12日(木).昨夕,虎ノ門のJTアートホール”アフィニス”で「音楽家からの年賀状~期待の若手アーティストを迎えて」と題するコンサートを聴いてきました JTアートホールは当社から徒歩で12~3分のところにあり,イイノ・ホールの次に近いホールです
プログラムは①クライスラー「愛の喜び」(弦楽合奏版),②チャイコフスキー「アンダンテ・カンタービレ」③サン=サーンス「ヴァイオリンとハープのための幻想曲」,④J.イベール「ヴァイオリン,チェロ,ハープのための三重奏曲」,⑤ヴォーン・ウィリアムズ「富めるラザロの5つの異版」,⑥メンデルスゾーン「ヴァイオリン,ピアノと弦楽のための協奏曲ニ短調」の6曲ですが,最大の目的はメンデルスゾーンのニ短調の協奏曲を聴くことです
出演者は,独奏がヴァイオリン=徳永ニ男,堀米ゆず子,南紫音,チェロ=向山佳絵子,ピアノ=練木繁夫,ハープ=吉野直子という日本の音楽界の先端を行く音楽家たち,バックにヴァイオリンの川田知子はじめ13人の弦楽奏者が控えます
開演前にホワイエでプログラムを読んでいると「こんな所でお目にかかるとは・・・」と声をかけられました.顔を上げるとYさんがニコニコして立っていました Yさんは元東京シティフィルの事務局長で,退官後は「声と呼吸」にかかわるボランティア的なお仕事に携わっているとのことでした.縁があって当社のU専務とも知り合いで,3人で食事をしたこともあります.今回は思わぬ再会でした
最初のクライスラー「愛の喜び」は元NHK交響楽団コンマスの徳永ニ男がリードして弦楽14人で演奏しました 男性3人を除く全員が女性で,着ているドレスもブルーあり,グリーンあり,パープルあり,ワインレッドありとカラフルで華やかです
「音楽家からの年賀状」に相応しくとても良いと思いました
お馴染みの「愛の喜び」のメロディーが弦楽合奏の厚みのある音で会場いっぱいに響き渡ります が,狭い会場で,ソロでなく合奏によって力一杯演奏するせいか,音が濁って”ぼわ~ん”という感じがしました
後で休憩時間にYさんに尋ねてみると,やはり同じような印象を受けたようで”音が綺麗じゃなかったですよね”と言っていました
曲の合間に徳永が「この室内楽シリーズは今年18年目を迎えた().これからも良い音楽をお届けしたい」として,南紫音を舞台に呼んで”期待するアーティスト”として紹介したうえで,「今日は新年最初の演奏会ということで,休憩時間にホウイエで,シャンパン
,ワイン
,オレンジジュース
を無料でサービスする.残念ながら私は後半の演奏があるので飲めないが(笑),皆さんも,ほどほどにお願いしたい」と挨拶,歓迎されていました
2曲目のチャイコフスキー「アンダンテ・カンタービレ」は独奏チェロを向山佳絵子が演奏し,徳永が弦楽合奏をリードします.向山は白のドレスの上に黒のレースのようなブラウスで登場,重心の低い落ち着いた演奏を聴かせてくれました 目立ったところが無いのですが,実に深いいい演奏をする人だと思いました
3曲目のサン=サーンス「ヴァイオリンとハープのための幻想曲」はヴァイオリンを南紫音,ハープを吉野直子が演奏しました ロングヘアの南は上が黒,下がピンクのドレスで,ショートカットの吉野はゴールドの輝くドレスで登場しました
サン=サーンスが72歳の時の作品ですが,ひと言でいえば”フランス的”とでもいうべき曲想です.吉野のハープの指使いを見ていると,実に美しく,つい見とれてしまいます
次のイベールの「ヴァイオリン,チェロ,ハープのための三重奏曲」は,イベールが54歳の時の作品です.ヴァイオリンを南,チェロを向山,ハープを吉野が演奏しましたが,これも正しく”フランス”そのものといった曲です
休憩時間にはロビーに出て,Yさんとワインを飲みながら近況報告をして過ごしました.無料のアルコール・サービスのせいか,いつになくホワイエが人でごった返していました.せっかくなのでシャンパンも飲みました.これで4,000円は極安です
休憩後1曲目のヴォーン・ウィリアムズ「富める人とラザロ」は徳永がリードして弦楽総動員で演奏しました.南も演奏に加わり,吉野も左手にスタンバイしました.”グリーンスリーブス的”なメロディーと言えばいいのでしょうか,フランスとは一味違うイギリス的な音楽でした
さて,トリを飾るのはメンデルスゾーンの「ヴァイオリン,ピアノと弦楽のための協奏曲ニ短調」です.徳永率いる弦楽合奏をバックに,ヴァイオリン独奏を堀米ゆず子,ピアノを練木繁夫が演奏します.いよいよ真打登場!といったところでしょうか 堀米は淡いグリーンのドレスで登場です.先日,フォーレ四重奏団で聴いたピアノ四重奏曲の演奏もそうでしたが,メンデルスゾーンの初期の短調の曲はすごくいいです
14歳の時のこの作品はモーツアルト的でもあり,ベートーヴェン的でもあります.堀米と練木のコンビはメリハリをつけて前へ前へ進みます
そういえば,この曲の演奏では,ギドン・クレーメルのヴァイオリン,マルタ・アルゲリッチのピアノ,オルフェウス室内管弦楽団による名演奏がCDで出ています
この日のコンサートは旧知の知人との久しぶりの再会,ワインのサービスという”おまけ”まで付いて,新年早々から忘れられない演奏会になりそうです