25日(日)。昨日、東京文化会館でボローニャ歌劇場によるべッリー二「清教徒」を観てきました
キャストはアルトゥーロ役=アントニーノ・シラグーザ(フローレスの代役)、エルヴィーラ役=デジレ・ランカト―レ、リッカルド役=ルカ・サルシ(カザーレの代役)、ジョルジュ役=二コラ・ウリヴィエ―リほか.ミケーレ・マリオッティ指揮ボローニャ歌劇場管弦楽団・合唱団.会場は満席.自席は1階23列30番です.
シラグーザはシチリア島メッシ―ナの生まれで、1996年ディ・ステファーノ国際コンクールで第1位を獲得。その後は超絶高音を物ともしない輝かしい声で世界の歌劇場で歌い続けています
9月11日にアルベルト・ゼッタ=藤原歌劇団によるロッシーニ「セビリャの理髪師」でアルマヴィーヴァ伯爵を歌ったのを観て、彼だったらフローレスの代役が務まると思ったものです
ランカトーレはシチリア島パレルモの生まれ.1996年,ザルツブルク音楽祭でモーツアルトの「フィガロの結婚」のバルバリーナ役でデビューしました.現在はベッリーニの「夢遊病の娘」「清教徒」,ドニゼッティの「愛の妙薬」「ランメルモールのルチア」「連隊の娘」,ヴェルディの「リゴレット」など,コロラトゥーラ・ソプラノの確実な技術が求めれらる役割を中心に活躍しています.
開演に先立って,ボローニャ歌劇場のエルナーニ総裁が舞台に登場しあいさつをします
「当歌劇場は2013年に創立250年を迎えます.今回の公演は,共に来日する予定で急きょ逝去したサルヴァトーレ・リチートラの霊に捧げます.同時に,このたびの東日本大震災で被災された方々の霊に捧げます.ガンバレ・ニッポン!」
1979年イタリア生まれのミケーレ・マリオッティのタクトが振り下ろされ,第1幕が始まります.このオペラの物語は清教徒と王党派の争いであることから,ピエラッリによる演出は舞台上に高さ9メートルの剣が,争いの象徴として登場します.シンプルな舞台ですが,洗練されていて美しいと思います
シラグーザの演ずるアルトゥーロが,アリア「いとしい乙女よ,貴女に愛を」でエルヴィーラへの熱い想いを歌い上げます
シラクーザはテノールの最高音で会場を沸かせます.次いで,エルヴィーラ役のランカトーレが「わたしは愛らしい乙女」を華やかなコロラトゥーラを聴かせます.彼女の声は会場の隅々まで届き,耳の奥まで貫きます
休憩後の第2幕では,エルヴィーラの叔父ジョルジュ役のウルヴィエーリが「ほどけた美しい髪を花で飾り」をゆったりと歌います.そしてエルヴィーラがアルトゥーロに裏切られたと思い錯乱してアリア「あなたの優しいお声が・・・」を歌います.いわゆる”狂乱の場”です.ランカトーレはコロラツゥーラを駆使して歌い上げます
そして,最後にジョルジュとリッカルド(清教徒の大佐)の二重唱「ラッパを吹き鳴らせ!」が勇壮に歌われ第2幕が閉じます.この曲を聴くと,”やっぱりベッリーニはたまらないなぁ”と思います
再び休憩後の第3幕では,アルトゥーロとエルヴィーラの二重唱「いらしてください,この胸に」が歌われ,
が止みません.最後に「彼女は私に裏切られたと思った」をアルトゥーロ,エルヴィーラ,リッカルド,ジョルジュの四重唱が合唱を伴って歌われ,壮大なフィナーレを迎えます.ソリストの力もありますが,合唱の力も大きいと思います.
このオペラはとくにアルトゥーロとエルヴィーラの2人がポイントですが,今回の公演は現在望みうる最高のキャストだったのではないか,と思います
アルトゥーロ役のフローレスが来日出来なくなったのは本当に残念だったのですが,シラグーザは見事にその代役を果たしました.また,ランカトーレは,ただ弱い女性としてのエルヴィーラではなく,芯の通った女性を演じ,しっかりと歌い上げていました.
カーテンコールでは出演者が手をつないで,何度も観客の熱烈な
とブラボーの声援に応えていました.彼らも確かな手応えがあったのでしょう.今回の公演は急な出演者変更があったりして,一時はどうなることかと懸念していましたが,結果的には大成功だったと思います
[写真左はプログラムの表紙,右は同・中面]