人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

三ツ橋敬子の指揮でブラームス「第1交響曲」を聴く~東京シティ・フィル特別演奏会

2011年09月23日 07時41分01秒 | 日記

23日(金・祝)。昨夕、ティアラこうとうで「三ツ橋敬子特別演奏会」を聴いてきました オーケストラは東京シティ・フィル。演奏曲目はオール・ブラームスで①大学祝典序曲②ハイドンの主題による変奏曲③交響曲第1番ハ短調の3曲です。

6時半から開場ですが,ここでもロビーでプレ・コンサートがあり,弦楽四重奏によってブラームスのハンガリー舞曲が演奏されました

 指揮者の三ツ橋敬子は1980年江東区の生まれ。16歳から指揮を学び,これまでに小澤征爾,小林研一郎,ジェルメッティなどに師事しました.2005年に東京藝大大学院指揮科を修了、2008年第10回アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで日本人として,女性として初めて,最年少優勝を果たしました.そして2010年のアルトゥーロ・トスカニーニ国際指揮者コンクール準優勝・聴衆賞を受賞しました  今回はその受賞記念公演(出身地での凱旋公演)です。演奏曲目のブラームスの交響曲第1番はコンクール決勝の時に指揮をした記念すべき作品です

オーケストラの編成は70人くらい.プログラムに載っている団員名簿によると正規のメンバーはコンマスを含めて60人弱でした.エキストラを入れて70人を確保したのでしょう.背景にはオーケストラの厳しい財政事情があるのだと思います 他の在京オーケストラは100人近く在籍しているのではないでしょうか.会場は7~8割の入りでしょうか.今回の座席は1階R-8番で中央やや左の席です.

黒のスーツで三ツ橋敬子の登場です.思ったより小柄な女性で,髪の毛を後ろで結わえてポニーテールにしています.チラシの写真とはまったく違ったイメージ,もっと引き締まった顔立ちとでも言うのでしょうか

第1曲目の「大学祝典序曲」は,ブレスラウ大学がブラームスに名誉博士号を授与したことへの返礼として作曲され,1881年1月(作曲者47歳)にブラームス自身の指揮で初演されました.

三ツ橋のタクトが振り下ろされた瞬間から,ブラームスの世界が広がります.三ツ橋の指揮は”キビキビ”,”ハキハキ”というイメージがピッタリの若さ溢れる情熱的な指揮です.一世代先輩の女性指揮者・西本智美の”華麗な”指揮のイメージとは全く違う印象です.極端な言い方をすれば,西本が”静”とすれば,三ツ橋は”動”です.エネルギッシュに全身を動かし,身体全体を使ってオーケストラから,求める音を引き出します.一瞬,若き日の小澤征爾の指揮を髣髴とさせるタクトさばきを見せます

これは2曲目の「ハイドンの主題による変奏曲」でも変わりません.ブラームスが主題として選んだのは,ヨゼフ・ハイドンのディベルティメント(Hob.11-46)に登場する「聖アントニウスのコラール」と言われていますが,現在ではハイドンの作なのか疑問視されているとのことです.三ツ橋はメリハリを付けて溌剌と表現します

休憩後の交響曲第1番は,ブラームスが20歳の頃からチャレンジしては挫折を繰り返して20年以上経った43歳の時に完成しました.当時の名指揮者ハンス・フォン・ビューローが「(ベートーベンの第9に続く)第10交響曲だ」と絶賛したエピソードは有名です.

第1楽章のティンパニの連打から集中力を見せ,ブラームスの世界に引き込みます.この曲の白眉は第4楽章です.序奏の後半でホルンが演奏する有名なメロディは,ブラームスが生涯を通じて思いを寄せていたクララ・シューマンに誕生日プレゼントとして贈った歌「山の上から谷の深いところから,私は1000回もお祝いを申します」という歌詞のついた曲です.三ツ橋は気持ち良さそうにオーケストラに歌わせます.そしてフィナーレのアレグロに突入して,オーケストラの能力を全開させます.最後の音が鳴り止んだ瞬間,とブラボーの嵐です.

オーケストラは70人ほどの比較的小規模編成でしたが,オーボエもフルートも良かったので,少数精鋭主義でやっているのだと良心的に解釈することにします.

今回初めて三ツ橋敬子の指揮ぶりを観ましたが,とてもいいと思いました.願わくば,彼女のリハーサルを見てみたいと思いました.若い女性の指揮者が70人のオーケストラを相手にどういうやり取りをして,どこまで妥協し,どこまで主張を通して音楽を作っていくのか,それを見たいと思います.11月29日に川口のリリア・ホールでもう一度ブラームスの「第1交響曲」を彼女の指揮で聴きます(東京交響楽団).この時は萩原麻未のピアノでシューマンの「ピアノ協奏曲」も演奏されるので,今からとても楽しみです

彼女は今後レパートリーを広げていくのでしょうが,当面,交響曲だったらベルリオーズの「幻想交響曲」なんかやって欲しいと思います.また,オペラも振って欲しいと思います

        

コメント (4)
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