人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ソースモニタリングエラー~真理幸子の小説「ふたり狂い」から思い出したこと

2012年01月21日 07時24分37秒 | 日記

21日(土).昨夕,地下の串焼きRでS監査役,E部長,T君,K君と飲みました   店長が自衛隊出身の元気な人に替わりました さんざん飲んで,今朝はまた頭痛です.何の話をしたのだろうか?よく覚えていません

  閑話休題  

真理幸子の「ふたり狂い」(早川文庫)を読み終わりました ご存知「殺人鬼フジコの衝動」の著者による期待作です.

女性誌「フレンジー」の人気連載小説「あなたの愛へ」の同姓同名の主人公が自分だと思い込んだ川上孝一は,思い余って著者の榛名ミサキを刺してしまいます 裁判を通していろいろな事件が明らかになっていきますが,その背後にはマイコという一人の女の存在があります.最初から最後まで読んで?と思って,再び最初に戻って読んでしまいました 誰が加害者で誰が被害者か・・・・わけがわからなくなってきます.「殺人鬼フジコの衝動」よりも明るい内容なので安心して読めます

 

            

さて,その本の中の「ホット・リーディング」と題する物語の中に「ソース・モニタリング・エラー」という言葉が出てきました。

「こうやって取材させてもらっていると、記憶違いや思い込みっていうのが多くて混乱することが多いんですよ。人の記憶って、あいまいなものでしょう?他からの影響で記憶そのものが捏造されてしまうこともあるわけで。えっと、確か、・・・・そうそう、ソース・モリタリング・エラーっていうんですって」

これを読んで、そう言われてみれば自分にもそういう経験があったな、と思い出しました

あれは、高校を卒業してから20年以上経った頃のクラス会での出来事でした  授業をボイコットした時の話になり、首謀者のSをはじめ、そこに居合わせた男たちが「新米女性教師Wの担当する”世界史”の授業をボイコットした」と言うのです 私の記憶とは違うので「それって音楽の授業じゃなかったっけ?」と口をはさんだのですが、皆は「世界史だ」と言います。どうも自分だけが記憶違いをしていたようです

どうしてそのような記憶違いをして、長い間勘違いしたまま過ごしてきたのか、よく考えてみた結果、「自分は新米の女性教師をいじめるような行為には加担していない、と思いたい」、一方「普段、自ら顧問を務める吹奏楽部の部員だけを”えこ贔屓”している音楽のM教師の授業をボイコットしたい」という願望があって、いつか、その願望が「音楽の授業をボイコットする」という夢の形で結実し、その夢を現実と思い込んで記憶していた、ということのようです

ついでに言えば、中学の時は音楽が大好きでした それはH先生が音楽の楽しさを教えてくれた素晴らしい先生だったからです 今でもよく覚えているのは中学3年の時の音楽の成績です。1学期=2、2学期=4、3学期=5とグングン上がっていきました。H先生のお陰でわがクラスは学校代表として合唱コンクールにも出場しました それが、高校に入った途端、上に書いたような理由で、音楽が大嫌いになってしまいました。その当時は「何がベートーヴェンは偉大だ何がクラシック音楽は素晴らしいだ」と反発していました 今の自分からはとても考えられない状況でした。

つくづく思うことは,いつの時代でも変わらないのは,いかに教師の影響力が大きいか,ということです

 

 

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ブラームス「ホルン三重奏曲」を聴く~新日本フィル室内楽シリーズ「音楽家たちの饗宴・第4回」から

2012年01月20日 06時39分47秒 | 日記

20日(金).ここのところ雨が降らず乾燥気味な毎日が続いていましたが,今朝6時に起きるとミゾレが降っていました.久しぶりの”お湿り”です.テレビでは「東京で初雪」と言っていました.ユキ過ぎると豪雪になるので,ほどほどに降ってほしいと思います

昨夕,すみだトリフォニー小ホールで新日本フィルの室内楽を聴いてきました 「音楽家たちの饗宴2011-2012・第4回」で,早くも前半最後のコンサートです.プログラムはチェロ合奏による①クレンゲル「4本のチェロのための4つの小品から」,②カザルス「東方の三賢人」,③同「サルダナ」,④ブラームス「ホルン三重奏曲変ホ長調」の4曲です

7時からいつものように第2ヴァイオリン奏者・篠原英和による「プレトーク」があり,ブラームスの生涯や作品についての解説がありました.原稿を見ないでとうとうと語る彼の才能は大したものだと,いつも感心します 今回の出演者は昼間,金曜,土曜に定期公演で演奏するマーラーの交響曲第9番のリハーサルをこなしてから夜の演奏会に望んでいるという話でした.楽員の皆さんも大変ですね 私は土曜日の定期公演を聴きに行きます.指揮はダニエル・ハーディングです

1曲目の「4つのチェロのための~」の作曲者クレンゲルは,往年の名チェリスト,フォイアマンを育てた人だそうです.第1チェロの竹澤秀平がリードして静かなメロディーを奏でます.ガボットでは踊るようなりズムを刻みます

パブロ・カザルスは,チェロをソロ楽器として確立させた「チェロの神様」的な存在です 2曲目の「東方の三賢人」はキリストの降臨をテーマにした詩をもとに書かれました.今度はチェロが6本です.最初のメロディーをフーガで追いかけていく面白い曲です.気のせいか,途中で”カオス”を感じたのですが,終わると首席奏者の川上徹の提唱でフィナーレ部分を(”61から”と言っていたので61小節から?)アンコール演奏しました.前半のプログラムの時間があまりにも短いので時間延長のサインが出たのでしょうか?まあ,楽しめました

3曲目の「サルダナ」はカザルスの生まれ故郷カタロニア地方の民謡をもとに書かれた賑やかな曲です.チェロは8本に増えました.それにしてもカザルスがこういう曲を作っているとは,まったく知りませんでした

さて,メインは後半のブラームスの「ホルン三重奏曲」です.ホルンの藤田麻理絵はグリーンのドレス,ヴァイオリンの佐々木絵理子はベージュのドレス,ピアノの羽石道代はブルーのノースリーブにブラックのパンツ・ルックで登場.第1楽章が厳かに始まります

第2楽章のスケルツォは情熱がほとばしります.ピアノとヴァイオリンの掛け合いにホルンがうまく絡んで絶妙のアンサンブルを奏でます

第3楽章のアダージョは,一転,寂寥感を感じさせます.こういうところが,「ブラームスはしぶい」と言われる所以なのでしょう

第4楽章フィナーレは,雲が晴れて愉悦感に満ちたメロディーです.3人の掛け合いはますます快調です

拍手に応えてエルガーの「愛のあいさつ」を三重奏で演奏しました.これもまた,快調でした

シリーズ前半終了に当たってアンケート用紙が配られました.私は普段,この手のアンケートには一切答えないのですが,自分の聴きたい曲が聴けたら嬉しいと思い,記入して投函しておきました 内容は,①これまで聴いた演奏の中で印象に残っているのは?・・・・ベートーヴェンの「七重奏曲」,②今後取り上げて欲しい曲は?・・・・・・モーツアルトの弦楽四重奏曲(ハイドン・セット),同K.136~138番,メンデルスゾーンの「ピアノ四重奏曲第1番,2番」です.

オーケストラのメンバーが小編成のグループを作って演奏するのは,すごく良いことだと思います.演奏家にとっては少人数のためゴマカシが利かないので真剣勝負になるでしょうし,聴衆にとっては演奏家との距離が近くなって音楽を身近に捉えることができます これで楽員の顔をよく覚えて,定期演奏会に臨めばコンサートの楽しみが倍増します.新日本フィルの楽員の皆さま,これからも良い演奏を聴かせてください.いつも応援しています.頑張ってください

 

              

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モーツアルト「レクイエム」,バーバー「アダージョ」が流れる中で~園子音監督「ヒミズ」を観る

2012年01月19日 06時30分06秒 | 日記

19日(木).昨日はヴァイオリニスト南紫音(みなみ・しおん)について書きました.今日は映画監督・園子温(その・しおん)について書きます.新宿ヴァルト9で園子温監督の最新映画「ヒミズ」を観ました 最初に結論を言います.凄い映画です.感動しました

この作品は漫画家・古谷実が2001年から03年まで週刊ヤングマガジン誌に連載した「ヒミズ」を映画化したものです.園子温の監督映画は最近「冷たい熱帯魚」と「恋の罪」を観てただならぬ衝撃を受けていたので,こんどの作品はどうか,と期待して観ました これは将来の明るい展望がない前2作とはまったく違う作品です.なお,ヒミズとは”日不見”(不と見は漢文でいうレ点でひっくり返る)で,土の中で日のめを見ない”もぐら”のことです ストーリーの概要は次のとおりです.

15歳の中学生・住田祐一(染谷将太)は自宅の貸しボート屋で,近くに住む夜野,圭太たちと平凡な生活を送っています.一方,同級生の茶沢景子(二階堂ふみ)は,住田に恋焦がれ付きまといます 住田は,借金を作って蒸発していた父親が帰ってくると,口のききかたが悪いと言われ殴る蹴るの暴行を受けます おまけに母親は中年男と駆け落ちして一人ぼっちになってしまいます.茶沢も親から虐待を受け,家に居られない状況下にあります.住田は,父親から「お前はいらないんだよ」と罵られて,ついに切れて父親の頭をブロックで殴りつけて死なせてしまいます

”普通の”人生を諦めた住田は,それからの人生を「オマケの人生」と名付け,自分より悪い人間を探し出して自分の手で殺すことを人生の目的として街を彷徨います.茶沢はそんな住田を,まともな人間にとどめようと説得に当たります.そして,最後に,住田はそれまではねつけていた茶沢に心を開き「自首しよう」という説得を受け入れます 2人は「住田がんばれ!」「がんばれ住田!」と叫び合いながら走り続けます.監督はこの言葉に被災地への応援メッセージを込めました

園監督は3.11の大震災を受けて,急きょ,脚本を書き換えたといいます.パンフレットに監督のインタビューが載っています

「ラストシーンは特に大きく変更した部分だ.原作は非常に暗い終わり方をするが,3.11以降の終わりなき非日常を生きねばならない子どもたちのラストシーンとしては,あまりにも酷だ.それで,絶望の中で考える希望の未来みたいなことを考えていった結果,あのようなラストシーンになった.住田の”絶望”が茶沢の”希望”に敗れる.絶望に勝つというほど荘厳な感じではなく,希望に負けたという敗北感みたいなところがある」

この映画で特筆すべきは主人公の2人,住田役の染谷将太と茶沢役の二階堂ふみの体当たり演技です ピンタの応酬は本気でした.2人は第68回ヴェネチア国際映画祭で,日本人としては初の最優秀新人俳優賞(マルチェロ・マストロヤンニ賞)を受賞しました

さて,私がいつも言っているように,映画を観るときに気にかけているのは,どんな音楽がどんなシーンで使われているかということです この映画ではクラシック音楽が3曲使われていました 残念ながらパンフレットにはいっさい使用音楽について触れていません

冒頭,今回の東日本大震災の被災地の瓦礫となった海辺の町が映し出され(宮城県で撮影),そこに住田が登場します.そこで流れていたのはモーツアルトが作曲した最後の未完の大作「レクイエム」の第1曲「レクイエム 入祭文 アダージョ」です 「レクイエム」とは死者のためのミサ曲のことです.引きずるようなリズムに乗ってバセット・ホルンとファゴットが歌い始めます.この曲は,全編を通じて,この映画のテーマのごとく何回も繰り返し登場します.被災地への追悼メッセージなのでしょう

次に,貸しボート小屋を皆で協力してリニューアルした後,食べて飲んで踊るシーンがありますが,その時に流れていたのはワルトトイフェルの「スケーターズ・ワルツ」です この曲は「冷たい熱帯魚」でも使われていました.園監督はこの曲がお気に入りのようです

そしてもう1曲,住田が茶沢に父親を殺したと告白するシーンで流れていたのは,アメリカの作曲家サミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」です 静かに流れるこの曲も「レクイエム」と同じ意味合いをもっています.この曲は住田と茶沢が「住田がんばれ!」「がんばれ住田!」と叫び合いながら走り続けるラストシーン,そしてエンドロールでも流れていました

ひょっとすると,この映画は私が今年観るであろう何十本かの映画のベストスリーに入るかも,と直感しています

 

        

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フランスの香りただようジャズ?~南紫音のヴァイオリン・リサイタルを聴く

2012年01月18日 06時15分10秒 | 日記

18日(水).昨夕,紀尾井ホールで南紫音のヴァイオリン・リサイタルを聴いてきました プログラムは①プーランク「ヴァイオリン・ソナタ」,②ラヴェル「ヴァイオリン・ソナタ ト長調」,③フランク「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」の3曲、ピアノは江口玲(あきら)です.

南紫音(みなみしおん)は1989年北九州市生まれで、現在、桐朋学園大学在学中です。2005年のロン=ティボー国際コンクールで第2位に入賞して話題をさらいました

会場は8割程度の入りです.自席は1階11列16番でセンターブロック右の通路側席です

南が右肩から下に向かってピンクの薔薇と水色の刺繍が施された黒のドレス姿で,ピアニストの江口とともに登場します.江口は慣れているせいか笑顔ですが,南は緊張のせいか笑顔が見られません.さあ,これから真剣勝負だ という面持ちです.

1曲目のプーランクのヴァイオリン・ソナタはフランスの名ヴァイオリニスト,ジネット・ヌヴーの依頼で書かれ,1943年に彼女のヴァイオリンと作曲者自身のピアノで初演されました

この曲は序奏がなく,いきなり”本題”に入ります.プーランクらしい軽妙洒脱なメロディーが展開します 江口の安定したピアノに乗せて南は自由に演奏を展開します.

さて,演奏はいいのですが,すぐ前の席の座高の高い(背が高いとは言うまい)高齢の男性が頻繁に頭を左右に傾けるのです.コンサートに行くと,何回かに1回はこういう迷惑なヤカラにぶち当たります 紀尾井ホールは1列おきに座席がずれていて,素直にまっすぐ前を見ていれば舞台の中央が見られるように作られていますが,こういう人がいる限り何の意味もなくなります 南の姿が見えたり隠れたりの繰り返しです.こういう落ち着きのない人はCDでも買って自宅でおとなしく聴いていて欲しいと思います

2曲目のラヴェルのヴァイオリン・ソナタは,1927年に盟友ジョルジュ・エネスクのヴァイオリンとラヴェルのピアノによってパリで初演されました.第1楽章からフランスの香りが漂うようなメロディーが展開します 第2楽章は「ブルース,モデラート」となっており,ジャズの影響が現れています.南はヴァイオリンをギターのように抱えて弦を指で弾いてピチカート奏法を展開します.南のサービス精神の現れでしょう 第3楽章ではラヴェルのピアノ協奏曲の第3楽章のメロディーが聴こえてきました 南は時にステファン・グラッペリ並みのスイングでヴァイオリンを操ります

最後のフランクのヴァイオリン・ソナタは,作曲者と同じリエージュ生まれのヴァイオリニスト,イザイに捧げられました.ある意味,ロマン的なヴァイオリン・ソナタの中の最高峰と言ってもいい曲で,ヴァイオリニストならこの曲を極めたいと思うでしょう 南は物憂げなピアノで始まるこの曲の独特な世界に慎重に入っていきます.それを江口のピアノが支えます

会場の拍手に応えて,アンコールにフォーレの「夢のあとに」とドビュッシー「美しき夕べ」を演奏しました しみじみとしたいい演奏でした.今回のリサイタルは南の実力は言うまでもないですが,江口のピアノが光っていたように思います ただ伴奏するに止まらず,主張すべきところは主張し,しかも主役のヴァイオリンを引き立てていました.伴奏のプロという言葉があるのかどうか分かりませんが,あるとすればうってつけの人だと思いました

 

                

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スタンディング・オベーション止まず~チョン・ミュンフン指揮ソウルフィルを聴く

2012年01月17日 06時26分06秒 | 日記

17日(火).昨夕,サントリーホールでチョン・ミュンフン指揮ソウルフィルのコンサートを聴いてきました プログラムは①ドビュッシー交響詩「海」,②マーラー「交響曲第1番ニ長調」の2曲です.

この組み合わせで聴く演奏会は昨年5月10日に次いで2回目です.あの時は庄司紗矢香を迎えてのチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」と「悲愴交響曲」を演奏しましたが,熱気に満ちたエネルギッシュな演奏が今でも忘れられません 8月2日のアジアフィルのコンサートとともに私の昨年のコンサート・ベスト5に入っています.演奏会の模様はそれぞれ5月11日,8月3日のブログに書きました

サントリーホールはほぼ満員です.自席は,東京交響楽団サントリーシリーズ定期会員席のすぐ一つ前の1-17-16です.日本のオーケストラの場合,演奏家は開演時間に合図とともに舞台に登場しますが,このオケはその前から自分の席に座って個々人で練習をしていますコンサートマスターが登場して拍手が起こるとやっと練習を終えてチューニングに移ります

前回初めて見たときにも思ったのですが,平均年齢が若いオケです.昨年5月の時よりも若返っているのではないかと思いました 1995年にチョンがソウルフィルの音楽監督になってから,厳しい選別で相当の割合の楽団員が入れ替わったと聞いているので,現在もそれが続いているのかも知れません 楽団員は弦楽器は女性比率が高く,管・打楽器は男性比率が高い傾向にあります.ソウルフィルと名乗っているもののクラリネット,ホルン,トランペット,トロンボーンの首席クラスは韓国以外の欧米人に頼っています.とはいえ,弦楽器のほとんどは韓国人です

1曲目のドビュッシーの交響詩「海」3つの交響的スケッチは,海のないブルゴーニュ地方で書かれていて,実際に海を見て書いたものではありません.初版のスコアの表紙には,葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景から”神奈川沖浪裏”」が使われています.ドビュッシーは,こういうものから印象を受けて曲を書いたのでしょう.”印象派”と呼ばれる所以です

チョンのタクトにより第1部「海の夜明けから真昼まで」が始まります.管楽器を取ってみても誰かが抜群にうまいというのではないのですが,指揮者のもと色彩感豊かにドビュッシーの心象世界を奏でていきます それは第2部「波の戯れ」,第3部「嵐と海の対話」でも変わりません.フィナーレを畳みかけるように終えると,ブラボーと拍手の嵐です.

ここで,初めて気がついたことがあります.昨年5月の時はまったく意識がなかったのですが,女性全員が黒のパンツスーツなのです.日本のオケのように黒のロングドレスを着ている女性は一人もいません この方が演奏するのに機能的なのかも知れません.また,見ていて颯爽としていてすごくカッコイイのです

マーラーの交響曲第1番ニ長調は,初稿では5楽章から成っていましたが,後に”花の章”と呼ばれた第2楽章を削除し4楽章にしましたチョンが小さな動きで第1楽章の導入部を指示し,弦楽器の弱音に乗せてクラリネットのカッコウの鳴き声が聴こえます.それからは,ぐんぐんマーラーの世界に引きずり込んでいきます.第2楽章では力強く前進します.そして第3楽章では,コントラバスのソロで有名なテーマ「狩人の葬送行進曲」がおごそかに奏でられます.先日有楽町スバル座で観たドイツ・オーストリア映画「善き人」で使われていた音楽です

第4楽章には間を置かずに突入します.マーラーの「嵐のように激しく動いて」の指示通り,怒涛の快進撃を見せます.圧倒的な迫力.その一方で,歌わせるべきところはテンポを落としてゆったりと歌わせます 静から動へ,動から静へ,また,緩から急へ,急から緩へと移りゆく演奏の素晴らしさ チョンならではのタクトさばきです.終盤ではホルン8人を立たせて演奏させますが,これはマーラーの指示どおりです.そして弦,管,打楽器総動員による圧倒的なフィナーレを迎えます

指揮者のタクトが大きく円を描いて演奏が終わるや否や,会場は興奮のるつぼ,ブラボーの掛け声とともに,あちこちでスタンディング・オベーションが見られました 私の前の席の人も立って拍手したので,舞台が見えなくて困りました.自分も立てばいいのですが,後ろの人が見えなくなるし・・・・と考えて,止めました 楽員はみな「われらが敬愛するチョン・ミュンフンの下でマーラーの大曲を演奏した」という充実感と自信に溢れた顔で,誇りをもって自分の立ち位置で拍手を受けています

鳴り止まない拍手,ブラボーに,チョン・ミュンフンが会場の方を向いて「スペシャル・アンコール・・・ラヴェル”ラ・ヴァルス”」と言ったので,会場はまた,興奮のるつぼに.ラヴェルの作曲した「ワルツ」を振幅の大きな演奏で表現し,またまた大きな声援,拍手が会場を満たしました.

あらためて思うことは,チョンと楽員の信頼関係の深さです 現在のソウルフィルはチョン・ミュンフンなくしてはあり得ない存在であり,チョンの音楽に賭ける情熱を体現したソウル(魂)フィルハーモニーであるということです

サントリーホールの年間カレンダーの8月2日のところに「チョン・ミュンフン指揮アジアフィル」とありました.この時,ソウルフィルを中心とするオーケストラがまた聴けます.アジアフィルは昨年の私のベスト1コンサートでした まだプログラムは発表されていないようですが,曲が何であれ聴きにいきます

 

             

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METライブビューイングでグノー「ファウスト」を観る

2012年01月16日 06時26分32秒 | 日記

16日(月).昨日,新宿ピカデリーでMETライブビューイング,グノーのオペラ「ファウスト」を観てきました 昨年12月10日にニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演された公演のライブ映像です 先週と同じく,オペラ映画の割にはかなりの観客が入っていました.観客がほぼ定着したのではないかと思います.東銀座の東劇の方はどうでしょうか

出演は,ファウスト博士=ヨナス・カウフマン(テノール),マルグリット=マリーナ・ポプラフスカヤ(ソプラノ),メフィストフェレス(悪魔)=ルネ・パーぺ(バス),ヴァレンティン=ラッセル・ブローン(バリトン),シーベル=ミシェル・ロズィエ(ソプラノ),指揮はヤニック・ネゼ・セガン,演出はデス・マッカナフです

ゲーテの大作「ファウスト」をフランスの作曲家グノーが脚色した文学オペラです.悪魔に魂を売り渡し,若さを手に入れたファウスト博士と純情なマルグリットの恋を,地獄からの使者メフィストフェレスが操る物語です

デス・マッカナフの演出は,時代を第2次世界大戦前後に置き換えています.冒頭シーンで広島の原爆ドームが映し出されていたのが印象的でした.登場人物は中世とは違いスーツを着て登場します.個人的にはオリジナルを別の時代に移し変えたりする演出は好ましいとは思わないのですが,今回の演出は無理がなく,安心して観ることができました

何と言ってもカウフマン,ポプラフスカヤ,パーぺの3人は完璧です.カウフマンは初めて聴きましたが,さすが現代を代表するテノールの一人と言ってもいいでしょう.感情表現豊かにマルグリットへの愛を歌い上げます ポプラフスカヤはイタリア・オペラのヒロイン役が多いので,イタリア語でのアリアを聴きなれている耳には今回のフランス語のアリアは新鮮に響きました.彼女の歌は何語で歌っても美しく響き,演技ともども素晴らしいものがあります

ルネ・パーぺのバスは現代最高と言っても過言ではないでしょう.彼はボリス・ゴドゥノフのイメージが強いのですが,メフィストフェレス役もなかなかツボにはまった役柄で,ダントツの存在感を示していました 悪魔役なので,手先から炎を出したり,杖から花を出したりといった”手品”を披露するのですが,難なくこなしていました.いかつい顔からは想像もつかない柔軟な身体を駆使した演技力も抜群です

休憩を2回挟んで4時間弱の上映で,初めて観たオペラですが十分楽しめました 

 

            

 

「ファウスト」といえばベルリオーズのオペラに「ファウストの劫罰」があります.1999年に長野県松本市で小沢征爾指揮サイトウキネン・オーケストラがこのオペラを上演した時には,元職場のA君の運転で車で松本まで聴きに行き,日帰りで帰ってきたことを思い出します あの時はスーザン・グラハムがヒロインを歌ったと記憶しています.この年は演出が話題になりました.天井から垂らしたロープに人が宙吊りになって降りてくるアクロバティックな演出でしたが,それはロベール・ルパージュという演出家によるものでした

昨年,METのワーグナーの「ラインの黄金」をライブビューイングで観たら,演出=ロベール・ルパージュとなっていて,あらためて,あーそうか,あの時の演出家か!と再認識したのですライブビューイングでは3月に指環4部作の第3夜「神々の黄昏」が上映されますが,これもルパージュによる演出です.もちろん観に行きます

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オーケストラの死活問題~公益法人改革に向けて楽団は何をすべきか

2012年01月15日 08時48分06秒 | 日記

15日(日)その2.14日(土)付日経朝刊に「公益法人改革,収益改善が急務 オーケストラ 存続へ正念場」と題する記事が載りました 記事は次のように書いています.

「企業主催の公演の減少,自治体の補助金減額でオーケストラの運営は厳しさを増しており,赤字の楽団も多い.大半が財団法人で,政府の公益法人改革に伴い,来秋までに財務健全化を迫られている.税の優遇が受けられる新公益法人に移行するには財務の健全化にメドをつけたうえで,来年11月までに申請する必要がある」

記事は,日本オーケストラ連盟調べによる首都圏オーケストラの2010年度の収支状況を紹介しています(12団体).主だった団体の経営状況は以下の通りになっています

NHK交響楽団は 収入32億5100万円に対し 支出30億2800万円で 2億2300万円の黒字

読売日響は     22億2300万円に対し  19億1100万円で 3億1200万円の黒字

東京フィルは    20億2700万円に対し  17億3800万円で 2億8900万円の黒字

東京都交響楽団は 18億9700万円に対し  18億6300万円で  3400万円の黒字

東京交響楽団は  12億7100万円に対し   12億8500万円で   1400万円の赤字

日本フィルは   11億4900万円に対し  12億8000万円で 1億3100万円の赤字

新日本フィルは  11億2500万円に対し  11億7200万円で   4700万円の赤字

東京ニューシティは  4億2000万円に対し    4億2000万円で         収支ゼロ

東京シティフィルは  3億6400万円に対し   4億3200万円で   6800万円の赤字 

 

この一覧表を見てやっぱりと思ったことと,以外だと感じたことがあります.

①NHK交響楽団と読売日本交響楽団は,強力なスポンサーがバックに付いているので当然収益状況は良いはずである.

②東京フィルは過去に新星日響を吸収合併して楽員もそれだけ多く,多面的に事業展開ができるメリットがあるので収益状況は良いはずである(コンサートホールで演奏会を開くと同時に,新国立劇場でオーケストラ・ピットに入ることも可能).

③以外なのは,あれだけ多面的にコンサートを展開している東京交響楽団の方が,官営による東京都交響楽団より収入が少なく,しかも赤字になっていること.

④同じく,新日本フィルの方が,日本フィルより収入が少ないこと(ともに赤字だが,赤字幅は日本フィルの方が多い)

⑤同じく,東京シティフィルの方が,東京ニューシティ管弦楽団よりも収入が少ないこと(シティフィルの方は赤字である)

いずれにしても,公益法人改革は待ったなしなので,公益か一般かを選択しなければなりません 目指すは税法上メリットのある公益財団法人でしょうが,記事にあるように来秋までに財務の健全化を計った上で申請する必要があります

世界の中でも東京は観客獲得激戦区ですが,生き残りのための方策として挙げられるのが「地域密着」です.江東区のホール「ティアラ江東」を根拠にしている東京シティフィルの音楽監督に就任する宮本文昭は「江東区内のホールでミニコンサートを積極的に開いていきたい」と語っています

記事には書いてありませんが,すみだトリフォニーホールを拠点とする新日本フィルは,一部のコンサートで,墨田区の住人がチケットを安く手に入れることが出来る制度を導入しており,満席に近い観客の獲得に成功しています こうした経営努力も合わせて総合的に対策を練っていかなければならないでしょう

一番望ましいのは,景気が回復して税収が増えて,オーケストラへの補助金が増加することですが,景気の回復がないまま消費税だけが上げられようとしている現状では(もちろんこれからの社会保障を中心とする財政基盤の強化のためには,導入は避けられないことは理解しますが),ますますコンサートを聴く人が減っていってしまうのではないかと懸念します

 

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セルゲイ・ハチャトリャンのベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」を聴く~東響第65回オペラシティシリーズ

2012年01月15日 07時40分18秒 | 日記

15日(日).昨日の「ケータイによる演奏中断」の続報です.昨日の日経夕刊によると,ニューヨーク・フィルの演奏中に携帯電話のアラームを切らず,演奏中断のハプニングを引き起こした男性が「本当にひどいことをしてしまった」と指揮者・ギルバートらに謝罪したとこのこと 60~70歳前後の男性は2つの会社の経営者で,使い始めたばかりのiPhoneをマナーモードに設定していたが,演奏中に目覚まし時計機能のアラーム音が鳴り始めたとのこと

こういう”事件”は演奏者だけでなく,回りで聴いている聴衆にとっても,集中力が散漫になる不愉快きわまる出来事です.男性は後悔の念で2日間眠れなかったそうですが,今回のハプニングは本人にとって絶好のアラーム(警告)になったことでしょう

 

  閑話休題  

 

昨日,初台の東京オペラシティ・コンサートホールで,東京交響楽団第65回オペラシティシリーズ聴いてきました プログラムは①ベートーヴェン「交響曲第6番ヘ長調”田園”」,②同「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」の2曲.指揮は秋山和慶.ヴァイオリン独奏はアルメニア生まれのセルゲイ・ハチャトリャンです

通常のコンサートでは田園とヴァイオリン協奏曲の演奏順を逆にすると思いますが,田園はフィナーレが静かに終わるので,前半に持ってきたのかもしれません

交響曲第6番「田園」についてベートーヴェンは「この交響曲は絵画ではありません.むしろ田園での喜びが人々の心に呼び起こす様々な感情を描き出した作品です」と述べ,最初に付けていた「田園の生活の思い出」というタイトルを削除,出版譜には「田園交響曲」とだけ記しましたこの穏やかな「田園交響曲」は,闘争的な第5番「運命交響曲」とほぼ同時期に作曲され,初演日も同じでした

秋山和慶の指揮は,どんな曲を聴いても素晴らしいと思います.奇をてらうことなく正面から音楽に対峙します 秋山和慶といえば今公開中の映画「カルテット」に指揮者として出演しています.田園交響曲では管楽器が活躍しますが,オーボエの荒絵理子,フルートの甲藤さちはいつ聴いてもいい味を出しています 管楽器がいいと,やっぱりベートーヴェンはいいなと思います.

「ヴァイオリン協奏曲」は創作意欲に燃えていた時期に書かれました.この曲はベートーヴェン自身がピアノ協奏曲に編曲しています

指揮者とともにソリストのセルゲイ・ハチャトリャンが登場します.第1楽章冒頭,ティンパニの静かな連打が始まります が,痩せたハチャトリャンは,見るからに自信なさそうな顔で下をうつむいています 寅さんではありませんが,「おい,そこの青年!元気出せや」と激励したくなるほど情けない表情です

ところが,前奏に続いてヴァイオリンが入ってくると,「なんだ,この音は」と驚きに変わりました ヴァイオリンの音そのものが美しく,粒が立っているのです.解説によると,使用楽器は日本音楽財団から貸与されているグァルネリ・デル・ジェス(1740年製)とのこと.さすが!と思いましたが,楽器だけの力ではないことが分かります.それは第1楽章終結部のカデンツァに現れました 何と豊かな音楽を奏でることができるのか とくに弱音が素晴らしく,これは彼の演奏の特性かも知れないと思います.ゆったりとしたテンポで朗々と歌わせるのも彼の特徴かもしれません 時間を計ったわけではありませんが,演奏時間は長めだったのではないかと思います.しかし,ただ長いだけでなく,じっくり”聴かせて”くれます

第3楽章フィナーレが終わると,ブラボーと拍手の嵐になりました.演奏直前の”情けない若者”は,聴衆から喝采を受ける逞しい”英雄”に変貌していました

鳴り止まない拍手にアンコールを演奏しました.バッハの無伴奏の何番かを静かに演奏.またしても拍手が鳴り止まず,もう1曲演奏しました.演奏に先立って曲名を言ったのですが聴き取れませんでした.高音部を中心とする静かで美しい曲でした

東京交響楽団の演奏会で秋山和慶を指揮者に迎えるコンサートは,いつもソリストが素晴らしい人ばかりです.ソリストの選定には秋山の意向・希望が反映しているのかも知れません.ハチャトリャンは,演奏上の特性からシベリウスの協奏曲なんか合っているのではないかと思います.今後の動向から目が離せないアーティストの一人になりました

 

          

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1月14日はモーツアルト「弦楽四重奏曲第19番」「春への憧れ」が完成した日

2012年01月14日 07時08分24秒 | 日記

14日(土).昨日の日経夕刊に「NYフィル 携帯の音で演奏中断 客席で数分鳴りやまず」という記事が載りました 記事を要約すると,

「10日夜のニューヨーク・フィルのコンサートで,携帯電話のアラームの音が客席で鳴り止まず,指揮者のアラン・ギルバートが演奏を中断して注意を促し,最前列にいた年配の男性が携帯のスイッチを切ったのを確認してから演奏を再開した.今回ギルバートが演奏を中断したのは「(普通は騒音を無視するが)今回はひど過ぎて続けるわけにはいかなかった」,男性がすぐにスイッチを切らなかったのは「恥ずかしさで体が動かなかったのかもしれない」と語った.ネット上では「自分の携帯とは思わなかったではないか」との見方も出ている」

その時に演奏していたのは何とマーラーの交響曲だったとのことです.私も過去にマーラーの交響曲の演奏中に携帯のアラームが鳴り出し,指揮者が指揮台から転げ落ちて演奏を中断するのを目撃したことがあるので,またしてもマーラーかと驚いたのです.なぜ指揮者が転げ落ちたのかについては昨年5月6日のブログに書きましたので,ご覧下さい

  閑話休題  

昨日,会社帰りに神保町のチケットぴあでチケットを2枚買ってきました 1枚は3月31日(土)午後6時から東京文化会館で開かれる「オーケストラの日」コンサートです.目玉はヴィヴァルディの「四季」の4つの楽章を4つのオーケストラが交替で演奏することです.春=東京交響楽団,夏=神奈川フィル,秋=東京都交響楽団,冬=日本フィルで,それぞれのコンマスがソリストを務めます.1月11日発売開始なのに,ぴあではS席がソルド・アウト,しかたなく3階のA席を買いました

もう一枚は6月20日(水)午後7時からすみだトリフォニーホールで開かれる「ロイヤル・フランダース・フィル」のコンサートです.プログラムは①エルガー「チェロ協奏曲ホ短調」,②マーラー「交響曲第1番ニ長調」の2曲.指揮はエド・デ・ワールト,チェロ独奏はマリー=エリザベート・ヘッカーです.このオーケストラは何年か前にフィリップ・ヘルヴェッへと来日した際,トリフォニーホールで聴いていますが,その時の印象が良かったので迷わず買いました.こちらは1月12日発売開始だったので,1階中央ブロックの通路側が取れました

 

         

 

  再び閑話休題  

 

今日1月14日はモーツアルトの「弦楽四重奏曲第19番K.465”不協和音”」と歌曲「春への憧れK.596」が完成した日です

弦楽四重奏曲K.465は、自宅にハイドンを招いて催した試演会の前日(1785年1月14日)にウィ―ンで完成しました。後期10曲の弦楽四重奏曲の中で序奏を持つ唯一の曲で、この序奏が当時の理論からして間違った和声法によって作曲されているところから、「不協和音」と呼ばれています混沌とした靄の中から明るいロマン的なメロディーが立ち昇るところは、新しい時代の夜明けを感じさせます

一方、歌曲「春への憧れ」は1791年の1月14日、つまりモーツアルト最晩年の年にウィ―ンで完成しました。その直前に作曲された「ピアノ協奏曲第27番K.595」の第3楽章と同じメロディーです 歌詞はオーヴァーべック(1755-1821)という人が書きました。3分ほどの小曲ですが、モーツアルトは、春を待ち焦がれる気持ちを表した歌詞に、弾むような楽しい曲を付けています

普段よく聞くのは「弦楽四重奏曲K.465」の方がアルバン・ベルク四重奏団の演奏(1989年録音)で,「春への憧れK.596」がエディット・マティスのソプラノ,ベルンハルト・クレーのピアノ伴奏によるCD(1972年録音)です

 

         

 

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「書くことは、削ること」~評論家・小林秀雄の教え

2012年01月13日 06時25分51秒 | 日記

13日(金)。昨夕は新年初めて,地下の炭火焼き鳥OでS監査役,E部長,T君と飲みました名目はE部長とT君の快気祝いです.単に風邪が治っただけの話ですが,お酒を飲むのに名目は何でもいいのです.ということで,きょうも朝から頭が痛いのです 

ところで,ここ2~3日の冷え込みはハンパないっすね ”冷え込み”といえば思い出すことがあります。

今から遡ることン十年前、高校の時の英語の授業で老教師が黒板に、下の英文を書きつけ、「日本語に訳しなさい」と言いました

  You might oh’made today’s some fish.

周りの連中は首を傾げていましたが、私は直感的に”翻訳”しました。

  言うまいと思えど今日の寒さかな

こんなくだらない問題を考える教師のレベルの低さに”冷え込み”を感じました。さむっ

 

  閑話休題    

 

日本記者クラブ会報(2012年1月10日号)のリレーエッセー「私が会ったあの人」に、毎日新聞特別顧問で元「余禄」執筆者の諏訪正人さんが小林秀雄の思い出を書いています 小林秀雄とは、文芸評論から美術評論、音楽評論まで鋭い批評で知られた”その道の達人”です。彼の著書「モォツアルト」はクラシック音楽愛好家、とくにモーツアルト愛好家のバイブル的な存在です

諏訪さんは1975年9月に小林秀雄と今日出海との対談を実現させ「交遊対談」として毎日新聞朝刊に連載しましたが、その時のエピソードを書いています

初めて小林に会った印象は「白髪の中肉中背、温厚な顔に射るような目が光っていた。剣士の目だと思った」と表現しています。当時、小林秀雄は72歳でした

新聞の文章の話になると小林は「リアルな目を知らず知らずに失っている」と嘆いたそうで、話の途中で「この、ばか」と新聞記者を代表して何度も怒られた、と書いています。対談の内容をまとめた文章を引き取りに行くと、しゃべった内容が引き締まった文章に書き直されていたといいます 「しゃべることと書くこととは違う」というのが小林氏の主張なので、諏訪さんは書き直さざるを得なかったといいます

そして、小林は「座談会だけじゃない。僕の原稿はだんだん短くなる」と宣言したそうですが、その通りになったといいます そして告白します「私は身にしみてわかった。書くとは、削ることなのだ」と

私が毎日書いているブログの拙文も、実は、最初に2割ほど多く書いた文章を、推敲して削った上で立ち上げています。そういう意味では「書くとは、削ること」という意味が自分なりに理解できます。「冗長だからもっと削れ」と言われる向きもあろうかと思いますが、これが能力の限界です。これからも相変わらずお付き合いのほどを・・・・

 

              

 

〔追伸〕

今日の朝日新聞(東京14版)社会面に「全国の元日紙面見比べ~プレスセンタービルで31日まで展示」という記事が載りました

北は北海道から南は沖縄県まで、全国の129紙が展示されています。午前8時半から午後10時半まで誰でも無料でご覧いただけます。日曜・祭日は休刊日ですのでご注意ください

 

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