21日(水).昨日は救急救命講習の3時間コースを受講しました.AEDは心臓を動かす機械ではなく,電気ショックを与えて心臓を一旦止めるもので,何もしなければ心臓は止まったままになるので,心肺蘇生マッサージをしなければ意味がないことをあらためて学びました.3時間コースはさすがに疲れました.
さて,昨夕、初台の東京オペラシティ・コンサートホールで、オーケストラ・アンサンブル金沢&シュレスビィヒ・ホルシュタイン音楽祭合唱団による「秋愁のモーツアルト」コンサートを聴いてきました 演奏曲目と指揮は①「交響曲第25番ト短調K183」指揮=井上道義,②「ミサ曲ハ短調」指揮=ロルフ・べックです。
開場時間の6時半に会場に着いてトイレに入るとすぐに,ロビーから美しい音楽が流れてきました ロビーに行ってみるとオーケストラのメンバーが弦楽四重奏曲を演奏していました.譜面台に置かれた紙に「ベートーベン作曲・弦楽四重奏曲第2番より」と書かれていました.どうも第1楽章だけ演奏したようです.
オーケストラは約40名,コンサートマスターは女性です.第1バイオリンと第2バイオリンを左右に分ける「対向配置」を取ります.座席は1階16列11番で中央通路側なので,楽員一人一人の顔も比較的よく見えます.
1曲目の「交響曲第25番ト短調」は,モーツアルトの約50曲ある交響曲の中でたった2曲の短調,しかもト短調の曲です.あとの1曲は言うまでもなく「第40番K550」です.25番の方は,第1楽章が映画「アマデウス」の冒頭で衝撃的に使われていました.どちらも悲劇的な曲想で哀しみが疾走します
2007年1月からこのオーケストラの音楽監督を務める井上道義の登場です.例によって自信満々の明るい表情で観客に愛想を振りまきます.そして後ろを振り返った途端にタクトを振り下ろします.これは,あのカルロス・クライバーや若き日の小澤征爾がよくやったパフォーマンスです これによって,観客は一気にその曲の世界に引きずり込まれることになります.テンポは非常に速いです.人の哀しみなんか待っていられるか,というテンポです.この曲はこれでいいのです
井上道義の指揮は,本人がクラシック・バレエをやっていたということもあってか,踊っているような印象を受けます.すべてがオーバー・アクションです.あれがいいんだ,という人もいるでしょうし,鼻持ちならない,という人もいるでしょう.私としては後者かな
後半は指揮者がロルフ・べックに代わって,シュレスビィヒ・ホルシュタイン音楽祭合唱団が加わって「ミサ曲ハ短調」の演奏です.1782年8月に,当時26歳だったモーツアルトはウィーンでコンスタンツェ・ウェーバーと結婚しました.彼女との結婚の成就を感謝して故郷ザルツブルクの教会に奉献するために作曲したということです.モーツアルトはコンスタンツェに歌わせるためにソプラノ独唱パートを作曲するなど準備を進めたようです
ミサ曲は通常,キリエ,グローリア,クレド,サンクトゥス(ベネディクトゥスを含む),アニュス・ディから成りますが,モーツアルトは,クレドは未完のまま,アニュス・ディは作曲さえしませんでした.初演は1783年10月26日,結婚1周年を終えたモーツアルト夫妻が里帰り中のザルツブルクで,聖ペテロ教会で作曲者自身の指揮で行われました
べックのタクトが振り下ろされオーケストラの合奏に続いて合唱が「キリエ」と叫びます.この時の感動をどう表現したらよいのでしょうか.一方,グローリアでは,ソプラノのソロが神を讃える歌を歌いますが,まるでオペラのアリアです.信じられない美しさです
合唱は男女各15人の編成です.合唱というと,体は出来るだけ動かさずに口をそろえて,楽譜を持つ手もそろえて,きれいに見えるように歌うというイメージがありますが,この合唱団はバラバラです.もちろんいい意味で 一人一人が身体全体を使って歌詞の意味を”表現する”という姿勢があるので,動きがバラバラに見えるのです.その反面,聴こえてくるコーラスは本当に素晴らしいハーモニーです
モーツアルトの音楽を聴くと,いつも思います.”あー,いつまでもこの音楽が終わらないでくれ”と.でも,終わるから音楽なのでしょうね