人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

樋口有介著「楽園」を読む~成功か,失敗か?

2012年01月03日 08時34分21秒 | 日記

3日(火).昨日は家族揃って狭山の実家にお年始に行ってきました 妹夫婦が母親を介護してくれています.世田谷で一人暮らしをしている姪っ子と,相模原に住む甥っ子夫婦と小1の長女,生まれて2ヶ月の長男もやってきたので,賑やかなお正月になりました

残念ながら,昨年のお正月には元気だった猫のトラは昨年7月に亡くなり,いまは雄のミラのみになってしまいました 赤ん坊が体重5キロなのに,このミラは7キロもあります 普段は居ないお客さんに代わるがわる遊んでもらい忙しいひと時を過ごしたようです.

本人にインタビューしてみました.「きょうは多くの人に囲まれて,いかがでしたか?」「忙しくて猫の手も借りたいくらいだったぜ「新年早々,猫年に相応しいコメントをありがとうございました」「おいおい,今年は辰年だろうが.そんなこと言ったら辰瀬がないぜ

 

            

            〔猫パンチを繰り出す直前のミラ〕

 

  閑話休題  

 

昨年暮れから読み続けてきた樋口有介著「楽園」(中公文庫)を読み終わりました 同氏の「ピース」が面白かったので,2冊目として選んだ本です

「楽園」は1994年10月に,角川書店から書き下ろし長編として刊行されました.物語の舞台は赤道直下「東経145度,北緯5度」に位置する人口4,800人のズック共和国です.南太平洋上の小さな島国に大量のプラスチック爆弾が持ち込まれた疑いが生じます そうした中,反政府主義者の男が爆死します.この国の大統領は余命半年の運命にあり,後継者争いが展開します.果たして男の爆死と後継者争いはどう繋がっているのか,日本のODA,アメリカCIAが絡み,経済界を牛耳るマルカネ・ザワオの暗躍も絡んで,果たしてズック共和国の行方は・・・・・といった内容です なお,著者は「文庫本化によせて」の中で,登場人物の一人マルカネ・ザワオは,当時佐川急便汚職事件で問題になっていた金丸信と小沢一郎をもじった名前であることを明かしています

「ピース」の中でも使われていたのですが,この国で話される言葉として著者が選んだのは,何と上州弁なのです 例えば,こんな感じです.

「大臣,昼間デチロに,電気の鍋を注文したそうですな」

「適当なやつがありそうかい」

「アメリカ製の鍋なら,すぐにでも取り寄せられますがね」

「鍋じゃねえんだ.わしにもよく分からんけど,米を炊く専門の機械だそうだ.母ちゃんがなあ,どうしてもソニーの電気釜が欲しいんだと」

「米を炊く専門の,ソニーの電気釜,ねえ」

・・・・それにしてもソニーの電気釜って,いったい・・・・・

著者は「文庫本化によせて」の冒頭で次のように書いています.

「「センセイの小説はみんな好きだけど,あの【楽園】だけは失敗作ですよね」とは,銀座のホステスさんに言われたせりふ.私は”うーむ”と唸る以外に返す言葉がなかったことを,16年経った今でも思い出します.なにしろ当時の私は,【楽園】こそがマイベスト,と固く信じていたんですから」

この本を読み終わった感想は,当時のホステスさんの気持ちが良くわかる,ということです「ODAを排除した真の民族の独立」など著者の言いたいことは理解できます.が,とにかく,南太平洋の小さな島国の出来事という条件もあってか,物語に抑揚がないのです この小説が「書き下ろし」というところに問題があると思われます.これが連載小説であれば,その都度,山場を設定しないと読者に飽きられてしまうので,読者の集中力を維持するためにいくつもの山場を設定するはずです 最初に読んだ「ピース」が面白かっただけに,次に読む本に期待したいと思います

 

 

           

 

 

 

 

 

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ウィーン・フィル「ニューイヤー・コンサート」を観る~マリス・ヤンソンスの指揮で

2012年01月02日 08時42分47秒 | 日記

2日(月).昨日はいつもより遅く起きて,お雑煮とおせち料理をいただきました それから,1階の郵便受けに行き朝刊を取ってきました.朝日新聞116ページ,日本経済新聞102ページです.いつもながら元旦号はボリュームがあります 端から端まで読むわけではありませんが,読むのに結構時間がかかります.まだまだ紙の新聞が続くと信じていいのでしょうか?

 

             

 

午後,ベットに横になってホロヴィッツの演奏するショパンやラフマニノフのCDを聴きながら樋口有介「楽園」を読んでいると,2時半少し前に大きな揺れが さっそくテレビを点けると東京は震度4とのこと.久しぶりの大揺れでビックリしました 数十分後,当ビル防災センターのI隊員から「震度4の地震があったので,館内を循環して被害状況を確認したが,テナント2件で出勤していたものの,被害はなく,建物にも異常がなかった」と報告がありました.元旦にも出勤しているテナントさんも大変だと思いますが,年末も年始もなく家族を家に残して交替で勤務している防災センター隊員諸君は本当にご苦労なことだと思います.とても感謝しています 幸いこの地震は大きな津波がなかったとのことで,それだけでも救いでした

 

             

             〔ホロヴィッツ・オン・テレヴィジョン〕

 

  閑話休題  

 

夜7時からNHK・Eテレでウィーンフィル・ニューイヤー・コンサートを観ました 最初に何人かのゲストが出ていてトークがあり,思い出のニューイヤー・コンサートとして,カルロス・クライバーがシュトラウスの「雷鳴と電光」を指揮するシーンが映し出されました.この指揮姿を観て,バイエルン国立歌劇場管弦楽団と来日し,アンコール曲としてこの曲を振ったときの感激を思い出しました.華麗のひと言です

今年の指揮者はロシアのマリス・ヤンソンス.ニューイヤー・コンサートを振るのは今回が2回目とのこと.オーケストラは,コントラバスが中央後列に横一列に並ぶ配置をとります.舞台後方左右は客席になっています.こういうのはとても珍しいと思いますが,あそこはA席なのか,B席なのか,C席なのか,どんなランクの席なのでしょう?いつも気になります 

オーケストラを見てもう一つ気が付いたのは,ハープを除いて全員男性であることです.最近は女性の演奏家もウィーンフィルで活躍しているはずですが,ニューイヤー・コンサートだけは特別なのでしょうか コンサートマスターはキュッヒルではなく,ライナー・ホーネックです

最初の曲を聴いてビックリしました.いきなりラデツキー行進曲が始まったからです この曲はこのコンサートを締めくくる曲のはず.と思っていると,別のメロディーが出てきました何とシュトラウス親子の合作による行進曲だということでした.トリッチ・トラッチ・ポルカではウィーン少年合唱団が正面2階バルコニーに登場し澄んだ歌声を聴かせてくれました このコンサートには1998年以来14年ぶりの出演とのことです.蛇足ですが,この合唱団にはシューベルトも所属していました.

解説によるとシュトラウス一家のワルツやポルカは数百曲あるので,まだウィーン・フィルが一度も演奏したことのない曲が多くあるとのことでした.今回は3曲がウィーン・フィルが初めて演奏することになったとのことです

休憩時間にゲストのトークがあり,そのうちの一人がウィーン・フィル特有の音の魅力について「ひと言でいえば”ホモゲーン”だ」と語っていました ホモゲーンとは”均一な”という意味とのこと.どんな指揮者が指揮をしても,ウィーン・フィルの音色は変わらない,ということです.その理由の1つとして,楽器の作りが他のオーケストラとは違うということをホルンとオーボエを例にとって解説していました.ホルンはバルブ(ピストン)が違い,オーボエは長さ(ウィーンの方が短い)や形が違うとのことです

ゲストのN響の首席オーボエ・茂木大輔が,いつも吹いているオーボエとウィーン・フィルが使用しているオーボエを吹き分けて,シュトラウスの「こうもり」序曲の中から憂いに満ちたメロディーを演奏しました ウィーンの方が柔らかく澄んだ音色のように感じました.演奏後,茂木は「ウィーンの方が弦楽器とよく解け合って響くように思う」「ただし,ヨハン・シュトラウス達が活躍していた頃までの曲を演奏するのには威力を発揮するが,それ以降,コンサート会場が巨大化して,例えばストラヴィンスキーなど,複雑な音楽を演奏するのには,楽器の方が追いついていけないところがある」と語っていたのには納得させられました

ヨーゼフ・シュトラウスの「鍛冶屋のポルカ」では,ヤンソンスが両手にハンマーを持って指揮をしながら「キンコン,カンコン」と叩いて演奏し,観衆の盛んな拍手を受けていました ヤンソンスにはこういう茶目っ気があります

ヤンソンスらしい選曲だったのはチャイコフスキーのバレエ音楽「眠りの森の美女」から「パノラマ」と「ワルツ」を演奏したことです.「パノラマ」ではタクトを置いて,両手で美しいメロディーを紡ぎだし,ワルツでは再びタクトを取って華麗なワルツを演奏しました

今回の放送を観て初めて気が付いたのは,優れたカメラワークです.とくに3階席あたりから2階席や1階の舞台を撮り降ろすのですが,”いったいどうやって撮ったのか”と感嘆します.単にクローズアップするだけでなく,カメラ自体が動きながら撮影しないとああいった映像は撮れないのではないかと思われます

かつて,カラヤンが来日した際に,日本のコンサートの撮影技術の素晴らしさに感嘆し,そのノウハウを自身の演奏の記録に生かしたと言われていますが,現在は,われわれがオーストリアの撮影技術の素晴らしさに感嘆する時代になったのでしょうか

いつの日か,あのウィーン楽友協会大ホールでウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを聴くのが当面の夢です

 

              

              〔1989年ニューイヤー・コンサート

               指揮=カルロス・クライバー〕

 

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映画「エンディングノート」を観る~昨年最後の映画から

2012年01月01日 09時48分39秒 | 日記

                

 

2012年1月1日(日).新年あけましておめでとうございます 今年もtoraブログをよろしくお願いいたします

年初に当たり,昨年1年間の目標達成度をご報告します.年間目標は①コンサート100回,②映画100本,③読書100冊でした.これに対し,実績は①124回,②50本,③73冊でした.コンサートは,3.11東日本大震災の影響でキャンセルが相次いだものの,根性でチケットを買い求め目標を大きく上回りました.反面,映画は目標の半分に,読書は7割に終わりました.時間配分のうち,映画の何割かはコンサートに,読書の何割かはブログ作成に回ったと自己分析しています

昨年の実績を基に今年の年間目標を立てました

コンサート130回,映画60本,読書80冊です

無理をしないようにスケジュールを組んでいきたいと思っています

 

  閑話休題   

 

さて,昨日12月31日,買い物ついでに角川シネマ新宿で「エンディングノート」を観ました.これが昨年最後の50本目の映画でした

主人公の砂田知昭は大手化学メーカーの営業職として高度成長期を生き,40年以上勤め上げた会社を67歳で退職しました.第2の人生を歩み始めた矢先に健康診断で胃がんであることが判明します その時すでにガンが最終段階まで進んでいることを知った彼は,家族のため,自分自身の人生を総括するためエンディングノートを作成しようとします.そんな砂田を映像作家である娘が撮影し続けます

最初に思ったのは,実の娘とはいえ,よくもこれだけのドキュメンタリーを撮ったものだ,ということです.娘たちの幼少の頃のビデオも紹介されており,時代を追ったドキュメンタリーになっています.驚くべきは砂田の生命力です.余命いくばくもないと自覚してからも,携帯電話で友人と話をしたり,担当医師に現状を尋ねたり,長男と死後の段取りを話し合ったりと,とても死を目前にした人間とは思えないほど精力的で,生きる力に満ちているのです

この映画を観ていて救われるのは,映画のタイトル「エンディングノート」とは裏腹に,砂田自身が明るいということです最後まで暗くならず,実に爽やかに,明るく生きようとします.さて,自分が同じような立場に立たされたら,果たしてどのようなエンディングノートを書こうとするだろうか,と考えさせられました.1年を締めくくるのに相応しい”いい映画”を観たと思います

 

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