「死の予感」あの予感は、そもそも何であったのか?
21歳の昭が、後年も思い起こすのである。
密かに愛していた、秋田峰子が、自死した時の衝撃は忘れらない。
昭の従姉夫婦が経営していた浅間牧場のレストランは、夕陽のなかで黄昏ていた。
「とても、いい雰囲気になったのね」峰子は、昭に身を寄せて、長い髪を左指で撫でるようにしていた。
「長い髪がいいね」昭は出会いの日に言っていた。
「この、髪切ろうしている」峰子は、山荘の窓の外に映じる浅間山の丸い峯に目を向けた。
「私は、ウソがつけないの。好きな人ができたの」峰子は目を見開き、戸惑うことなく昭に告げた。
昭は、幼いころに憧れ従姉の朝子に面影が似た峰子を失うこことなる。
「愛、恋」は昭にとっては、近く、遠いものとして去っていく。
「人はなぜ自死するの?」昭の問は人生の命題ともなる。
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