円石藻の発生のために広域な白潮が観測

2019年10月20日 19時53分54秒 | 社会・文化・政治・経済

近年、ベーリング海では人工衛星観測によって円石藻の発生のために広域な白潮が観測されるようになった。さんご礁の海の色になる。円石藻の増殖は、石灰化の式が炭酸ガスを発生するので炭酸ガスの発生源になると主張する学者もいるが、間違いであろう。

CaイオンがCaCO3として取り込まれる石灰化反応では、炭酸ガス CO2 が出てくる式になる。

Ca2++2HCO3-→CaCO3+H2O+CO2
だからサンゴの成長は大気中CO2を増やすという理論展開である。ここで炭酸水素イオンの供給源はどこからかという大きな見落としがある。光の当たる海水中は海表面域だから大気中と深海側の両方とも可能性がある。深海側から炭酸水素イオンが供給されるのであれば、海水中の炭酸水素イオン濃度はどんどん減少してゆくことになるが、実態は平衡を保っている。どういう供給ルートを取ろうと、大気中の炭酸ガスが溶解することで炭酸水素イオンが平衡していると考えられる。
最初の炭酸水素イオンのひとつは確実にサンゴや円石藻の外殻となって固定される。水中から炭酸水素イオンのひとつが減って炭酸水素イオン濃度が下がる。大気と海水の平衡が炭酸ガスの吸収方向となり新たな炭酸ガスが大気から溶解し炭酸水素イオンとなる。あるいは石灰化の段階で発生したCO2はまだ海水中にあるから、炭酸水素イオンとして捕捉される。この反応ででてくるCO2が大気中に放出されてもその量に見合うCO2が海水中に大気から再溶解するから、収支としては、サンゴや円石層の外殻になった分だけ大気中から海に吸収固定している。

2個の炭酸ガスが海水に溶けて2個の炭酸水素イオンとなる。ついで1個の炭酸ガスぶんが炭酸カルシウムとして円石藻の殻を形成し、残りの1個分が再び炭酸水素イオンとなると解釈すべきである。円石藻は海水の炭酸ガスを吸収している。円石藻は沈降して炭酸ガスを深海に運び岩石化する。すなわち円石藻の殻重量に見合う炭酸ガスを大気中から除去してくれているはずである。

モル比を入れた化学式を書かず石灰化の式は炭酸水素イオンから炭酸ガスと炭酸カルシウムができるから、地球の炭酸ガスは円石藻で増加するという暴論を吐く人たちが出ていることは科学の理解レベルの危機を示している。

一般に気体物質は海水温度が下がれば溶解する。したがって、この気液平衡の関係式から地球上の海洋からの炭酸ガスの吸収と放出の分布を算出すると赤道域が放出、極域が吸収するという分布図ができあがる。実際の測定でも、太平洋の夏場は炭酸ガスを放出している。

この事実と、円石藻が炭酸ガスを吸収除去していることとを同じに議論してしまって、混乱が起こっている。夏場は気液平衡の原理で海水から炭酸ガスが放出されているが、同時に円石藻は石灰化の原理で、海中から炭酸水素イオンを海底へと除去してくれている。円石藻が下げてくれた炭酸水素イオン濃度によって、夏場の海水からの大気放出量が抑制されているのである。

単純に物質保存則から考えても、円石藻が炭酸カルシウムとして海底に移動させた炭酸ガス部分は大気から減っている。また、水深4000mを越えるあたりで炭酸カルシウムが溶解するからといって、その海水が表面に出てこない限り炭酸ガスとしての大気中放出は少ないはず。円石藻の殻が動物プランクトンの糞で凝集させられているときには、有機物でコーティングされている可能性が高い。表層で円石藻になれば、深層で溶解したとしても、大気中の炭酸ガスは深層へと移動しているはずだ。

 石灰化によるpHの低下が懸念されている。低pHにより、炭酸カルシウムでできている地球上のさんごの骨格が溶解してさんご礁がなくなり、海の光合成が止まるため、地球温暖化が加速されるというわけである。pH低下のほうは、化学式的にも、また小規模な実験でも確認されている。

ただpH低下説でまだ説明できていないことがある。
地球上には過去の生命が大気中の大量の炭酸ガスを石灰岩として石灰化の式に従い地中に封印してきた。カルスト台地や中国の桂林の景観が石灰岩の大地の例である。過去に巨大な量の炭酸ガスが海の生物により石灰化したわけであるから、現代の海のpHはもっと低いはずであるが、実際にはそうなっていない。

小さいスケールの実験でさんご礁がすべて消滅するという説をとなえる前にもっとやることがあるだろう。たとえば生物が光合成で弱酸塩をつくり、水素イオンを取り込むことも考えられる。淡水湖では植物プランクトンが光合成するために有光層ではアルカリ性、深層部では酸性になっていることが確かめられている。

また大地から供給されるCaイオン以外のアルカリ土類金属やその他の金属の及ぼす影響なども評価に加える必要があるだろう。

円石藻の炭酸カルシウム生産量は年間で約1ギガトンと見積もられている。人類が排出する1年間のCO2量は、約7.3ギガトンといわれているからたいへんな量である。

円石藻は黄色の葉緑体をもつ植物だから、その細胞質として炭酸同化作用によって海中の炭酸ガスを有機物にして体内に取り込んでいるので、そちらのぶんも深海に移動させていると思われる。これらの藻類が死滅してメタン発酵すればメタンハイドレートができるのかもしれない。

ただ、こうした植物プランクトンの細胞質部分はほとんど海の表層部分で動物プランクトンに捕食されて動物プランクトンの細胞質に変化し、植物プランクトンの殻だけが糞塊として粒径を増して、より沈降速度が増加して深海に沈んでゆくという説も有力である。こうした生命反応は高々海面下数10mの深さの光のある薄い層で行われている。光底創りがいかに大事かわかっていただけたとおもう。

ベーリング海の表面で増殖した円石藻の一部はベーリング海峡をとおり北極海に流れ込み、北極海の低温により生活力を失い大西洋で沈降すると考えらる。実際に大西洋の海底にはチョーク様の円石藻の層が堆積している場所が存在する。

 いっぽう大気による熱の南北への拡散は台風などの巨大な低気圧で生じる。海流が停滞し海水温が上昇すれば台風の頻度も強度も強くなる。

海水温の上昇と台風の発生のコンピューターシミュレーション結果が発表されて、地球温暖化はむしろ台風を減らすという結論もでている。しかしシミュレーションは、地球上の温度勾配や湿度勾配の存在抜きに結論すべきものではない。そこにエネルギー勾配ができる以上はそれを抜きにしたシミュレーションはあまり意味がないだろう。 むしろ海水温度が上昇しているアメリカのカリブ海沿岸の台風が巨大化している事実のほうに説得力がある。さらに発表どおり極相として台風が消えるとしても、極相まで至る過程で巨大な台風が発生しないとはいえないだろう。

電力中央研究所試算では、地球温暖化によって北米東海岸が特に顕著な海流の減速を示す。
カリブ海のハリケーンが巨大化したのは、グリーンランドから南下する冷たい水の量または流れが変わって湾内の水温が上がりやすくなったことと無関係ではあるまい。
21世紀末には黒潮の流れは現在より約30%速くなり、海水温も約3℃上昇するとの予測がある。(海洋研究開発機構)一方で黒潮の流速は遅くなるとの予測もあるが、日本近海の海水温の上昇方向は避けがたいようだ。
海水温度が高い状態では、大気に登る水蒸気の量が増加し、冬季に寒気が広く日本を覆えば積雪量はむしろ増大する。このときシベリアから南下する乾燥した強い冷気によって、一時的な海水表面温度は気化熱を奪われるため平年温度より低下する。オホーツク海などの温度が平年より高ければ日本海の表面下の海水層は暖かいと判断できる。こう考えるとよい。夏に打ち水をした道路表面が平年温度より下がっているといって、道路の下層まで冷えているわけではない。

地球温暖化は日本のようなロケーションでは雪を減らすわけではない。

我々の大地には、周期的に晴れや雨の日が訪れてくるから、植物が繁茂する。地球温暖化はこの周期性をこわして、雨ばかりの地域と晴ればかりの地域を固定化してしまう。大気の最上層にある赤道と極地域との間に見られる南北熱循環の変化による影響である。

そのわけは、極地域と赤道地域の南北の温度差が狭まるために生じる。温暖化によって極地域の雪が解けてしまうと極地域がより暖かくなることは確認されてきた。いっぽう赤道地域の気温はそれほど上昇しないから、南北の気温差が小さくなる。これまでこの南北の気温差が大きいため、極側に流れる熱量のエネルギーの強さで偏西風の蛇行が生じていた。冷たい空気と暖かい空気の日が交互に訪れていたわけである。

ところが南北の温度差が狭まると蛇行させていたエネルギーが小さくなるため、偏西風が、一定した固定した流れになってしまう。雨の降らない地方と、雨ばかりの地方が固定化しがちなのだ。当然、今まで森を形成していた植物は干ばつか日照不足で枯死してしまう。農業も気候の変化に合わせて変えなければならない。

 

 


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