今回は「精神科病院での入院が長期にわたる理由」についてお話いたします。
加古川市、JR加古川駅前にある精神科・心療内科クリニックの院長のブログです。
以前のブログにもお書きしましたが、私が精神科に入局した平成3年ごろ精神科病院の患者様の大半は長期間入院されていました。親が元気な間は盆や正月に外泊されたりしていましたが、兄弟姉妹の代になると面会すらほとんどない状況の方もいて、医師として無力感を感じていました。
この頃の入院は社会的入院と呼ばれており、幻覚や妄想などの症状は改善しているけれど帰るところがないため病院を住まいとして入院しているという側面がありました。
もちろん幻覚・妄想などの陽性症状は改善しても、意欲・発動性、実行能力低下などの陰性症状が強く自立した生活を送るのが難しい方が多かったことも理由の1つであったと考えます。
その後新規抗精神病薬(第二世代抗精神病薬)が治療の主流となり、神経内科クリニック、心療内科クリニックという名称で受診しやすくなった精神科で比較的早期に治療を受ける方が増えたため、入院に至らず外来で治療継続が可能な患者様が増えてきています。
政府も精神科病院の長期入院を回避する政策を打ち出し、急性期病棟が作られ早期退院が推進されています。
前述のように退院後の居場所がない患者様、一定の援助を必要とする患者様のためのグループホームなども作られ私が精神科医になった時に比べればかなり長期入院の患者様は減っていると実感しています。現在も入院期間が1年以上に及ぶ患者様も一定数おられます。
その理由は向精神薬が効かない、効果不十分など患者様の持つ疾病性が関係しているものと思われます。最初は十分な効果がみられたのに、治療を中断して症状の再燃を繰り返すうちに薬が効かなくなる方も多数経験しています。治療の中断については主治医と十分に話し合うことをお勧めします。
これまで長期入院は当たり前として捉えられた精神科の入院治療ですが、現在は在院期間の短縮を目指して様々な工夫が行われています。
※公
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