28歳の佐野昭は、経済関係の月刊誌の編集者になっていた。
その出版社の社長小倉隆治は、元読売新聞の記者であり、マスコミに深い人脈があった。
スポーツ新聞の競馬担当記者や、競馬好きな作家たちとの交流もあった。
競馬の馬を数頭持っていて、馬主仲間と銀座のクラブに通っていたが、酒は飲まなかった。
「酒はダメだ。口を付けただけで気分が悪くなる。オヤジも同じだった」
「佐野、俺の代わりに飲め」と同行した昭にグラスを回す。
そして、昭は社内で唯一社長から競馬に誘われる。
馬主仲間の情報は、真に信頼できるのかどうか?!
昭は、暮れのボーナスをもらった後であり、「馬主情報」に乗ってしまう。
だが、その肝心な馬は3着となる。
「佐野、惜しかったな。新年の競馬で取りもどそう」
昭は50万円を失い、社長は300万円も失うが「これも、競馬だな」と余裕を失わず薄らに笑っていたのである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます