人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

マリア・カラスの命日に当たって考えること

2011年09月16日 06時50分09秒 | 日記
16日(金).今日はマリア・カラスの命日です.1923年生まれの彼女は1977年9月16日に死去しました.ギリシャ系移民の子としてニューヨークに生まれ,13歳のときに故国ギリシャへ帰り,アテネ音楽院で往年の名歌手ビダルゴに師事し,様々なオペラを歌いました そして名指揮者セラフィンの指導により次々とレパートリーを広げていきました.

1950年にオペラの殿堂ミラノ・スカラ座にベルディの「アイーダ」でデビュー,1956年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場でべッルリーニの「ノルマ」を歌ってデビューし成功を収めます.20世紀におけるイタリア・オペラのあり方に大きな変化をもたらすほどの大きな存在となりました.オペラの世界は,紀元前(BC)紀元後(AD)になぞらえて,「ビフォア・カラス,アフター・ディーバ」つまり「カラス以前,歌姫以後」と言われるほどの存在になりました

カラスのCDはオペラとアリア集のほとんどが揃っています.居間のCDラックの一部は「マリア・カラス・コーナー」になっていて,CDを並べた幅は90cmぐらいに達します.LPもありますが,面倒なので数えません.かつてはLDも持っていましたが,LDプレーヤーが壊れてしまい,泣く泣く処分しました

カラスは決して美声ではありません.でも,一度聴いたら忘れられない声です.トスカ,ノルマ,ミミ・・・何を歌ってもカラスはカラス.ドラマチックに歌い上げます.

よく聴くお勧めCDはEMIから出ている「ザ・ベスト・オブ・マリア・カラス」です.第2集,第3集も出ていますが,最初のCDです(下の写真.TOCE-7998).ベッリーニの「ノルマ」から「清らかな女神よ」,サン・サーンスの「サムソンとデリラ」から「あなたの声に心は開く」,プッチーニの「ラ・ボエーム」から「わたしの名はミミ」,同「トスカ」から「歌に生き,恋に生き」など,どれもが魅力的な歌がカラス独特の声で収録されています

話は全く変わりますが、カラスの生まれ故郷ギリシャは、今や経済危機の真っただ中にあります 金融市場でギリシャがデフォルト(債務不履行)状態に陥るとの懸念が再び高まっています。公務員の数が多いとされるギリシャの人件費削減や公営企業の民営化、年金改革などの削減策は出し尽くしたと言われています。一方,同じ経済危機が叫ばれる日本は,国の借金が800兆円とも言われており、政府は虎視眈々と消費税を引き上げを狙っています。大震災から立ち直りつつある日本は、これからどうなるのでしょうか?たまにはカラスの行水ではなく、ゆっくりとお湯に浸かって国の行く末を考えてみたいと思います

   

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新宿鮫,ファントム・ピークス,ベニスに死す,事の次第,おやすみラフマニノフ

2011年09月15日 06時26分38秒 | 日記
15日(木).昨日休暇を取りました.午前中,新しい洗濯機が届くのと,自動車運転免許証の更新手続きに行くためです

先週中頃,洗濯機が”ガラガラ,ドンドン”と凄い音がするので,フタを開けて中を見ると,底で回転している円盤が外れているのです 何とかなるだろうと思って,10円玉で円盤の真ん中のネジを回して固定しました.再び水を入れて洗濯するとちゃんと回転している音が聞こえたので一安心しました.が,念のため,そーっとフタを開けて覗いてみると,それなりの音が出ているだけで,水は回転していないのです どうも円盤が空回りしていたようです.

これまでの洗濯機は17年以上も働いてくれたので,もう寿命です.7年位前に乾燥機の部分が壊れてそのままになっていました.こうなったら新しい洗濯機を買うしか洗濯の余地がない,もとい,選択の余地がないのです 土曜日に池袋のBでT社の全自動洗濯機を注文してきました.家電リサイクル料金として洗濯機,乾燥機,接続台の3点で1万円近くも取られました.ちょっとびっくりですね

配達の人たちがやって来たのは午前8時半頃でした.廊下にCDラックを並べているので,通り道が狭くなっていて,古い洗濯機の搬出と新しい洗濯機の搬入がギリギリでした.何とか所定の位置に備え付けてもらい,洗剤を入れて試運転しました.これぞ洗剤一隅のチャンス,もとい,千載一遇のチャンス すごく静かです.とにかく新品はいいですね

昼食を取って,板橋警察署に運転免許証の更新手続きに行きました.ゴールド免許なので,視力検査をして,写真を撮って,ビデオを見て,40分くらいで新しい免許証がもらえました.ただし,3250円の更新手数料を取られました.警察もいい商売をしますね

午後,時間があったので池袋に出てJ書店で本を3冊買ってきました.2日前に大沢在昌の「新宿鮫」を読み終わり,いま北林一光著「ファントム・ピークス」を読んでいます.新たに購入したのは①トーマス・マン「ベニスに死す」,②佐藤正午「事の次第」,③中山七里「おやすみラフマニノフ」です.①は言うまでも無くビスコンティの映画で有名ですね.全編を通じてマーラーの第5交響曲「アダージェット」が流れます 10月から銀座テアトルシネマでリバイバル上映されるそうです.②は,この人の,何というか”すっとぼけた”感じの小説やエッセイが好きなのです.③は「さよならドビュッシー」に次ぐ音楽推理小説第2弾です.どれから読もうか,と悩むのも活字中毒の私にとっては楽しみの一つですね

      


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「最適残響時間」とは?~コンサートホールの残響時間を考える

2011年09月14日 06時37分53秒 | 日記
14日(水)。先日のブログで内幸町の新イイノホールの残響時間が1.5秒だと紹介しました。これを機会に残響時間について調べてみました。

「残響」とは音源が発音を停止した後も音が響いて聞こえる現象をいい,「残響時間」とは音源が発音を止めてから、残響音が60デシベルまで減衰するまでの時間をいいます。60デシベル減衰するとは、簡単に言うと聞こえる音のエネルギーが100万分の1まで小さくなるということです

残響時間は、音が鳴っている場所の壁、床、天井の素材や、空間の大きさによって変化し、一般的に素材が固いほど、また空間が大きいほど長い残響時間となります。演奏会用のホールでは設計段階で残響時間を設定し、演奏時に反響板を設置したり、壁面を操作したりして調節します。また、観客も吸音体となるため、残響特性は観客の人数によっても変化し、演奏に影響します

ネットで調べてみたら、そのことが裏付けられました。以下は都内の主なコンサートホールの残響時間です。大きいホールほど残響時間が長いのが分かります。

サントリーホール          2.1秒
東京芸術劇場           2.1秒(現在、改装工事中)
すみだトリフォニーホール     2.0秒
ミューザ川崎コンサートホール  2.0秒(現在、改装工事中)
東京オペラシティホール     1.96秒
紀尾井ホール            1.8秒
イイノホール             1.5秒(11月1日オープン)
東京芸術大学奏楽堂   1.6~2.4秒(可変天井等により調節可能)

これもネットで調べていて分かったのですが、「最適残響時間」とう考え方があるそうです。残響音が少なすぎると音楽音は豊かさに欠け、多すぎると明確さに欠ける。最適な残響音はどんな内容で決まるのか、というテーマです。大雑把に言って、室容積の大きなホールでは、低音域の残響時間が長めな特性があり、容積が小さなホールでは、全周波数の音に対して平坦な特性があるとのことです

音楽のジャンルでは、大きなホールほど①ロマン派の音楽②近代の音楽③古典派の音楽(オーケストラ)④室内楽⑤講演の順に音響特性が優れているとのことです。ブルックナーの交響曲などを大ホールで聴くと、このことがよく分かります また、大きなホールでマイクを使って何かを解説するのを聞くと、反響しすぎて聞き取りにくいことがままあります 

最適残響時間は、その日の天候、温度、湿度などによっても変わるのでしょうね

  




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チョン・ミュンフン、北朝鮮を訪問~音楽による南北交流を

2011年09月13日 17時01分48秒 | 日記
13日(火)その2.今日の朝日朝刊「国際面」に「韓国の指揮者チョン・ミュンフン氏、訪朝」の見出しが躍っていました。記事によると、

世界的な指揮者でソウル・フィル音楽監督チョン・ミュンフン氏は12日、北京経由で訪朝した。チョン氏はユニセフ親善大使で、北朝鮮の子どもの音楽教育や交響楽団の交換演奏会などを協議するとして韓国政府に訪朝を申請していた。チョン氏は12日、北京の空港で「一人の人間として音楽家として、もっと自然に南北が近くなることを望む」と語った。

チョン・ミュンフンは現役の指揮者の中で一番好きな指揮者と言ってもいいと思います それは指揮者としての実力とともに、一人の人間として尊敬できるからです。ソウル・フィル、アジア・フィルと来日したときにも、ヒューマニストとしての彼の姿を目の当たりにしました

はっきり言って今回の行動は、傍から見れば「どうせ相手が北朝鮮なんだから、何をやっても効果はないよ」と思われがちですが、それでも彼は行動せざるを得なかったのだと思います。政治や経済が機能しないときにこそ、こうした文化面での交流が大切なのだと思います。そういう意味でも、今回の彼の行動には拍手を送りたいと思います
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水道橋「白十字」で聴いたバッハ「トッカータとフーガ」の想い出~今日はレオポルド・ストコフスキーの命日

2011年09月13日 06時51分30秒 | 日記
13日(火).今日は「オーケストラの少女」やディズニーの音楽アニメ「ファンタジア」など,映画にも出演しクラシック音楽の普及に努めた指揮者レオポルド・ストコフスキーの命日です.彼は1977年9月13日に95歳の天寿をまっとうしました.

ストコフスキーは1911年から40年までフィラデルフィア管弦楽団の常任指揮者を務めましたが,1922年にストラビンスキーの「春の祭典」をアメリカ初演したり,1937年にはラフマニノフの「交響曲第3番」を世界初演したりしました メディアへの関心が深く,1925年に初めて電気録音を行い,1932年には世界初となるステレオ録音を行っています そういう方面の後継者はヘルベルト・フォン・カラヤンでしょうか

幅広いレパートリーを持つ彼は,オーケストラを操る達人といわれ”音の魔術師”と言われました.彼の指揮の特徴は指揮棒を持たず両手で指揮をすることです オーケストラの配置を,それまでの第1バイオリンと第2バイオリンとを左右に分ける”対向配置”から,第1バイオリン,第2バイオリン,ビオラ・・・と高い音から低い音へ順番に並べたのも彼が最初だと言われており,これはステレオ録音の効果を出すためだったと言われています.

ストコフスキーで忘れられないのは,学生時代,水道橋の白山通りにある”白十字”という喫茶店(今でもあるようです)に行った時のことです.店のドアを開けたとたんに,奥の方からバッハの「トッカータとフーガ」(管弦楽版)の”音の洪水”が押し寄せてきたのです その迫力に圧倒されてしばし呆然と立ちつくしたことを覚えています.それがストコフスキーの編曲によるバッハだったのです.まだクラシック音楽を聴き始めて間もない頃だった私にとって,それは衝撃的な出会いでした

下の写真・左はLPレコード「バッハ・トランスクリプション」.バッハの「トッカータとフーガ」ほかをストコフスキーが管弦楽用に編曲した曲が収録されています.オーケストラはチェコ・フィルハーモニー管弦楽団.1972年のライブ録音です. 写真・右はCD「ストコフスキー・ステレオ・コレクション~バッハ,ヘンデル」.これも管弦楽編曲版で,オーケストラはロンドン交響楽団とRCAビクター交響楽団,1961年と1974年の録音です.久しぶりにCDの方でバッハを聴いてみましたが、「バッハは最初から管弦楽曲として作曲したのではないか」と勘違いするほど、みごとに編曲されており、新鮮な驚きをもって耳に到達しました

      
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ロッシーニ「セビリャの理髪師」を聴く~アルベルト・ゼッダ指揮,藤原歌劇団公演から

2011年09月12日 06時21分00秒 | 日記
12日(月).昨日,初台の新国立劇場で藤原歌劇団公演=ロッシーニの歌劇「セビリャの理髪師」を聴いてきました 指揮はロッシーニの世界的な権威アルベルト・ゼッダ,オーケストラは東京フィルです.キャストはアルマビーバ伯爵=アントニーノ・シラグーザ,ロジーナ=島木弥生,フィガロ=森口賢二,バルトロ=久保田真澄,ドン・バジーリオ=デニス・ビシュニャほか.

指揮者アルベルト・ゼッダについては藤原歌劇団でロッシーニ「タンクレーディ」を聴き,東京フィルで同「スターバト・マーテル」を聴いて,80歳を超えているとはとても思えない精力的な矍鑠たる指揮ぶりに圧倒され,今回も是非聴いてみたいと思ったのです.

ゼッダの指揮で序曲が始まります.ロッシーニとモーツアルトのオペラは軽快なテンポが求められます.ゼッダのは,まさにロッシーニのテンポです

シラグーザは写真でみるとスキンヘッドでツルツルなのですが,実際に出てくるとカツラを被っているのでちょっと違和感があります.しかし,第1幕に登場したリンドーロ=アルマビーバ伯爵役の彼の歌声を聴くと,さすが”ロッシーニ・テノール”に恥じない素晴らしい歌声です.初めて彼のテノールを聴きましたが,”これが噂のシラグーザか”と納得させられました

ロジーナ役はメゾ・ソプラノの島木弥生です.ソロあるいは二重唱で歌うときはいいのですが,3人以上の重唱になると声が聴こえなくなってしまうのが欠点です 今回の公演はダブルキャストで,ロジーナ役は9日がソプラノの高橋薫子で,この日がメゾ・ソプラノの島木弥生となっています.今回メゾを聴く限りではソプラノの方がいいのではないかと想像しました.むしろ小間使いベルタ役の宮本彩音(ソプラノ)の方が合唱の中でもよく声が通っていたように思います.

今回の公演で光っていたのはフィガロ役の森口賢ニです 第1幕の登場から第2幕最終局面まで,その存在感は圧倒的でした.歌もいいし役作りも良かったと思います.シラグーザとの二重唱(あのロッシーニ・クレッシェンド!)など,ぞくぞくわくわくしながら聴き入ってしまいました

第2幕フィナーレ近くのアルマビーバ伯爵の「もう逆らうのはやめろ」は長いアリアですが,シラグーザは明るいテノールで朗々と歌い上げ,聴衆の圧倒的なとブラボーを受けていました.初めて”拍手が鳴り止まない”状況を目の当たりにしました 何分続いたのか,実際には1分とかせいぜい2分だったのかも知れませんが,ものすごく長く感じました.私自身もこれほど長く拍手をした記憶がありません.すごい実力と存在感です

カーテンコールではソリストとともに指揮者アルベルト・ゼッダが呼ばれましたが,80歳を超えているとはとても思えない矍鑠たる態度で聴衆の歓声に応えていました

シラグーザは,ボローニャ歌劇場とともに来日する予定でノドを痛めてキャンセルになったフローレスに代わりベッリーニのオペラ「清教徒」のアルトゥーロ役を歌うことになりました.シラグーザだったら歓迎します フローレスには,次に来日する時には是非「セビリャの理髪師」のアルマビーバ伯爵を歌って欲しいと思います

それにしてもロッシーニのオペラは何と楽しいのでしょうか.とくにこの「セビリャの理髪師」は最高傑作です

ところで,今日はモーツアルトの「バイオリン協奏曲第3番ト長調K.216」が完成した日です.1775年9月12日に生誕地ザルツブルクで作曲されました.モーツアルトは5曲のバイオリン協奏曲を作曲したと言われていますが,ピアノ協奏曲を17歳から死に至るまでピアノ協奏曲を作曲し続けたこととは裏腹に,19歳の時に集中的に作曲しています.その理由は明らかではありません.第2楽章が当時のフランスの作曲家アレクサンドル・ジュナンの緩徐楽章のスタイルを模倣していることが分かっています.優雅で明るい音楽です

      
          
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ブルックナー「交響曲第7番」を聴く~新日本フィル定期演奏会

2011年09月11日 07時23分10秒 | 日記
11日(日).昨日,すみだトリフォニーホールで新日本フィル定期演奏会を聴いてきました プログラムは①ワーグナー「ジークフリート牧歌」②ブルックナー「交響曲第7番ホ長調」の2曲.指揮はクリスチャン・アルミンクです.今回から新年度に入り座席も変わりました.前年度までは1階後方席でしたが,今年度はやや前方の16列へ.ただし前回同様通路側から1つ入った席です.通路側席を取るのは難しいようです

オーケストラのメンバーが舞台上に登場します.ン?コンサートマスターの崔文殊の頭を見るとイメチェンしていますこれまでは葉加瀬太郎並みのアフロヘアだったのが,まるでN響のコンマス,マロこと篠崎史紀のようにオールバックにしています.茶髪には違いありませんが アルミンクもオッと引いていました

第1曲目のワーグナー「ジークリート牧歌」は,ワーグナーが長男ジークフリートの誕生と妻(リストの娘・コジマ)の33歳の誕生日を祝う贈り物として1870年12月25日の朝にトリープシェンの邸宅で披露された音楽です.当日の朝は,階上の寝室へ通じる階段や踊り場に演奏家が陣取り,最上段からワーグナーが指揮をしたといいます.曲は単一楽章ですが,穏やかないい曲です 最初は弦楽だけで演奏されますが,管楽器が加わってくると音楽に奥行きがでてきます.個人的にはワーグナーの曲の中では一番好きな曲です.誕生日に自分のための音楽を演奏してもらえるコジマは本当に幸せ者ですね

この演奏会は午後2時開演ですが,1時半からプレ・トークといって指揮者アルミンクが演奏曲目を解説してくれます.この日はブルックナーについて話をしてくれました.アルミンクはオーストリア生まれですが,祖父に当る人が,ブルックナーが教師をしていた村の隣の村で学校の教師をしていたとのことです.そんなこともあって彼のことは身近に感じるそうです

ブルックナーの「交響曲第7番」第1楽章はピアニシモのバイオリンのトレモロで始まります.そして雄大なテーマが奏でられます.この楽章の途中,3時2分ごろ体に揺れを感じました.地震があったのでしょうか.オーケストラを見ても落ち着いて演奏を続けています.ひょっとすると同じ列の席の人が体を強く椅子にぶつけたのでしょうか

ブルックナーは第2楽章「アダージョ」を作曲中に自分を認めてくれたワーグナーの死去の知らせを受け,この楽章で追悼のコーダを書いたといわれています.ここで”ワーグナー・チューバ”を始めて採用し音楽に深みを与えています

第3楽章「スケルツォ」はブルックナーの中でも好きな楽章です.勇壮で快活です.最終楽章は明るい色調で始まり,ワーグナーを失った喪失感を払拭し前向きに生きていこうとする姿勢が音楽に現れています

新日本フィルのメンバーは,室内楽シリーズも会員になっているせいか,一人一人が身近に感じます.コンマスはもちろんのことですが,主席クラスの人は顔と名前がわかります.そういう意味でも同じオーケストラの中で小さなグループを作って室内楽を演奏することは”固定客=定期会員”を繋ぎ止める意味でもすごくいいことだと思います

そういえば,定期会員を継続したので,新日本フィルから「定期会員特典CD」をもらいました(写真・右).表に曲名が書かれていないので何が入っているのかわかりませんが,封を開けるのが楽しみです.こういうのも”お得意さま”を繋ぎ止めるのには有効ですね

      

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グールド対バーンスタイン~ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」を聴く

2011年09月10日 06時30分56秒 | 日記
10日(土)。中川右介著「二十世紀の10大ピアニスト」で紹介されていたピアニスト:グレン・グールドがレナード・バーンスタイン指揮ニューヨークフィルと組んで演奏したブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」のCDを購入しました.これは1962年4月6日のニューヨーク,カーネギー・ホールでのライブ録音です

CDの冒頭に、演奏を前にバーンスタインが聴衆に向けて話したスピーチが収録されています.ほぼ次のような内容です.

「心配しないでください.グールドはちゃんと来てますから.これから皆さんがお聴きになるのは,言ってみればかなり正統的とは言いがたいブラームスのニ短調協奏曲です.それは私がこれまでに聴いたことのあるどの演奏とも全く違うもので,テンポは明らかに遅いし,ブラームスが指示した強弱から外れている部分も多々あります.実は私はグールド氏の構想に完全に賛成というわけではありません.私がこの曲を指揮するのは,グールド氏は大変に確かな,まじめな芸術家ですから,彼が真剣に考えたことは何であれこちらもまじめに受け取る必要があるということと,今回の彼の構想はとても面白いものなので,皆さんにもぜひ聴いていただきたいからなのです」

「それでも昔からの疑問がまだ解決されていません.つまり,協奏曲にあって誰がボスなのか?独奏者なのか,それとも指揮者なのか?もちろんその答えは,ある時は独奏者,ある時は指揮者という具合に,場合によって違います・・・・・・今度ばかりは,2人の意見の食い違いが非常に大きいので,このささやかな説明をしようと思い立ったわけです・・・・・冒険精神にのっとって,これから演奏したいと思います」

さて,次にいよいよブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」の演奏の始まりです.第1楽章「マエストーソ」.冒頭のティンパニの連打を伴った力強い音楽が鳴ります 第1印象は,「なんだ,この遅さは」というものです.こんなにタラタラしていたら音楽が止まってしまうのではないかと心配になってきます.”もどかしい”と言ったらいいのでしょうか.バーンスタインは「第1楽章だけで1時間はゆうにかかる解釈だった」と回想しているそうです

ところが,第2楽章「アダージョ」,第3楽章「ロンド」と進むにつれて,それ程遅いという違和感がなくなります.そのテンポ設定に説得力があるのです CDジャケットの解説によると,この曲の演奏の最短記録はラザール・ベルマンとラインスドルフによるもので44分,これに対しこの演奏は53分10秒.しかし,バーンスタインがツィマーマンと組んだ演奏は54分と,こちらの方が長いのです

この演奏を2回,3回と聴いて気がつくのは、第1楽章冒頭はあくまでオーケストラによる”前奏”であって、ピアノはまだ出てきていないということです。われわれがこの演奏を”異常に遅い”と感じるのはこの”前奏”を聴いて感じることなのです。冒頭部分で”遅い演奏”に慣れてしまってから、グールドのピアノが出てきても、われわれの耳は最早”異常に遅い”とは感じなくなっているのです。ピアノが出てきた時には、これこそが”正当な”演奏スタイルなのではないか,とさえ思えてきますバーンスタインは、グールドの罠に見事にはまったのではないのでしょうか。グレン・グールドというピアニストはただ者ではない,とあらためて感じました

   
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第14回チャイコフスキー国際コンクール優勝者ガラ・コンサートを聴く

2011年09月09日 06時59分26秒 | 日記
9日(金)。昨夕、サントリーホールで「第14回チャイコフスキー国際コンクール優勝者ガラ・コンサート」を聴いてきました。演奏者は全部門を通じてのグランプリ受賞・ピアノ部門第1位・聴衆賞のダニール・トリフォノフ(ロシア)、バイオリン部門第2位(1位なし)・聴衆賞のセルゲイ・ドガ―ジン(ロシア)、チェロ部門第1位・聴衆賞のナレク・アフナジャリャン(アルメニア)、声楽部門女声第3位・聴衆賞のエレーナ・グーセワ(ロシア)の4人。バックを務めるのは高関健指揮東京交響楽団です。

チャイコフスキー国際コンクールは1958年にピアノとバイオリン部門でスタートしましたが、世界で最も伝統と名声のある若手音楽家の登竜門のひとつとされています。6月に開かれた今回のコンクールは、世界的な指揮者ワレリー・ゲルギエフを総裁に迎えました。これまでの審査員を大幅に入れ替え、世界的に活躍している演奏家を多く採用するなど、審査の公正を図ったといわれています。その割にはロシア勢の優勢が目立ちますが なお、過去の日本人の優勝者には上原彩子(ピアノ)、諏訪内晶子(バイオリン)、佐藤美枝子(声楽)がいます。みな女性ですね

会場の入りは8~9割程度でしょうか.今回はチケットを押さえたのが遅れたので2階LB3列6番という,2階席でもかなり前方の左サイドの席ですが,舞台にはかなり近く,オーケストラはビオラが正面に見えます.

トップ・バッターはソプラノのエレーナ・グーセワ。歌うのは歌劇「エフゲニー・オネーギン」から”手紙の場面”です。寝室で一人になったタチヤーナが,思いを寄せるオネーギンに長い手紙を書きながら歌うアリアです.グーセワは白いドレスで登場,ヒロインの心情を歌い上げます

続く2番手はセルゲイ・ドガ―ジン。演奏するのは「バイオリン協奏曲ニ長調」です。この曲には数々の名演奏があるので,個性を発揮して聴衆の心をつかむには相当の実力がないとだめです.ドガージンは朗々と歌わせるのですが,今ひとつ訴える力が足りないような気がします.1位なしの2位の限界でしょうか

休憩後の最初はチェロのナレク・アフナジャリャン。演奏するのは「ロココの主題による変奏曲イ長調」です。彼の演奏は詩情に溢れ,歌心があります.”演奏を聴きながら,聴く側もいっしょに呼吸が出来る”というのでしょうか,心地よい歌わせ方で聴かせます.最後の一音が鳴り終わると,あちこちからブラボーがかかりました.彼の演奏のおかげで,私はこの曲の素晴らしさを再認識しました.こういう演奏こそ名演奏というのでしょう.彼はこれから伸びるのではないでしょうか

最後の”とり”を務めるのは今回のグランプリ受賞者ダニール・トリフォノフ。彼は昨年秋のショパン国際ピアノコンクールでも3位に入賞している実力者。演奏するのは「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」です。最初からエンジン全開といった感じです.2階の自席からは彼の背中を見る形になりますが,背中を通して彼の気迫を感じます.時には獲物を追いかける豹のように,時には水面に投げた小石の波紋が広がっていくように,いろいろと表情を変えながら,チャイコフスキーの世界を描いていきます テクニックは申し分ありませんが,それだけに止まりません

演奏中に気が付いたのですが,彼の弾いているピアノは多くのピアニストが使用しているスタインウェイでも,ベーゼンドルファーでもありません.イタリアのファツィオリを弾いています.イギリスのアンジェラ・ヒューイットもファツィオリを弾いています.2人ともこだわりがあるのでしょう

終楽章が終わるや否や会場はブラボーとの嵐になりました.そして5回も6回も舞台に呼び戻されていました.彼は実力もあるし人気もあるので,”今が旬”と言えるかも知れません.

トリフォノフは今がピークなのか,これからどんどん伸びていくのか,将来が楽しみです

   
   
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中川右介著「二十世紀の10大ピアニスト」を読む

2011年09月08日 06時37分13秒 | 日記
8日(木).昨日、東京ビル協のお世話で内幸町にリニューアル・オ―プンする新イイノビルを見学しました。24階、エントランス、イイノホール、地下1階の店舗街を見学しましたが、個人的な興味はイイノホールです 案内してくれた担当者の話では、このホールは500人収容。反響板を使った場合の残響時間は1.5秒とのこと。落語や講演会の時は反響板を外し残響が無いようにするとのことでした。空調はホール全体のほか、個々の椅子の背中の下からも涼しい風が吹き出すように出来ているとのことです 

ホールの後方から前方を見ると、椅子がまるで魚の鱗のように並んでいるのが見えます。飯野海運という船会社のこだわりがここにも現れています 舞台の中央にはスタインウェイのグランド・ピアノが堂々と鎮座していました。

10月初旬からは、地下1階を通じてイイノビル、旧・新生銀行ビル、日比谷国際ビル経由で地下鉄都営三田線まで直結します。もちろん日比谷国際ビルを経由して当PCビルにも直結します。雨に濡れずにお互いのビルに行けるので便利になります

 閑話休題 

最近読んだ本は岩城宏之著「音の影」,中川右介著「二十世紀の10大ピアニスト」(幻冬舎新書)の2冊です.今回は「二十世紀の10大ピアニスト」を紹介します.著者の中川右介氏はクラシック音楽や歌舞伎を中心に,膨大な資料を収集し,比較対照作業を通して,見逃されていた事実を再構築する独自のスタイルで文筆活動を展開しています.雑誌「クラシックジャーナル」の編集長でもあります

中川氏が独断と偏見で選んだ10大ピアニストは,ラフマニノフ,コルトー,シュナーベル,バックハウス,ルービンシュタイン,アラウ,ホロビッツ,ショスタコービィチ,リヒテル,グールドの10人です

本のカバー文書によれば「”名ピアニスト”はいつの世にもいる.しかし世紀を代表する”巨匠”は稀である.天才的な技巧や感性,音楽的業績だけでは計れない”巨匠”という存在,それは戦争で世界が混乱する二十世紀,同時多発的に開花した.当代一のピアニストと名高く独創的なラフマニノフ,情熱と神技のホロビッツ,自由かつ情感溢れるルービンシュタイン・・・,計10人の大ピアニストが運命的に出会い、絡み合い,それぞれの人生と音楽を変えていく・・・・歴史の流れと共に消えた最後の巨匠たちの物語」ということになります

10大ピアニストの中に作曲家ショスタコービィチを入れることについては疑問視する向きも多いのではないかと思いますが,1927年にワルシャワで開かれた第1回ショパンコンクールにソ連から参加した5人のピアニストの1人がショスタコービィチだったのです.実質的には彼は第3位だったのですが,審査員が全員ポーランド人だったこともあり,ポーランドのピアニストが2位,3位を占めたということです

この本の中で一番面白いのはルービンシュタインとホロビッツの出会いと対立です.世界の音楽界の頂点に立っていたルービンシュタインですが,16歳年下のホロビッツの登場により,その地位が脅かされていきます.その辺のいきさつ,エピソードをまるで小説のように語っています

もう一つ面白いのは,グレン・グールドとバーンスタインが組んで演奏したブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」を巡るエピソードです.これについては1962年4月6日にカーネギー・ホールで演奏された同曲のライブ録音がCDに残っています この本を読んで”是非このブラームスの協奏曲を聴かなければ”と思い,さっそくタワーレコード渋谷店で購入しました.このCDについては別の機会に取り上げようと思っています

ルービンシュタインとホロビッツ,グレングールドに限らず,この年のこのときは誰がどうしていたかが,同時進行で語られていきます.よくもここまで詳しく調べて書いたものだと感心します読んでいると,”事実ほど面白いものはない”と思えるほど見事に巨匠たちの人生を写し取っています.クラシック音楽,特にピアノ音楽好きにはたまらなく面白い本です

     
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