いていますが、たぶん21日の千秋楽公演をご覧になったのだと思います ヴィオレッタを歌った中村恵理の”全身全霊をなげうった哀切極まりない絶唱”に感動を覚えたことを書いたうえで、後半はカーテンコールの様子を次のように紹介しています

「終演後は万雷の拍手。オペラはどんな悲劇でもカーテンコールで歓びを爆発できる 指揮者が呼び寄せられ舞台中央に。しかしそこからが違った。歌手たちが客席を指す。そして彼はそこから涙が止まらなくなった 聴衆が掲げていたのはウクライナの国旗だった。ウクライナ人指揮者ユルケヴィチは胸のチーフに何回も触れながら、涙をぬぐった。ウクライナカラーのチーフ。来日直後に母国が侵攻された中、公演を成功に導いた 魂が引き裂かれる毎日、どんな思いで椿姫に向き合ったのだろう。気づくとオーケストラのコンサートマスターが立ち上がって熱烈に舞台に向かって拍手をしていた ロシア生まれ、滞在歴約30年のニキティン。泣いた。この一瞬に。希望に。いや無力さに。分からない。ただただ泣いた

これを読んで、そこにいた聴衆は上田さんと同じ思いでユルケヴィチに拍手を送り 涙したのではないか、と思います

新国立オペラ「椿姫」については3月10日のプルミエ(初日)公演の様子を翌11日付toraブログでご紹介しました 興味のある向きはご覧ください

本公演上演中の11日間にロシアのウクライナ侵攻は市民への無差別攻撃に変わってきました 祖国ウクライナが、グレーテス国連事務総長が「生き地獄」と呼ぶまでの国家存亡の危機にある中、全5公演を成功に導いたユルケヴィチ氏のプロフェッショナル魂には頭が下がります また、オーケストラピットからユルケヴィチに拍手を送ったグレブ・ニキティンの態度を見ると、音楽に国境はないことをあらためて感じるとともに、一人の独裁者の妄想のために多くの無実の市民が理不尽に殺されていくことに大きな怒りを覚えます

 

     

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新日本フィル「室内楽シリーズ ~ 澤田和慶プロデュース編 愛に触れて」を聴く / ロシアのウクライナへの侵攻に関しラトルら音楽家119人が嘆願書を発表 ~ 月刊音楽祭から

2022年03月24日 06時52分53秒 | 日記

24日(木)その1。月刊音楽祭はツイッターで「ラトルら世界的な音楽家119人が嘆願書。ウクライナ侵略戦争の即時停止、ロシアのアーティストの一律ボイコットに反対の訴え」という記事をツイートしています ツイートの内容は以下の通りです

「世界的な音楽家119人が22日、ロシアによるウクライナ侵略戦争を終わらせ、ロシアのアーティストをボイコットすることを終わらせるための嘆願書を発表した サイモン・ラトルをはじめ、アントニオ・パッパーノ、ファビオ・ルイージといった指揮者、バリ・コスキーやアンドレアス・ホモキといった演出家、バーバラ・ハン二ガンやマティアス・ゲルネといった歌手が署名している 『嘆願書』は『プーチン全体主義体制が主権国家ウクライナに対して放った無法戦争、ロシアの戦車やミサイルが無実の市民を狙っており、いかなる場合も正当化できない』と述べ、『病院や学校、劇場や大学、教会などの民間人への爆撃や暴行は、戦争犯罪、人道に対する罪であり、例外なく明確に非難されなければならない』と強調している。また、『この残虐な戦争の影響を受けているすべての人々の苦しみは計り知れない。このような状況において、私たちの以下の訴えは最優先事項とはみなされず、おそらく一部の人々には無関係または不快に映るかもしれないことを理解している 私たちは、プーチン政権とその擁護者、宣伝者、プーチンやその政府とのつながりが明確に文書化されている情報操作者に対し、制裁と外交圧力をかけることを全面的に支持する』と述べている。一方、『すべてのロシア人とベラルーシ人、この2つの国の文化人すべてが、この恐ろしい侵略を支持しているわけではない したがって、われわれは、独裁者とその支持者の行動を、彼らの共謀の直接的な証拠なしに、ロシア人やベラルーシ人を非難することは不当であると考える』とも述べ、ロシアやベラルーシのアーティストをひとまとめにボイコットすることにも反対している」

そして、署名しているアーティストを列挙していますが、私に名前が分かるアーティストは以下の通りです

サイモン・ラトル、アントニオ・パッパーノ、フランツ=ウエザー・メスト、エドワード・ガードナー、アンドレアス・ホモキ、レオニダス・カヴァコス、フランツ・ペーター・ツィンマーマン、タベア・ツィンマーマン、パトリシア・コパチンスカヤ、ドミトリー・シコトヴェツスキー、タニヤ・テツラフ、イアン・ボストリッジ、イサベル・ファウスト、アレクサンダー・メル二コフ、トマス・ザンデルリンク、マイケル・ザンデルリンク、アリス・サラ・オット、ルノー・カプソン、ダヴィッド・アフカム、マティアス・ゲルネ、レイフ・オヴェ・アンスネス、ファビオ・ルイージ、クリスティアン・ヤルヴィ。

日本人アーティストの名前が見当たりませんね。こうした動きが広がると良いと思います

ということで、わが家に来てから今日で2630日目を迎え、モスクワの裁判所は22日、ロシアの反政権運動家アレクセイ・ナワリヌイ氏に対し、詐欺や法廷侮辱罪で禁錮9年と罰金120万ルーブル(136万円)を言い渡した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     プーチンの政敵への対処法は暗殺するか不当逮捕のうえ刑期を延長するかどちらか

 

         

 

昨日、夕食に「ぶりの照り焼き」「生野菜とアボカドのサラダ」「マグロの山掛け」「舞茸の味噌汁」を作りました 和食はいいですね

 

     

 

         

 

昨夜、すみだトリフォニーホール(小)で新日本フィル「室内楽シリーズ ~ 澤田和慶プロデュース編 愛に触れて」を聴きました プログラムは①ボロディン「弦楽四重奏曲第2番 ニ長調」、②レスピーギ「メゾ・ソプラノと弦楽四重奏のための『黄昏』」、③ウェーベルン「弦楽四重奏のための緩徐楽章」、④フォーレ「やさしき歌」です 演奏はヴァイオリン=澤田和慶、竹中勇人、ヴィオラ=高橋正人、チェロ=多田麗王、コントラバス=城満太郎、ピアノ=鈴木花織、メゾ・ソプラノ=錦織まりあです

最近の室内楽シリーズは結構お客さんが入っていて驚きます この日も9割以上は入っていると思われます 開演前に本日のプロデューサーである第1ヴァイオリン奏者・澤田和慶氏による「プレトーク」がありましたが、前回同様ほんの4分程度で終わってしまいました 元第2ヴァイオリン奏者・篠原秀和さんによる「15分間 ノー・ペーパー 立て板に水」の天才的なトークが懐かしい    シノハラ、カムバック

 

     

 

1曲目はボロディン「弦楽四重奏曲第2番 ニ長調」です この曲はアレクサンドル・ボロディン(1833‐1887)が結婚20周年を記念して1881年に作曲、1882年にペテルブルクで初演されました 第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「スケルツォ:アレグロ」、第3楽章「ノクターン:アンダンテ」、第4楽章「フィナーレ:アンダンテ ~ ヴィヴァーチェ」の4楽章から成ります

この曲は何と言っても単独でも演奏される第3楽章「ノクターン」が聴きどころです    冒頭の多田麗王のチェロ独奏が素晴らしかったです

2曲目はレスピーギ「メゾ・ソプラノと弦楽四重奏のための『黄昏』」です この曲はオットリーノ・レスピーギ(1879-1936)が1914年に作曲した作品です 原詩はイギリスのロマン派詩人シェリーが1816年に書いた作品で、傍らで冷たくなっている恋人を見つけた娘は亡霊のように生きていく、という物語です

ソプラノ独唱の錦織まりあは愛知県立芸術大学声楽科を首席で卒業。ヨーロッパ各地でマスタークラスを受講しディプロマを取得、内外で活躍しています

錦織まりあが黒とゴールドを基調とするエレガントな衣装で登場します 美しい声質で高音も低音も自然に楽々と出ています 相手の男性を失った後、一人で長く生きた女性の悲しさ・無念さを切々と歌い上げました バックを務めた弦楽奏者は1曲目よりもアンサンブルが良かったと思います

休憩後の1曲目はウェーベルン「弦楽四重奏のための緩徐楽章」です この曲はアントン・ウェーベルン(1883‐1945)が1905年に作曲しました シェーンベルクに出会う前の21歳の時の作品で、「なんのこっちゃわからんちん」の十二音技法のかけらもないロマン的な作風です この曲ではそれぞれの楽器が良く鳴っていてアンサンブルも素晴らしかったと思います 途中で一瞬演奏が止まったような気がしましたが、楽譜通りか、フェイントか、よく分かりませんでした 4人は何事もなかったように演奏を続け、拍手を受けていました

最後の曲はフォーレ「やさしき歌」です この曲はガブリエル・フォーレ(1845‐1924)がヴェルレーヌの詩に基づいて1892年から94年にかけて作曲した連作歌曲集です 当時50歳近くになろうとしていたフォーレは家庭のある女性エマ・バルダックに惹かれており、草稿を書き上げるたびに、ソプラノのエマに歌ってもらい、彼女の助言を得て推敲を重ねたそうです 第1曲「後光に包まれたひとりの聖女」、第2曲「朝焼けが広がるのだから」、第3曲「白い月」、第4曲「ぼくは偽りの道を歩いていた」、第5曲「ぼくはほとんど怯えていた、実のところ」、第6曲「お前が消えてしまう前に」、第7曲「さて、それはある晴れた夏の日のことだ」、第8曲「そうだろう?」、第9曲「冬は終わった」の9曲から成ります

錦織まりあが白を基調とする衣装に”お色直し”して登場、ピアノの鈴木花織も加わり、演奏に入ります

錦織の歌唱は高音が美しくよく伸びます そして何より感心するのは美しいフランス語による歌唱です 1曲1曲気持ちを切り替え、幸福な愛の喜びを歌い上げました 鈴木花織のピアノも素晴らしく、弦楽奏者のアンサンブルもソリストを盛り立てていて良かったと思います

男性陣4人は飲み仲間らしいので、打ち上げが楽しみでしょうね まん延防止特別措置も解除になったので、4人までと言わず、女性の2人を加えても問題なさそうです うらやましか~

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