「破局噴火の時代」

2018年06月15日 06時29分37秒 | 社会・文化・政治・経済
「噴火すれば最悪1億人が死亡と想定」 : 九州南方にある鬼界カルデラの活動の徴候の報道から再び「破局噴火の時代」をおもう
投稿日:2016年11月20日 更新日:2018年5月14日

サイクル的にはいつ起きても不思議ではない日本のカルデラ噴火
このブログでは、過去に何度か「カルデラ噴火」というものについて書いたことがありました。カルデラ噴火は「破局噴火」とも呼ばれます。

記事で取り上てきました理由は、局地的な文明を絶滅させる自然現象としては、巨大な彗星や小惑星の衝突と並ぶほどの事象だと考えられるからです。

カルデラというのは、

カルデラとは、火山の活動によってできた大きな窪地のこと。(Wikipedia)

というように、火山活動によって作られた円形などの窪地のことですが、普通の噴火とカルデラ破局噴火は何が違うのかといいますと、カルデラ噴火は、このカルデラにおいて「窪地の面積ごとマグマが噴出する」という大規模な噴火のことです。
冒頭のイメージは、科学誌ニュートンにあるもので、九州での過去のカルデラ噴火を想定して描かれたイラストですが、このようなマグマの噴出の規模が著しい噴火となります。

とはいっても、カルデラ噴火は、ほとんど起きるものではなく(日本での発生頻度は約 6000年に 1度程度)、近代文明史の中で起きたことはありません。
日本では約 7300年前に九州南方にある鬼界カルデラがカルデラ噴火を起こして以来、起きてはいません。

つい先日、九州南方にある鬼界カルデラのマグマが「活動的である」ことを示す調査について報道されていまして、そのことについてご紹介しておこうと思います。

被害想定は最悪「死者1億人」の衝撃
報道は下の通りです。抜粋したものですので、全文をお読みになりたい場合は、リンクから神戸新聞のサイトでお読み下さい。

九州南方海底に活動的マグマか 神戸大が確認
神戸新聞 NEXT 2016/11/18

神戸大学海洋底探査センターは18日、九州南方の海底に広がるくぼみ「鬼界(きかい)カルデラ」を調べた結果、熱くて濁った水が海底から湧き出る「熱水プルーム」を5カ所で確認した、と発表した。

海底からの高さは最大約100メートルに上る。現時点では噴火予測はできないが、カルデラ直下のマグマが活動的であることを示しているという。

同センター長の巽好幸教授(マグマ学)のチームは10月13~27日、大学保有の練習船「深江丸」を使い、鹿児島県の薩摩半島南約50キロに位置する鬼界カルデラ(直径約20キロ)内で、ドーム状に盛り上がっている場所などを調べた。

音響測深装置で、水深約200~300メートルの海底に向けて船から音波を出し、反射波を観測。少なくとも5カ所で、海底からの高さ数十メートル~100メートル程度の熱水プルームを見つけた。

鬼界カルデラは約7300年前に噴火を起こし、九州南部の縄文文化を滅ぼしたとされる。

巽教授によると、こうした超巨大噴火は日本では過去12万年で10回発生。実際に起これば国内で死者が最悪約1億人と想定している。

というものです。

この記事の最後は、

> 実際に起これば国内で死者が最悪約1億人と想定している。

という物騒なものとなっていますが、ただ、この死亡者1億人というのが今回の調査での鬼界カルデラ単体のこととは思えず、おそらく他のカルデラ噴火を含めての想定ということなのでしょうけれど、いずれにしても、こんな数の想定をしていたということは、初めて知りました。

単一の自然災害において「1億人の死者の想定」というのは、まさに物騒中の物騒といえることで、「ザ・キング・オブ・ザ・物騒」というような称号も与えられようかと思われるものですが、その数に反応して、この記事を取り上げたというような次第です。

そもそも、この数が自然災害での被害としては、どのくらいものすごいものかといいますと、たとえば、

・1995-2015年の過去20年間で地球の自然災害で死亡した人の総数が「135万人」に上ることがベルギーの自然災害データベースにより判明
 2016/10/14

という過去記事では、このタイトルにありますように、

「過去 20年間の自然災害での死者数は 135万人だった」

というベルギーのルーベンカトリック大学災害疫学研究所のデータベースをご紹介したものでした。

これは年によってその数は違うものですので、平均値を示すのは本来ならおかしいのですが、まあ一応、20年間で 135万人ということは、「過去 20年間の地球では平均として1年間に7万人弱が自然災害で亡くなっていた」ということになります。

この数から比べてみますと、破局噴火の最悪死者数想定1億人というのは、その何百倍にも何千倍にも相当する途方もない数だということが何となくわかります。

また、これは局地的な被害にとどまらないはずで、巨大な破局噴火が起きれば、噴火した場所から遠く離れた国や地域であっても、火山灰などにより気温や日照などの影響を受けます。
おそらく全世界規模で、太陽日射がかなりの期間遮られることになり、その影響も、正確なところはともかく、かなり長く影響するはずです。

下は 536年の東ローマ帝国の様子ですが、これは、前年の 535年に、インドネシアの火山が巨大噴火を起こしたものによると考えられていますが、1年以上も「太陽が暗い状態」が続いていたことが記されています。

東ローマ帝国の歴史家プロコピオスの西暦536年の記述
昼の太陽は暗くなり、そして夜の月も暗くなった。

太陽はいつもの光を失い、青っぽくなっている。

われわれは、正午になっても自分の影ができないので驚愕している。

太陽の熱は次第に弱まり、ふだんなら一時的な日食の時にしか起こらないような現象が、ほぼ丸一年続いてしまった。

月も同様で、たとえ満月でもいつもの輝きはない。

歴史家であり教会指導者ヨーアンネースの西暦536年の記述
あのような太陽からの合図は、いままで見たこともないし報告されたこともない。

太陽が暗くなり、その暗さが1年半も続いた。
太陽は毎日4時間くらいし照らなかった。照ったといっても、実にかすかだった。

人々は太陽が以前のように輝くことは2度とないのではと恐れた。

これらは、過去記事の、

・21世紀も「太陽が暗くなる時」を経験するのか? : 全世界が地獄の様相を呈した6世紀と酷似してきている現在に思う
 2013年07月15日

などに記しています。この6世紀に、記録が残っているほぼすべての世界で示されている異常な状態の原因は、確定したものではないですが、インドネシアのクラカタウ火山が 535年に噴火したものによるものではないかという説が最も強いとされています。

近代文明の中で連絡システムが世界中に広がったこの 200年くらいの間には、カルデラ噴火のような破局的な噴火は起きていませんので、現在の世の中で起きた場合にどうなるかはよくわからないですが、しかし、破局噴火を含めて、「今の日本は最前線」だということはできます。

最近の、日本の火山に関しての海外を含めた研究や報道を振り返ってみます。

火山王国・日本をめぐる最近の科学的研究
世界で最も危険な火山の1位となっている硫黄島

昨年 11月に、英国マンチェスター大学の天体物理学者たちが発表し、科学誌「ボルケーノカフェ」や「マンチェスター・コンフィデンシャル」などに掲載された「世界で最も危険な火山 10」は以下の通りになっていました。

2015年版 世界で最も危険な火山 10
1位:硫黄島(東京都)
2位:アポヤケ山(ニカラグア)
3位:フレグレイ平野(イタリア)
4位:阿蘇山(熊本県)
5位:トランスメキシコ火山帯(メキシコ)
6位:アグン山(インドネシア)
7位:カメルーン山(カメルーン)
8位:タール山(フィリピン)
9位:マヨン山(フィリピン)
10位:ケルート山(インドネシア)

このようになっていまして、1位が硫黄島ということになっています

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