佐野昭は、競馬にのめり込んだことを契機に、インサイダー取引にも加担することなるのだ。
昭は、勤務する出版社の社長小倉隆治の指示で、毎日、東京証券取引所へ通うこととなる。
皮肉にも、昭が最初に勤務した新聞社で担当したのが、株式の分野だった。
それは、言わば無機質な数字を追う日々であり、嫌気がさすばかりで仕事そのものにウンザリする。
昭が大学時代にのめり込んだ文学における「人間の心の機微」とは真逆の経済・金銭の世界であり、嫌気が差す。
昭は、インサイダー取引に加担したことで、競馬資金を得ることになる。
昭の情報によって、数千万円もの利益を得た経営者もいた。
経済専門の雑誌の編集者の昭は、夜の銀座や赤坂のナイトクラブでの接待を受け、帰りはハイヤーで自宅の千葉県柏まで送られる。
クラブを出る際には10万円入りの封筒を毎回のように手渡される。
その金の一部を妻に渡すことは一度もなかった。
妻は30歳の時に新宿の歌舞伎町で出会い深い中となった女だった。
妻の美香は6歳年下であり、偶然にも越後湯沢の隣町の生まれだった。
インサイダー取引とは、金融商品取引法166条以下の定めにおいて禁止されている不正な株式売買を指します。
「インサイダー」は英語で「insider」と表記され、和訳すると「内部の人」や「社員」「会員」といった意味を持つため「内部者取引」とも呼びます。
上場会社の役員や従業員は職務を通じて、一般の投資家が知り得ない有益な情報の入手することができます。
この情報を入手できる一部の人物だけが、その情報を利用して、抜け駆け的に証券取引などを行って利益を得ようとすると、証券市場の信頼性は損なわれてしまいます。
したがって、金融商品取引法では、「上場会社の関係者などが職務や地位によって知り得た未公表の重要情報を利用して、自社株などを売買して、自己の利益を図ること」を、厳しく禁じているのです。
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