〈教育〉 闇バイトに巻き込まれないために2025年3月6日 聖教新聞

近年、「闇バイト」が社会問題となっています。10代の子が関わった事例も少なくありません。巻き込まれないためのポイントについて、書籍『あの時こうしなければ……本当に危ない闇バイトの話』(金の星社)の監修を務めた、社会学者の廣末登さんに聞きました。
■破滅への一方通行
闇バイトとは、特殊詐欺の「受け子」や「出し子」、強盗の実行役、違法売買の運び屋、などといった犯罪行為に従事して報酬を得ることです。
「バイト」というネーミングが犯罪の印象を薄め、警戒されにくいのかもしれません。だからこそ、“闇バイトは犯罪だ”という認識を訴え続けていく必要があります。
警察庁の発表によると、2023年に摘発された特殊詐欺の実行役のうち、4割以上がSNSの闇バイト募集情報を通じて加担していました。
闇バイト経験者に「捕まると思わなかったのか」と問うと、「捕まる可能性は五分五分と思ったが、途中でやめられなかった」と多くの若者が回答していました。
本人は、一度きりの仕事で金銭的な困窮や急場をしのぎたいと考えたのかもしれません。しかし実際は、闇バイト応募時に顔写真や身分証明書の写真を送るように犯罪組織から要求されるため、一度関与したら抜けられないシステムになっています。犯罪組織にとっては、“個人情報をつかめばこっちのもの”なのです。
闇バイトの怖さは、“破滅への一方通行”という点にあります。一度手を出せば引き返すことはできません。私は「闇バイトはワンストライク、バッターアウト」と伝えます。野球ではストライクが3回入らないとアウトになりませんが、闇バイトは一度でも手を出すと、人生が終わってしまうからです。
よく「末端の実行役だから捕まっても罪が軽い」と思っている人がいます。しかし、それは違います。末端の実行役がいなければ犯罪は成立しないため、捕まれば厳罰を受けます。
例えば特殊詐欺で逮捕されれば初犯でも実刑を受け、刑務所などの刑事施設に収容されるでしょう。さらに、銀行口座も持てなくなるなどの社会的制裁が加わります。
■高額とは限らない
闇バイトの勧誘は大きく分けて二つあります。一つは地元の地縁関係に基づくもの。もう一つはSNSを通した非対面のものです。
かつては、地元の怖い先輩などに誘われて断れずに犯罪に手を染めるケースが多かったと思います。そういう人たちと関わらない、盛り場などに近づかないことが対策になりました。
しかし、近年はSNSを使って勧誘されるケースがかなり増えてきています。極端なことを言えば、家から一歩も出なくても、スマホを通じて闇バイトに応募すれば犯罪に巻き込まれてしまうのです。
そもそも、現代の子どもたちは買い物なども一から十までネット上で済ませることに慣れています。親世代のように“大事なことは対面、無理ならせめて電話で”という意識はないかもしれません。顔を合わせずに済むならその方が楽。そう考えるのは犯罪組織側も同じです。
SNSのやりとりだけで済むということは、相手にとっては“都合の悪い所をぼかせる”ということです。自分が手軽だと感じたら、それだけ相手にとっても手軽だということを忘れないでほしいのです。
その意味では、怪しい電話番号かどうか確認してみたり、会社が実在するかどうか調べてみたりする、“ちょっとした労を惜しまない”。それが、犯罪に巻き込まれるのを未然に防ぎ、相手に付け入る隙をつくらないことにもつながります。
求人募集のメールや広告に「高額」「即日現金」「簡単」「運ぶだけ」「渡すだけ」というような文言があったら、まずは疑いましょう。「裏バイト」「絶対に捕まらない」などと書いてあったら問題外です。
闇バイトの募集は見分けにくくなってきています。健全な求人サイトに出ていた「夜道で猫を捜すバイト」の求人が、内容的に闇バイトの募集ではないかと話題になりました。最近では、怪しまれないために、報酬をあえて高額にしないケースも増えています。
犯罪グループから見れば、闇バイトは捨て駒でしかありません。捕まったら切り捨てるだけ。世間が思い描く闇バイトの誘われ方が定着してくると、それを少しずつ変化させながら、募集し続けるのです。

■スマホのチェック
子どもが闇バイトに巻き込まれないために親ができることは何か。私は、闇バイトにつながる手段で最も手軽なスマホの利用状況を、まずは定期的にチェックすることだと思っています。子どもにスマホを買い与える際には、「親が定期的にチェックすること」など、ルールを一緒に決めてから持たせるのが理想です。
チェックしてほしいのは、闇バイトで悪用されている匿名性の高い「テレグラム」や「シグナル」などのアプリが入っているかどうかです。もしあった場合には警戒が必要です。
また、一般的によく使われるLINEやX(旧ツイッター)でも、おかしな内容のやりとりがされていないか、チェックすることをおすすめします。
チェックができなかったとしても、次のような兆候があったら闇バイトに関わっている可能性があります。
①高価なブランド品を所持するなど、持ち物が変化した
②スーツなど、普段着慣れていない服装で外出する
③帰宅時間が遅い、外泊が増えた
④部屋に見知らぬ卒業アルバムや名簿がある
⑤携帯端末を複数台所持している
もし、このような兆候が子どもに見られたり、あるいはすでに闇バイトに巻き込まれていたりしたら、すぐに相談しましょう。
申し込もうとしているバイトが闇バイトかどうか迷った時でも構いません。
いきなり警察に相談するのはハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。そういった場合は、各都道府県にある少年サポートセンター(一部地域では少年センター、ヤング・テレホン・コーナー)に相談することをおすすめします。
大事なことは、ためらわず、できるだけ早く相談することです。それにより、早期発見や被害を最小限に抑えることにつながります。
何かあった時に家族に相談できない状態が、事態をより深刻化させてしまうこともあります。脅されて言えない場合もあります。何よりも大事なことは、家庭での日頃からの関わりです。ぜひ、子どもとの関わりのなかで、できる予防策から実践していただけたらと思います。
《 怪しい兆候があったらすぐ少年サポートセンターに電話 》

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