人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

花房晴美・室内楽シリーズ「パリ・音楽のアトリエ 第6集 フランクの夜会」を聴く

2013年04月20日 07時00分06秒 | 日記

20日(土)。今朝、ブログを書こうと思ってログインしようとすると「パスワードを変更してください」という警告が出てきました 最近、パスワードが外部に流出する事件が多発していることを受けての措置だと思います。面倒くさいと思ったのですが、変更しない限りブログが書けないので現在使用中のパスワードにローマ字を加えて変更したうえでログインしました。したがって、このブログは、新しいパスワードによる第1号です

 

  閑話休題  

 

昨日は、正午から程永華・駐日中国大使の昼食会が、午後3時半から安倍晋三首相の記者会見が10階ホールで開かれたので、慌ただしい一日でした デスクワークの合間に1階玄関に行って、ゲストが無事に入館するのを見届け、10階に上がって記者会見場の様子を窺い、会見が終わると、また1階玄関に行って、ゲストが無事に退館するのを見届けました 先日のアウンサンスーチーさんの時と比べて、警察関係の警備陣は安倍首相の方が圧倒的に多かったですが、記者会見の”集客力”はスーチーさんが上回っていました。いずれにしても事件事故なく退館されたので一安心です

 

  も一度、閑話休題  

 

昨夕、東京文化会館小ホールで「花房晴美・室内楽シリーズ・音楽のアトリエ第6集”フランクの夜会”」公演を聴きました プログラムは①フランク「前奏曲、フーガと変奏曲」、②同「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調」、③同「四手のためのポルカ変ロ長調」、④オギュスタ・オルメス「交響詩”ポーランド”」、⑤フランク「ピアノ三重奏曲第1番嬰へ短調」です

全自由席のため開演45分以上前から小ホール前の”坂”には長蛇の列が出来ていました それでもK列19番とかなり良い席を確保することが出来ました。会場は8~9割方埋まっている感じです。小ホールでは珍しい大入りです

 

          

 

1曲目のフランク「前奏曲、フーガと変奏曲」はフランクがサント・クロチルド教会のオルガ二ストを務めていた1868年に「オルガンのための6つの小品」の第3曲として出版したものです。ハロルド・バウアー編曲版を花房晴美のピアノ独奏で演奏しました

2曲目の「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」ほど有名なヴァイオリン・ソナタはないでしょう ヴァイオリンの徳永二男は男性的で極太の演奏を展開、一方、花房晴美は力強く潔い演奏を展開します。最終楽章「アレグレット」は二人のバトルのように火花が散る演奏でした

第2楽章に入った時です。自席の左の方向でケータイのマナーモードらしき着信音がブーブーと鳴り始めました しばらくして鳴り止んだと思ったら、再び鳴り始めました。非常識にもほどがあります 1回で分かるはずですから、その時点でスイッチを切るべきです。まだいるのですね、こういう古典的な非常識が

休憩後の1曲目、フランクの「ポルカ」は花房晴美と妹の真美との連弾で演奏されましたが、弾むような楽しい曲でした

次の交響詩”ポーランド”を作曲したオギュスタ・オルメスはパリの社交界で活躍していたピアニスト・声楽家で、フランクが密かに想いを寄せていた女性です 花房姉妹の演奏は4手だけで演奏しているとは思えないほどの色彩感溢れる演奏で、聴衆を魅了しました それにつけてもこの姉妹はまったく似ていませんね

最後のフランク「ピアノ三重奏曲第1番」はベルギー国王レオポルド一世に献呈されたほど、作曲者の意欲が込められた曲です 花房晴美、徳永二男にチェロの藤原真理が加わります。本当に久しぶりに見る藤原真理は、ずい分年を取ったなあ もとい、貫録十分な年になったなあ と思いました。

最初にピアノの独奏が、次いでチェロが、そしてヴァイオリンが入ってくる第一楽章冒頭部が何とも言えない魅力です この曲でもヴァイオリンとピアノがバトルの様相を呈しています チェロも懸命に演奏しますが、二人の迫力に追い付きません 最終楽章「フィナーレ」は三人ともこれ以上の力は入れられないのではないかと思うほどの熱演で、会場の温度が一気に上昇したような感じがしました

アンコールとして三人によって、静かな曲が演奏されましたが、曲名がわかりません 時々思うのですが、演奏者はアンコールの曲名をアナウンスしてから演奏すべきだと思います

2曲目のアンコールは花房姉妹によって、次回のコンサートで取り上げるミヨーの小品が鮮やかに演奏されました これは花房晴美がアナウンスしてくれたので作曲者名は判りましたが、コンサートホールは残響が長いので、言葉がよく聞き取れません。この辺も、ゆっくり話すようにするとか、演奏する側が考えてほしいと思います

次回の「パリ・音楽のアトリエ」は10月25日午後7時からで、第7集”ミヨーの夜会”です。これも是非聴きに行こうと思っています

 

          

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新日本フィル室内楽シリーズでブラームス「ピアノ四重奏曲第1番」を聴く

2013年04月19日 07時00分13秒 | 日記

19日(金)。昨夕、すみだトりフォニーホール(小)で新日本フィル室内楽シリーズを聴きました 2012-2013年度シリーズ後半の第1回目です。プログラムは①シューマン「弦楽四重奏曲第1番イ短調」、②ジョリヴェ「オーボエとファゴットのためのソナチネ」、③ブラームス「ピアノ四重奏曲第1番ト短調」の3曲です

いつもの通り、7時から新日本フィルの第2ヴァイオリン奏者・篠原英和さんによる「プレトーク」がありました まず「ボロディン弦楽四重奏団」についての解説がありましたが、設立時から現在に至るまでのメンバー総入れ替えの歴史を、原稿なしで一人の名前も間違えることなく流暢に解説しました あまりの博識に聴く側はただただ唖然として、その解説に頷くばかりです 篠原さんは本当に弦楽四重奏曲がお好きで、その好きが高じてその方面の知識が雪だるま式に身についたのでしょう その原点には、彼がアマデウス弦楽四重奏団のメンバーに師事し薫陶を受けたという事実があると思います 

 

          

 

さて、1曲目のシューマン「弦楽四重奏曲第1番」は、岸田晶子、宗田勇司(以上ヴァイオリン)、間瀬容子(ヴィオラ)、竹澤修平(チェロ)というメンバーで演奏されます プログラムに「演奏者による聴きどころ」というコーナーがあり、4人がこの曲についてコメントしてます

岸田「技術的にとても難しく、苦労しています」

宗田「大変難易度の高い作品」

間瀬「弾くのがとても難しい曲」

竹澤「超難曲」

4人に共通している漢字は”難”です。ロマン的で良い曲だと思いますが、演奏者たちのコメント通り、非常に演奏するのが困難そうな曲想で、各自がシューマンに格闘している様子が垣間見えました

2曲目のジョリヴェ「オーボエとファゴットのためのソナチネ」の演奏者は、古部賢一(オーボエ)と河村幹子(ファゴット)です この二人は東京藝大から、ミュンヘン音楽大学大学院、新日本フィル入団まで25年間の長い付き合いとのことで、息もぴったりです 曲は先日のクラリネット奏者のセバスチャン・マンツ風に表現すれば「殿様ガエルとアヒルの対話」のような曲です。現代音楽も、こういう楽しい(?)音楽だと親しめるのですが・・・・・・

さて、この日のメーン・イベントは3曲目のブラームス「ピアノ四重奏曲第1番ト短調」です 演奏はトークの天才・篠原英和(ヴァイオリン)、木村恵子(ヴィオラ)、多田麗王(チェロ)、出久根美由樹(ピアノ)というメンバーです

第1楽章「アレグロ」はピアノの独奏から入り、チェロが美しいメロディーで加わり、第1ヴァイオリンとヴィオラが参加しますが、この冒頭を聴いて、「これはイケるぞ」と確信しました。実にいい感じなのです。篠原さんのヴァイオリンはトークのごとく”弁舌さわやか”で、ヴィオラの木村恵子とチェロの多田麗王が応えます。それを出久根美由樹のピアノがしっかり受け止め、陰になり日向になります このスタイルは最後まで変わらず、4人は見事なアンサンブルを展開します。一言でいえば「大人の音楽、大人の演奏」。別の言葉で言えば「芳醇なワイン のような味わい深い演奏」です。40分を超える大曲ですが、4つの楽章を通じて弛緩したところがなく、集中力に満ちた演奏でした。とりわけ篠原さんは、この演奏力があってあの名トークがあるのだと、あらためて感銘を受けました

 

          

 

終演後、いつものように500円を払って「ワン・コイン・パーティー」に参加しました 篠原さんの着替えが終わるまでのツナギとして、次期「プレトーク」夢先案内人の村松裕子さん(コントラバス奏者)が進行役を務めました 打ち合わせなしとのことで、若干戸惑いが見られましたが、彼女自身のスタイルを早く身に着けて、聴衆を楽しませてほしいと思います

篠原さんの着替えが終わり会場に現われて村松さんから”選手交代”しました。ヴァイオリンの岸田晶子さん(新日本フィルでは、その風貌から”アウンサンキッシ-”と呼ばれているらしい)や、この日誕生日を迎えたという木村恵子さん(おめでとうござます)にインタビューした上で、最後に篠原さん自身が演奏を振り返って「この曲を演奏すると、無性に肉を食べて赤ワインを飲みたくなります 演奏者に妻を加えてくださり有り難く思います。よくやってくれた と思います」と感想を述べておられました ピアニストの出久根美由樹さんは篠原夫人でいらっしゃいます。出身大学が同じなのでそこで出会われたのでしょうか

私は、赤白それぞれ1杯のワインを飲んで早々に引き上げましたが、演奏者を囲んでの宴はまだまだ続いていたようです。演奏者と聴衆とのこうした交流の場はいいものですね

 

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「漆原朝子と弦楽器の仲間たち」(ヤマハホール)のチケットを入手

2013年04月18日 07時00分07秒 | 日記

18日(木)。昨日、午後5時から当ビル10階ホールでミャンマーの国民代表院議員・アウンサンスーチーさんの記者会見がありました ほぼ予定通りの時刻に当ビル1階玄関に到着、占有エレベーターで9階日本記者クラブに直行、サイン帳にサインをして、10階の記者会見場に移りました

浅黄色の民族衣装を身に着けたスーチーさんは小柄な人ですが凛とした顔立ちで輝いていました 会見場は300人を超える報道陣やクラブ会員で満席状態 クラブ事務局のHさんが「一人のゲストでこんなに賑やかな記者会見は本当に久しぶりです」と興奮気味に話していました。

 

          

 

デリー大学とオックスフォード大学で学んだスーチーさんは流暢な英語でスピーチ、時間が40分間と限られているため会見は日本語と英語の同時通訳で行われました。会見の模様は新聞各紙、テレビ報道で紹介されている通りですが、大統領就任への意欲を示していたのが印象的でした 事件も事故もなく定刻通りに当ビルをあとにして次の移動先に出発したので安心しました

 

          

                 (記者会見で配布された報道用資料)

 

  閑話休題  

 

7月2日(火)午後7時から銀座ヤマハホールで開かれる「漆原朝子と仲間たち」公演のチケットを買いました プログラムは①モーツアルト(Lenzewski編曲)「3つのヴァイオリンのためのアダージョ、メヌエットとロンド」、②チャイコフスキー「弦楽六重奏曲”フィレンツェの思い出”」、③メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲変ホ長調」です

出演はヴァイオリニスト漆原啓子の妹・漆原朝子のほか、川田知子、伊藤亮太郎、会田莉凡(以上ヴァイオリン)、鈴木康治、安藤裕子(以上ヴィオラ)、山本裕康(チェロ)他です このうち、会田莉凡(りぼん)は昨年12月5日に桐朋学園オケが飯守泰次郎の指揮でブラームスの交響曲第4番を演奏した時のコンマスを務めた女性です その時は彼女の名前が判らなかったので、翌日のブログには、いつか世に出る演奏家だ、という趣旨のことを書きました。また、鈴木康治は最近のtoraブログに2度登場した読売日響の首席奏者です

モーツアルトの「3つのヴァイオリンのためのアダージョ、メヌエットとロンド」とはどんな曲でしょうか。聴いたことがないので楽しみです。一番聴きたいのはメンデルスゾーンの「弦楽八重奏曲」です

 

          

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セバスチャン・マンツのクラリネット・リサイタルを聴く~日経ミューズサロン

2013年04月17日 07時00分12秒 | 日記

17日(水)。昨日の午前中、九段にある健康保険組合会館に健康診断に行ってきました 待合室で待機している間、テレビモニターに”がん検診”の大切さを説いたドラマ仕立てのビデオが流されていましたが、その主人公の名前が「上杉検診」。われらが〇〇健保も3級程度か

 

  閑話休題  

 

昨日の朝日朝刊に指揮者コリン・デイビスの死亡記事が載っていました 記事によると、

「英国の指揮者コリン・デイビスが14日に病気で亡くなったとロンドン交響楽団が発表した。85歳。1959年にロンドン交響楽団で初めて指揮し、95~2006年、同交響楽団の首席指揮者。07年から総裁を務めた。ボストン交響楽団などでも指揮した

コリン・デイビスはモーツアルトの演奏が良いのですが、ボストン交響楽団を振ったシベリウス交響曲全集(1975~76年の録音)は独特の魅力に溢れています 何種類か全集を持っていますが、デイビス版が一番のお気に入りです。何度聴いても飽きません

 

          

 

  閑話休題  

 

昨夕、大手町の日経ホールで第411回日経ミューズサロン「セバスチャン・マンツ・クラリネット・リサイタル」を聴きました セバスチャン・マンツは2008年9月、弱冠22歳でめったに1位を出さないことで有名なミュンヘン国際音楽コンクール・クラリネット部門で40年ぶりとなる第1位を受賞、合わせて聴衆賞も受賞した逸材です ピアノ伴奏はウィーン国立音楽大学大学院で学び、ウィーン・フィル団員との演奏の機会も多い三輪郁です

プログラムは①ウェーバー「シルヴァーナの主題による7つの変奏曲」、②ペンデレツキ「クラリネットとピアノのための3つのミニアチュア」、③シューマン「クラリネットとピアノのための幻想小曲集」、④ストラヴィンスキー「クラリネット・ソロのための3つの小品」、⑤ガーデ「クラリネットとピアノのための幻想小曲集」、⑥ブラームス「クラリネット・ソナタ第1番ヘ短調」です

 

          

 

自席はG列7番、センターブロック左通路側です。会場は7~8割位埋まっている感じでしょうか。ミューズサロンとしては入っている方です

黒を基調とするドレスに身をまとった三輪郁とともにセバスティアン・マンツが登場します。とても27歳とは思えないほど落ち着いた雰囲気です

1曲目のウェーバー「”シルヴァーナ”の主題による7つの変奏曲」は1811年に当時有名だったクラリネット奏者ベールマンのために書かれました。プラハでの演奏会のために一晩で作曲したとのことですが、きわめて古典的な曲でした

ここでマンツがマイクを持って拙い日本語で「きょうは、ようこそお出でいただき、ありがとうございます。あとは三輪さんに通訳をお願いします」と言って、次のペンデレツキの「クラリネットとピアノのためのミニアチュア」について解説しました

「この曲を、よりいっそう理解していただくために、少し解説させていただきます 5年前にこの曲を演奏した時、批評家が『まるで鳥小屋の中にいるような曲だ。第1楽章は鳥がバタバタ騒いでいる様子、第2楽章は夜が来てミステリアスな雰囲気を醸し出していて、第3楽章は、鳥を捕まえに人間がやってきて、追いかけっこを始める。そして最後は・・・・どうなるか』と批評しましたが、まさにそんな感じの曲です。全部で4分程度の短い曲です

そして二人で演奏されたその曲は、まさにその批評家の言う通り人間と鳥の追いかけっこそのものという曲でした

3曲目のシューマン「クラリネットとピアノのための幻想小曲集」は1849年2月に3日間で集中的に作曲されました。クラリネットではなくチェロでこの曲を聴いたことがあるように記憶しています。シューマン独特の幻想的なメロディーが奏でられます

休憩後の1曲目、ストラヴィンスキー「クラリネット・ソロのための3つの小品」のため、マンツは2本のクラリネットを携えて登場しました。この曲を聴いていて「春の祭典」のクラリネットのメロディーを思い浮かべました

2曲目のガーデ「クラリネットとピアノのための幻想小曲集」は、シューマンの幻想小曲集を聴いて「ああいう曲を書きたい」と思って書いた曲とのことです。何も言われなければシューマンの曲だと思うほど”シューマン的”な曲です

さて、最後のブラームスの「クラリネット・ソナタ第1番」ですが、ブラームスが1891年3月にマイニンゲンを訪れた時に、現地の宮廷楽団のクラリネット奏者、リヒャルト・ミュールフェルトに出会い、優れた演奏に創作意欲をかきたてられ、クラリネット三重奏曲、クラリネット五重奏曲、2つのクラリネット・ソナタを書いたのです ソナタ第1番は全体的には寂寥感に満ちた曲です。マンツは切々とブラームスを歌い上げます。三輪もぴったり付けています

アンコールに、まずミヨーの「スカルムーシュ」の第3楽章「ブラジレイラ」(ブラジルの女)を生き生きと楽しげに演奏しました そして、再度マイクを持って三輪の通訳を介して「2曲目の”最後の”アンコールを演奏しますが、だれか会場でお手伝いをしてくれる人はいませんか。挙手をお願いします」と言うと、会場の最前列に座っていたGパンの青年が手を挙げ、舞台に上がって”お盆”を持ってピアノの手前に立ちました。会場の聴衆は”いったい何が始まるのか?”と興味深々です

”最後”のアンコールはシュライヤーという人の書いた「だんだんちっちゃく」という曲です 楽しげな音楽をクラリネットが演奏するのですが、曲の途中でクラリネットを分解して、演奏しては部品をお盆に乗せ、また演奏しては部品をお盆に乗せていくのです。最後にはマウスピース部分だけが残り、ピーッと吹いてオシマイです

マンツという演奏家はドイツ生まれのカチカチ頭ではなく、ユーモアを解する好青年のようです。なかなかのエンターテイナーだと思いました

 

 

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モーツアルトの歌劇「魔笛」を観る~オール日本人キャストによる新国立劇場公演

2013年04月16日 07時00分08秒 | 日記

16日(火)。関西方面に旅行に行かれた地下のW薬局のW夫人から、大阪土産ということで「親父ギャグ検定3級」の賞状をいただきました 賞状といっても縦8センチ横5.5センチのミニ版です。吉本興業が作成・販売しているとのことで、ステッカーになっています

 

          

 

夫人がなぜ、ギャグやダジャレに無縁の私に「ギャグ検定3級」の賞状をくださったのか意味不明です。その辺に捨てっかーと思いましたが、せっかくのお土産なので定期入れにでも入れて定期的に見ようと思います

交付日が2008年1月20日になっているので5年前に作成されたことが判りますが、その後日付が更新されていないということは、最初にたくさん作り過ぎて、よほど余っているのでしょう まず第一に、吉本興業のお笑い芸人に交付したらどうでしょうか。3級程度の芸人が少なくないのでは

それにつけても「3級」というのが気になるので、家に帰って子供たちに賞状を見せて反応を見ることにしました

「親父ギャグ検定の賞状もらったんだけど、3級なんて、レベルが低すぎて、素直にサンキューって言えなかったよ」と言うと、息子は無視、娘は愛想笑いしていました。二人には明日から炊事、洗濯、掃除とも自分のことはすべて自分でやってもらうことに決めました

 

  閑話休題  

 

昨日の朝日夕刊に「全聾(ろう)の作曲家アルバム、オリコン2位」という記事が載りました このブログでもご紹介した佐村河内守の「交響曲第1番”HIROSHIMA”が、オリコン週間ランキング(4月1~7日)で2.2万枚を売り上げ、前週の175位から2位に急上昇。NHKが先月末に放送した「NHKスペシャル 魂の旋律~音を失った作曲家~」を放送した影響とのこと 私もその影響を受けた一人です。生演奏至上主義の私でさえCDを買ったのですから、さもありなんです

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

14日(日)初台の新国立劇場でモーツアルトのオペラ「魔笛」を観ました 劇場の入口を入ると、クロークから2階へ通じる階段にエスカレーターが設置されて稼働していました。オペラ・ファンは年寄りが多いのでニーズに応えたのでしょう

今回の公演の特徴はオール日本人キャストによる上演ということです。ザラストロに松位浩、タミーノに望月哲也、弁者に大沼徹、夜の女王に安井陽子、パミーナに砂川涼子、パパゲーナに鵜木絵里、パパゲーノに萩原潤、モノスタトスに加茂下稔、侍女に安藤赴美子、加納悦子、渡辺敦子ほかです。ラルフ・ヴァイケルト指揮東京フィル、演出はミヒャエル・ハンぺです

 

          

 

オケがスタンバイし、指揮者ヴァイケルトがタクトを振り下ろします。最初の和音を聴いて「これはイケる」と思いました 充実した音が会場を満たします。第1幕では、萩原潤が歌うパパゲーノのアリア「おいらは鳥刺し」は軽妙で声も素晴らしいと思いました 一方、タミーノがパミーナの絵を見て歌うアリア「この絵はあまりに美しい」では、残念ながら望月は高音部が割れてしまい調子を崩しました。美しいアリアだけに残念でした

それに喝を入れたのは安井陽子の夜の女王のアリア「畏れるな、わが子よ」です ハンぺの演出では、舞台中央、天井から宙吊りになった大きな月に乗って女王が登場し、2階くらいの高さで超難曲を歌うのですが、手すりに掴まっているわけではないので、相当怖いのではないかと思います。高所恐怖症の歌手は歌えないでしょう しかし、今や日本で”夜の女王”といえば安井陽子と言われるほど、第一人者に成長した彼女は堂々と超高音コロラチューラ・ソプラノでアリアを歌い上げます 一つだけ注文を付けるとすれば、もっと怖い感じを出すため顔のメイキャップをきつめにした方がいいのではないか、ということです もっとも、このオペラは、夜の女王は前半は”良い人”で、後半になると”悪い人”になってしまうので、最初からメイキャップをきつくするのは問題かもしれません 安井は第2幕の夜の女王のアリア「地獄の復讐が私の心の中に煮え立つ」でも迫力のあるコロラチューラで超難曲を見事に歌い上げていました

ザラストロ役の松井浩はドイツのザールブリュッケン歌劇場の首席バスを務めていますが、第2幕の「この聖なる神殿では」をはじめ、腹の底に響くような重厚な歌声で、大きな存在感を示していました

パミーナ役の砂川涼子は、第2幕でタミーノの愛を失ったと歌うアリア「私にはわかる」を、悲しみを湛えて切々と歌い上げました

第2幕で、「しゃべってはいけない試練」の中で、パパゲーノが「ワインが欲しい」と言うと武士が「叶えてやる」と言って、床を蹴るとボンという音とともに炎が上がり、床の下からワイン・ボトルが出てくる・・・・・はずでしたが、出てきません 萩原パパゲーノはどう切り抜けるのか?と興味深く見ていると、日本語で「まいったなあ」と言って、舞台後方の陰に行ってワイン・ボトルを取り上げ日本語で「ここにあった」と言って飲む真似をしていました。こういうケースは、ちょっとした事故があるので、あらかじめ”スペア”を用意しているのでしょう それに加えて歌手のウィットのあるアドリブが求められます。その点、萩原パパゲーノは合格点です

それは歌手にも当てはまります。出演者が急きょ出演できなくなった時に備えて、それぞれの役に「カバー歌手」が控えています。プログラムにはカバー歌手の名前も載っています

急きょ降板と言えば思い出すことがあります。もう25年以上前のことです。元の職場のTさんと、英国ロイヤルオペラ来日公演「魔笛」を聴きに行きました。第1幕が終わって、Tさんが「3人の侍女の一人の声が変だと思わないか?」と訊くので「ソプラノですか?」と答えると、「いや、メゾの方だよ」と言います休憩時間が終わり第2幕が始まる前に「3人の侍女のうちメゾソプラノの〇〇は健康上の理由により降板、代わりに〇〇が出演します」というアナウンスがあったのです Tさんの耳の確かさに舌を巻いたのを覚えています。Tさんは幼少の頃あのピアニスト安川加寿子の孫弟子だったとのことで、学生時代はコーラスの指揮をしていたという話を聞きました。そういうバックボーンがあって、あの時の判断になったのだと思います。彼には多分、絶対音感があると思います

テノールの望月哲也は後半は持ち直し、伸びのあるテノールを聴かせてくれました また、3人の侍女、安藤赴美子、加納悦子、渡辺敦子も美しい歌声を聴かせてくれました パパゲーナ役の鵜木絵里はコケティッシュな役柄を見事に演じ楽しい歌声を聴かせてくれました

オール日本人キャストによるオペラは新国立劇場音楽監督、尾高忠明氏の永年の夢だったと思いますが、終演後の拍手とブラボーの嵐を見る限り、成功裏に終わったのではないかと思います

 

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METライブビューイング、ザンドナーイ「フランチェスカ・ダ・リミ二」を観る

2013年04月15日 07時00分02秒 | 日記

15日(月)。昨夕、たまたまNHK-Eテレをつけたら「クラシック音楽館」という番組をやっていました昔のN響アワーみたいな番組です。明らかに20世紀の音楽、ピアノ協奏曲のような曲をやっていました。番組表で確かめるとバーンスタインの交響曲第2番「不安の時代」でした。驚いたのはその曲ではなく、その曲を演奏しているオーケストラです 男性の比率が高いところはN響らしいのですが、コンマスは欧米人で、何人か見覚えのある楽員もいるのですが、見知らぬ人、しかも若い人の方が多いのですホルンやヴィオラなどは見たこともない人ばかりです。しかし、オーボエの茂木大輔氏をはじめ首席クラスを見るとN響そのものに違いないのです

早い話が、ここ数年のうちにN響は定年退職者などにより大幅に若返りが図られたのです。私の場合、在京オケで定期会員になっているのは東京交響楽団、東京フィル、新日本フィルなので、この3つのオケはメンバーの顔が判るのですが、他のオケはほとんど聴く機会がないので”浦島太郎”状態なのです。あの愛すべきスヴェトラーノフがN響を振った頃はN響の定期会員だったのですが、ここ数年は魅力を感じませんでした。しかし、メンバー交代が大幅に進んだ今、N響を久しぶりに聴いてみてもいいかな、と思い始めました

 

  閑話休題  

 

今日は新聞休刊日。朝から新聞が無いと何だか気が抜けたような、物足りないような気分です もう20年以上前から朝日と日経を取っていますが、休刊日は同じ日です。それは、日経が専売店を持っておらず、朝日、毎日、読売などの販売店に配達を委託しているからです したがって朝・毎・読が休刊して日経が配達されることは有り得ないのです。いっしょに配達しないと、新聞販売店の従業員が1年中休むことが出来なくなるのです。そんな訳で、朝、新聞が無くてもガマン、ガマン 

 

  も一度、閑話休題  

 

13日(土)に新宿ピカデリーでMETライブビューイング、ザンドナーイ「フランチェスカ・ダ・リミ二」を観ました 今年3月16日に米メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ映像です

キャストはヒロイン、フランチェスカにエヴァ・=マリア・ヴェストブルック(ソプラノ)、義弟のパオロにマルチェッロ・ジョルダ―二(テノール)、パオロの弟マルティスティーノにロバート・ブルーベイカー(テノール)、パオロの兄ジョバンニにマーク・デラヴァン(バリトン)ほか。指揮はマルコ・アルミリアート、演出はピエロ・ファッジョー二です

 

          

 

舞台は13世紀のイタリアです。ラヴェンナの領主ポレンタ家のフランチェスカは、リミ二の領主マラテスタ家の長男で、片足が不自由で粗野な性格のジョヴァン二(あだ名はジャンチョット)と政略結婚させられます 実は、フランチェスカが結婚を拒否しないようハンサムな弟パオロを結婚相手と思わせてだまし討ちにしたのです その後、フランチェスカはパオロを「自分を騙した」と責めますが、パオロは企てを知らなかったと弁明します。初めて会った時から魅かれ合っていた二人は、お互いに感情を抑えきれなくなって熱いキスを交わします。ジョヴァンニの末弟のマラテスティーノがフランチェスカに言い寄りますが拒否され、彼女とパオロの秘密の恋を兄のジョバンニに暴露します 嫉妬に怒り狂ったジョバンニは妻の寝室でパオロとフランチェスカを殺害します

ザンドナーイの音楽は、いろいろな作曲家の影響を受けていると思います リヒャルト・シュトラウス、プッチーニ、ワーグナー、まだまだ居そうです。ただ、一番影響を受けていると思ったのはリヒャルト・シュトラウスです 第1幕最後の二人の出会いのシーンは、まさにR.シュトラウスの「バラの騎士」の騎士の登場シーンと同じです 「ばらの騎士」では騎士が仲介役としてバラを”婚約者”に捧げるのに対して、このオペラではフランチェスカがバラを持ってパオロに渡すところが違いますが

フランチェスカ役のエヴァ=マリア・ヴェストブルックはオランダ出身で、MET出演はワーグナーの「ワルキューレ」のジークリンデ役に次いで2回目ですが、深みのある美しい声に加えて見事な演技力で聴衆を魅了しました

パオロ役のイタリア出身マルチェッロ・ジョルダー二はMETの看板テノールですが、無理のない伸びやかな声で義姉への愛を歌い上げました

ジョバンニ(ジャンチョット)役のマーク・デラヴァンは底力のあるバリトンで、気性の激しい役柄を見事に演じ歌い上げていました

その弟マラテスティーノ役のロバート・ブルーベイカーは、いかにも悪役ぴったりのテノールですが、カーテンコールでは人気があります

その他にも、フランチェスカの世話係の女性(黒人)や、彼女を取り巻く4人の女性たちも、歌と演技に素晴らしいものがありました

もう一つ、今回の上演の特徴は、懲りに凝った衣装と舞台づくりです。相当お金をかけています

上映時間はインタビュー・休憩3回を含めて3時間32分です。新宿ピカデリー、東銀座の東劇ほかで19日(金)まで上映されます

ところで、このオペラのMET上演は27年ぶりのことだそうです。27年ぶりと言えば、ミャンマーの民主化運動指導者アウン・サン・スーチーさんが13日から7日間の日程で日本を訪れています 彼女は1985年から1年間、京都大学の客員研究員として日本に滞在していました。彼女が日本に居たころ、METではフランチェスカ・ダ・リミ二が上演されていたわけです

 

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モーツアルト「弦楽五重奏曲K.563」、シェーンベルク「清められた夜」を聴く~東京・春・音楽祭

2013年04月14日 07時20分45秒 | 日記

14日(日)。17日(水)12:05から12:50まで、内幸町の飯野ビル、1階エントランスロビーでランチコンサートがあります。3月までは第3木曜日でしたが、4月から第3水曜日に変わりました

出演は武蔵野音大卒、東京藝大大学院在学中の鈴木遥さん(クラリネット)と武蔵野音楽大学大学院ヴィルトゥオ―ソコースを主席で卒業した竹中千絵さん(ピアノ)の二人です

プログラムは①リスト「愛の夢」、②チャイコフスキー作曲・プレトニョフ編曲の演奏会用組曲「くるみ割り人形」より4曲(以上ピアノ・ソロ)、③アーノルド「ソナチネ」、④松任谷由美「春よ来い」、⑤ロヴェッリョ「”椿姫”の旋律による演奏会用幻想曲」です 昼休みのひと時、ベーゼンドルファーの美しい音色に耳を傾けてはいかがでしょうか

 

          

 

  閑話休題  

 

昨夕、東京文化会館小ホールで「若き名手たちによる室内楽の極」公演を聴きました。これは「東京・春・音楽祭」公演の一つで、プログラムは①モーツアルト「ディヴェルティメント変ホ長調K.563」、②シェーンベルク「清められた夜」です

出演は元大阪フィル首席コンマス・長原幸太、新日本フィルのコンマス・西江辰郎(以上ヴァイオリン)、読売日響首席・鈴木康治、読売日響等の首席客員・大島亮(以上ヴィオラ)、日本音楽コンクール第1位・上森祥平、各オケの客員首席・富岡廉太郎(以上チェロ)です

 

          

 

自席はJ列12番、左ブロック通路側、隣席は和服姿の妙齢の女性。和服はやっぱり40代以上の女性が似合いますね 会場は9割方埋まっている感じです

1曲目のモーツアルト「ディヴェルティメント変ホ長調K.563」は、作曲者が32歳の1788年9月にウィーンで作曲されました。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの三重奏曲です

左から長原幸太(Vn)、上森祥平(Vc)、鈴木康治(Va)という態勢です。長原幸太は、「聴く力」で有名な阿川佐和子がかなり前に”一押し”として推薦していたヴァイオリニストです 鈴木康治は4月2日の「ボストン響オーボエ奏者・若尾圭介の世界」で大活躍したヴィオラ奏者です。いつもニコニコしていて音楽するのが楽しくて仕方がないといった表情で演奏します

ディヴェルティメントK.563は6つの楽章から成ります。とくに第5楽章「メヌエット」と第6楽章「アレグロ」が馴染みのあるメロディーで、モーツアルトらしい明るい曲です 3人はお互いに間合いを取りながら三重奏の魅力を表出します。やっぱりモーツアルトの室内楽はいいです

ところで、ディヴェルティメントと言えば、思い出すことがあります。元の職場にいたとき、ウィーンで新聞関係の国際会議があって、そのプログラムの中に歓迎音楽会があり「ディヴェルティメント」という言葉が出てきました。プロの翻訳者が訳せなくて困っていました。「あいつなら知っているかも」ということで、私に頼ってきたのです 「ああ、それは喜遊曲ですね。一般的にはディヴェルティメント(喜遊曲)は室内で、セレナードは屋外で演奏される曲です」と解説すると、その翻訳者は目を丸くして驚いていました今から30年以上も前のことです

2曲目のシェーンベルク「清められた夜」は、若き日のシェーンベルクがリヒャルト・デーメルの同名詩をもとに1899年12月に作曲した単一楽章の弦楽六重奏曲ですデーメルの詩は次のような内容です

「月夜の林を散歩する男女。女が他の男の子供を宿したことを告白する しばし緊張の時間が訪れる。やがて男はその子を自分たちの子として受け容れることを誓う。そして二人は抱擁する

東京・春・音楽祭の総合プログラムの中で、著書「クラシックを聴け!」でクラシック界に激震を走らせた許光俊氏が次のように書いています

「本当なら、最悪の修羅場になりそうな内容の詩である。イタリア・オペラなら殺人や自殺が起きても不思議はないだろうし、男は復讐を誓うだろう だが、そうはならない。神秘的な月の光に支配された夜、事態はこれ以上望めないほど平和的に収拾されるのである 不安よりも後悔よりも、罪よりも軽率よりも、愛は強い

さて、音楽は詩の場面に即して情景描写や人物の感情を描いていきます そのため、起伏の激しい音楽が展開します。コンマスの長原、ヴィオラの鈴木、チェロの富岡の3人がリード役になって、かなり濃厚な音楽を奏でていきます

鳴り止まない拍手 にアンコールを演奏しました。それぞれのパートの左右が入れ替わり、西江辰郎がコンマスを務めます。最初は誰の何という曲かまったく判らなかったのですが、そのうちブラームスのハンガリー舞曲第5番のメロディーがはっきり聴こえてきたので、正体が判明しました しかし、ブラームスのオリジナル版ではないと思われます。シェーンベルクはブラームスのピアノ五重奏曲第1番を管弦楽用に編曲しているので、ひょっとするとブラームス作曲・シェーンベルク編曲による「ハンガリー舞曲第5番」かも知れません 違うかも知れませんが。6人の奏者はノリにノッて”舞曲”を弾き切りました。さすがは各オーケストラのトップクラスのメンバーによる臨時ユニットです

 

          

                 (「東京・春・音楽祭」の総合プログラム)

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「KSTアンサンブル2013 meets 吉野直子」公演を聴く~紀尾井ホール

2013年04月13日 07時00分17秒 | 日記

13日(土)。昨夕、紀尾井ホールで「KSTアンサンブル2013 meets 吉野直子」公演を聴きました KSTは「紀尾井シンフォニエッタ東京」の略です プログラムは①モーツアルト「弦楽五重奏曲第3番ハ長調K.515」、②同「アダージョとロンド ハ短調K.617」、③ドビュッシー「フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ」、④ラヴェル「序奏とアレグロ」です

自席は1階11列18番、ほぼ中央右ブロック通路側です。会場は9割方埋まっている感じです

1曲目のモーツアルト「弦楽五重奏曲第3番ハ長調K.515」はヴァイオリン、ヴィオラ各2本とチェロによる五重奏曲です。チェロを2本とした五重奏もありますが、モーツアルトのそれはヴィオラ2本による五重奏の代名詞のような曲です。1787年4月19日に完成しましたが、翌5月に作曲された「第4番ト短調K.516」と対のようになっています 長調と短調、明と暗、光と影の関係です この曲はモーツアルトの全器楽曲の中で最大の規模を誇る曲です プログラムの解説を読んであらためて気づいたのですが、第1楽章「アレグロ」と第4楽章「アレグロ」に挟まれた第2楽章と第3楽章は2つのパターンがあるのです 初版では第2楽章が「メヌエット」で第3楽章が「アンダンテ」ですが、自筆譜によると第2楽章が「アンダンテ」で第3楽章が「メヌエット」となっており、新全集は後者を採用しているのです この日の演奏は「リハーサルを経て決定される」と書かれていたので、楽しみにして聴くことにしました

5人の演奏者の登場です。左から山貴子、鎌田泉(以上ヴァイオリン)、河野文昭(チェロ)、安藤裕子、鈴木学(以上ヴィオラ)という配置、つまりチェロを真ん中にしてヴァイオリンとヴィオラが左右対称に分かれる形です。山は葡萄色、鎌田は淡いパープル、安藤は淡いグリーンのドレスです

 

          

 

第1楽章の冒頭はチェロの特徴あるキザミで入ります ここがすごく良いのです。このグループは第2楽章に「メヌエット」を持ってきました。初版に従ったようです。このメヌエットがまたモーツアルトらしくて好きです 第3楽章「アンダンテ」は第1ヴァイオリンと第1ヴィオラの対話を聴いているような印象を受けます。モーツアルトはきっと特定の演奏者を念頭に置いて作曲したに違いありません そして、第4楽章の「アレグロ」では、明るいメロディーが駆け巡ります。モーツアルトの真骨頂です。5人の演奏は心地よく響きました

2曲目はモーツアルト「アダージョとロンドハ短調K.617」です。グラス・ハーモニカ(今回はハープ)、フルート、オーボエ(今回はヴァイオリン)、ヴィオラ、チェロによる五重奏曲です グラス・ハーモニカはあの政治家で科学者のベンジャミン・フランクリンが1761年に発明した楽器です。ちなみにモーツアルトは1756年1月に生まれています。この曲は1791年、つまりモーツアルトの死の年の5月にこの楽器の名手と言われた盲目の女性マリアンヌ・キルヒゲスナーのために作曲しました。滅多に生で聴くチャンスがありません

左からフルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ハープという配置ですが、イエローのドレスで登場のフルート奏者・難波薫はまるでファッション・モデルのように長身でスマートです 鎌田、安藤が引き登板し、チェロの林俊昭とハープの吉野直子(ピンクのドレス)が新たに加わります。見た感じ「お父さんと4人の娘たち」といった風情です オリジナルがグラス・ハーモニカのこの曲は翳りのある内面的な曲想です。この曲を作曲した半年後にモーツアルトは息を引き取っています

3曲目のドビュッシー「フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ」は1905年に作曲されました。左からフルートの難波、ヴィオラの鈴木、ハープの吉野という態勢です 冒頭のフルートとハープのやり取りを聴いていると、何気に尺八と琴で弾いているような錯覚に陥りました 第2楽章は幻想的です。フィナーレは明るく賑やかです

最後のラヴェル「序奏とアレグロ」は、正式には「弦楽四重奏、フルート、そしてクラリネットを伴奏に伴うハープのための七重奏曲」です。左から鎌田、山崎、難波、鈴木(クラリネット)、吉野、林、安藤という布陣です こちらは2人のおじ様と5人のレディ達といった風情です。フランスの香りが漂う幻想的でエスプリに満ちた曲です 途中、ハープのカデンツァがありますが、吉野のハープは見事です 表面的には優雅ですが、ドレスの下は水面下の白鳥の足のごとく大忙しなのでしょう。ハープって大変だと思います

この日は大好きなモーツアルトの弦楽五重奏曲も聴けたし、珍しいアダージョとロンドも堪能したし、エスプリに満ちたドビュッシーとラヴェルの曲も聴けたし、大満足です

 

          

 

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「最終目的地」は「人性の特等席」~2つのアメリカ映画をギンレイホールで観る

2013年04月12日 07時02分17秒 | 日記

12日(金)。飯田橋のギンレイホールで映画を2本観ました 1本目はロバート・ロレンツ監督の「人生の特等席」、2012年アメリカ映画、111分です

メジャーリーグ最高のスカウトマンと言われたガス(クリント・イーストウッド)ですが、コンピュータによるデータに基づく最新のスカウト法には賛成出来ません 契約も残り3か月となり、地方にスカウトの旅に出ますが、彼は目の衰えが激しく、いい選手の発掘に困難を来します そこに子供の頃から野球を教え込んだ一人娘のミッキー(エイミー・アダムス)が、ガスの友人に頼まれて弁護士の仕事を休んでガスのもとにやってきます。ガスは、スイングの音、ボールがミットに収まる音を耳で聞き分け、ミッキーの目を借りて”本物”を見極め、そうした行為を通して、父と娘の絆を深めていきます

久しぶりにクリント・イーストウッドをスクリーンで観ましたが、顔も手もシワだらけです。しかし、味わいの深い演技は相変わらずです 最後に、ガスの意見を取り入れずに球団がスカウトしたバッターを、ミッキーが発掘した素人ピッチャーが三振に打ち取るシーンは小気味がいい場面です そして、球団がガスに契約更新を打診したとき「考えておく」と答え、ガスがミッキーに弁護士事務所で昇進の話が来ていることについて「いい話だから、仕事に戻れ!」と言った時「考えておくわ」と答えるところは、親娘そろって格好いいのです ガスとミッキーは共にスカウトとして活躍するのだろうか、と思わせるラストシーンです

 

          

 

もう1本はジェームズ・アイヴォリー監督の「最終目的地」、2009年アメリカ映画、117分です

コロラド大学の教員オマー・ラザギ(オマー・メトワリ―)は、自殺した作家ユルス・グントの伝記執筆の許可を得るため南米ウルグアイに渡ります。たどり着いた人里離れた屋敷で待ち受けていたのは作家の未亡人キャロライン(ローラ・リニー)、作家の愛人アーデン(シャルロット・ゲンズブール)とその娘、作家の兄アダム(アンソニー・ホプキンス)とそのパートナー(真田広之)達が暮らしていました

キャロラインは頑なに伝記の執筆を拒み、兄アダムは公認する代わりにオマーに宝石の密輸を手伝うよう持ちかけます そうした中、オマーとアーデンはお互いに惹かれあっていきます。最後に、オマーは性格の合わない恋人と別れ、アーデンと一緒になります

さて私が興味があるのは、この映画で使われていた音楽です 兄アダムがLPレコードをかけるシーンがあります。その時流れたのはレハールのオペレッタ「メリー・ウィドウ」第2幕冒頭でヒロインのハンナが歌う「ヴィリアの歌」です これは未亡人キャロラインを暗示しています。「メリー・ウィドウ」とは「陽気な未亡人」のことだからです。違う点はキャロラインが陽気ではないところです

キャロラインが絵を描いているところに、オマーの恋人が訪ねてくるシーンで流れていた音楽は、キャロラインの言葉を借りれば「プーランクよ。ゆったりとした良い曲でしょう」。ヴァイオリンとピアノの組み合わせだったようですが、曲名は判りません 残念ながらCDラックにあるプーランクのCDは6枚しかなく、その中にヴァイオリンとピアノの組み合わせによる曲はありません。悔しいです

 

          

 

しかし、この映画をきっかけに、俄然プーランクの音楽が聴いてみたくなり、室内楽集のCDを選びました。プーランクで一番有名な曲”フルート・ソナタ”をパトリック・ガロワのフルート、パスカル・ロジェのピアノで聴きましたが、フランスのエスプリを感じました

 

          

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準・メルクル+小菅優+水戸室内管弦楽団のベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」のチケット入手

2013年04月11日 07時00分06秒 | 日記

11日(木)。先日、コンサートのチケットを買いました 7月8日(月)午後7時からサントリーホールで開かれる水戸室内管弦楽団の演奏会です。プログラムは①細川俊夫「室内オーケストラのための”開花Ⅱ”(日本初演)、②ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番ハ短調」(ピアノ独奏:小菅優)、③シューベルト「交響曲第8番”グレイト”」の3曲。指揮は準・メルクルです

先日「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」を聴いて、30人規模の小オーケストラで聴くベートーヴェンもいいな、と思うようになり、チラシの束から厳選した公演です。3曲の中では、何と言ってもベートーヴェンのピアノ・コンチェルトでしょう。小菅優のキビキビした小気味のいいベートーヴェンが期待されます

 

          

 

  閑話休題  

 

道尾秀介著「月の恋人」(新潮文庫)を読み終わりました 著者の「あとがき」によると、この小説は、道尾が書き下ろしでストーリーをつくり、それをもとに連ドラを制作、そのドラマの放映とほぼ同時期に原作本を刊行する、という形で進んだようです

派遣社員の弥生は、正社員のミスを押し付けられ、キレて会社を辞めてしまいます おまけに付き合っていた彼氏が心を入れ替えて勉強したいというので大金を貸したのに、パチンコをやっているところを見て嫌気がさします 何もかも嫌になった弥生は中国の上海に一人旅に出ますが、そこで、ひょんなことから高級家具を扱うレゴリスの若き経営者・葉月蓮介に出会います それ以来、蓮助の方が弥生のことが気になってしかたない存在になり、彼女の住む谷中の居酒屋に行ったり、北海道の彼女の祖父母の家を訪ねたりします

一方、上海に住むシャウメイは、その美貌を買われてレゴリスのCMモデルにと誘われますが、それを断ります しかし、日本で極貧の生活をする父親の借金を返済するため最終的にはモデルになります。ところが、彼女はそうなるために万引きをしていたのです。それをストーカーが写真に収め、ある筋に売りつけていたのです

蓮助と弥生、蓮助とシャウメイ、弥生とシャウメイとの関係が複雑にからまってフィナーレに向かいます最初は経営のためには温情を一切排する冷徹な態度をとっていた蓮助が、弥生やその祖父母とのかかわりの中で人間的な心を取り戻していくところは、一人の青年経営者の成長物語ともいえるでしょう

この本を読んでいて最初から気になっていたのは上海から日本にやってきてモデルになったシャウメイの行方です。過去の万引きがバレてモデルを諦めなければならなくなった場面では「どうか最後にはシャウメイに幸せになってほしい」と祈っていました。「たかが小説」を読んでいてこんな気持ちになったのは初めてです。「されど小説」。それ程入れ込んで読んでいたのだと思います。久々に読んだ純恋愛小説です。道尾秀介はますます冴えています

 

          

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