以前、ホームページの方に載せていた(というか今も載せてますが)
10年以上前の旅行にまつわる書き物です。
今韓国づいてるので、再録しちゃいます。
ここに出てくる友人は、当時韓国の大学に講師として招かれてました。
今は、なぜか台湾の大学で仕事してます。
日本文学専攻の人なので特に海外志向ってワケではなさそうなのですけどね。
不思議と私の「はまる地域」がかぶってます。
■■■■■■■■■■■■■■■■
ソウル郊外の安山で、友人と食事してビールを飲んで楽しく過ごしていたら11時近くになってしまった。
「新村(シンチョン)」の宿までは電車で帰る。
さて、終電は何時なんだろうかとちょっと心配になりながらも、とにかく来た電車に乗ってソウル市内へ向かう。
「安山から新村までは2回乗り換えだな~」
などと路線図を確認したりしていたけど、やはり甘かった。
途中の「新道林」で無情にも電車は終わってしまったのでした。
あ~あ。
他の乗客と一緒に駅舎の外にとぼとぼと出る。
外に出てみるといずこも同じ終電後の風景。
タクシーを拾おうとする人たちであふれていた。
サラリーマン風のおじさん達が多いようだ。
私も、残された新村への道はタクシーだけ。
日本だとこういう場合、タクシー乗り場に長蛇の列というのが普通だと思うけど、ここにはそんな列などは存在していない。
話には聞いていたけど・・・。
列は作らないのね。
駅前の広い道路にはタクシー待ちの人がばらばらにあふれ、それぞれが思い思いに流してるタクシーを停めている。
タクシーもタクシーで、運転手さんが駅前に出ていって「インチョン(仁川)!」(けっこう長距離)とか叫んで客引きしてる。
かなり騒々しい。
この状況で、さて私は不慣れな日本人旅行者。
無事にタクシーで帰れるのだろうか・・・
不安がつのる。
真夜中だ・・・。
ボーッと眺めていては朝まで自分の順番は回ってこないだろう。
道路に出てみる。
さっきから観察していて大体のやりかたは分かった。
周りの地元の人たちは、走ってくるタクシーに手を挙げて停めて、窓越しに自分の行き先を言ってるようだ。
韓国のタクシーには相乗りという習慣があるらしい。
サラリーマンのおじさん達は空車だろうと人が乗っていようと関係なしに手を挙げて停めている。
タクシーの方も、お客を乗せてても停まっている。
行き先が同じなら乗れるということのようだ。
待ってる人も多いが、タクシーも沢山来る。
いつまでも観察ばかりしていられない。
勇気を出してタクシーを止め「シンチョン!」と叫んでみる。
何台か停めたけど、みんな「ダメダメ」というような顔をして走り去っていく。
方向が違うのかもしれないが、「わたしなにか悪いことしたかな?」と思ってしまうくらい乗せてくれない。
空車なのに走り去るタクシーもいる。
(車庫帰りの途中だったのか???)
だんだん心細くなってくる。
このまま朝になっちゃったりして・・・。
上京したての18才の頃、新宿で終電を逃した時のことを思い出した。
歌舞伎町の靖国通りで友達と2人でタクシーを拾おうとした。
空車がばしばし通るのに、私たちの前にはどれも止まってくれない。
やっと停まってくれたタクシーの運転手さんに
「誰も停まってくれなかったんですぅ」と話すと「女性客は長距離乗らないから、乗せたくない運転手が多いんだよ」との話で憤慨した。
あの頃はバブルだったから。
タクシーも強気だったらしい。
で、ソウルの真夜中である。
そんな思い出に浸ってる場合じゃない。
何としてもタクシーを止めなければ!
半ば悲しくなりながら、もう1台、手を挙げて走りよる。
空車のようだ「しんちょん!!」と叫んでみる。
「のれ」と手振りする初老の運転手さん。
「やった!!」これで帰れる~~~。
助手席に乗る。
どうして助手席に乗ったか説明すると・・・、
以前街で見かけた光景で、女性一人客はよく助手席に乗っていたようだったから。でも、そういう習慣があるのかは、ほんとのところはよく分からない。よく分からないけど、この後相乗りで酔っ払いとか乗ってきたら嫌だから、この場合はやっぱり助手席だ。
走り出してから改めて行き先を告げる。
「シンチョン」。
発音の仕方で私が韓国人でないことはばればれかもしれない。
真夜中だし、一人だし、用心にこしたことはないと思って極力黙っていた。
クールにしていた方がより安心できるような気がしたから。
しばらく走ると、「永登浦!」と叫んだおじさんが乗り込んできた。
同じ方向なのだろう。
おじさんは運転手さんといろいろ話している。
どうやら電車が無くなってまいったよ。
という様な事を話してるらしい。
運転手さんも、いい感じの人らしいが、私は言葉がよく分からないので会話には加わらない。
そうこうするうちに永登浦に着いたらしい。
おじさんが降りていった。
運転手さんは今度は私に話し掛けてくる。
「外国人ですから、韓国語はあまり話せません」
(あえて日本人とは言わなかった。まだちょっと警戒していた)
と言うと、
「ああ。そうでしたか。韓国人かと思ったけど、しゃべらないからおかしいと思ったんですよ。韓国人と日本人は似ているから区別できない。中国人なら直ぐ分かるけどね。」
とか何とか言ってた。と思う。
運転手さんは愛想がよく片言の日本語もしゃべってくれたりした。
私の緊張も少しほぐれてきた。
「行き先は新村でいいんですよね。どのあたりまでですか?」
「新村駅前でお願いします」
「新村には国鉄と地下鉄2つ駅があるけどどちらですか?」
「あ、地下鉄です」
そして私の「しんちょん」の発音がおかしかったらしく、(この韓国語は結構難しいのです。)正しい発音を教えてくれて、何度も練習させられた。
でも運転手さんの発音と自分の発音のどこが違うのかすら分からなかった・・・。
しばらくすると、若いお兄さんが3人乗り込んで来た。
ほどなくして、新村のロータリーに着いた。
お兄さんたちを残し降りる。
無事ついてよかった。
それにいい運転手さんでよかった。
韓国一人旅で寂しくなったら、タクシーに乗って運転手さんとおしゃべりすればいいな、とまで思うほどだった。
調子こいてます。
12時半をまわってたけれど、新村はまだまだ人通りも多く、明るかった。
なんだかほっとして旅館に帰ってみると、ラブホテルと化していた・・・・・。
あらあら、平和だなあ。
微笑ましくなって、その夜はぐっすり眠れた。
10年以上前の旅行にまつわる書き物です。
今韓国づいてるので、再録しちゃいます。
ここに出てくる友人は、当時韓国の大学に講師として招かれてました。
今は、なぜか台湾の大学で仕事してます。
日本文学専攻の人なので特に海外志向ってワケではなさそうなのですけどね。
不思議と私の「はまる地域」がかぶってます。
■■■■■■■■■■■■■■■■
ソウル郊外の安山で、友人と食事してビールを飲んで楽しく過ごしていたら11時近くになってしまった。
「新村(シンチョン)」の宿までは電車で帰る。
さて、終電は何時なんだろうかとちょっと心配になりながらも、とにかく来た電車に乗ってソウル市内へ向かう。
「安山から新村までは2回乗り換えだな~」
などと路線図を確認したりしていたけど、やはり甘かった。
途中の「新道林」で無情にも電車は終わってしまったのでした。
あ~あ。
他の乗客と一緒に駅舎の外にとぼとぼと出る。
外に出てみるといずこも同じ終電後の風景。
タクシーを拾おうとする人たちであふれていた。
サラリーマン風のおじさん達が多いようだ。
私も、残された新村への道はタクシーだけ。
日本だとこういう場合、タクシー乗り場に長蛇の列というのが普通だと思うけど、ここにはそんな列などは存在していない。
話には聞いていたけど・・・。
列は作らないのね。
駅前の広い道路にはタクシー待ちの人がばらばらにあふれ、それぞれが思い思いに流してるタクシーを停めている。
タクシーもタクシーで、運転手さんが駅前に出ていって「インチョン(仁川)!」(けっこう長距離)とか叫んで客引きしてる。
かなり騒々しい。
この状況で、さて私は不慣れな日本人旅行者。
無事にタクシーで帰れるのだろうか・・・
不安がつのる。
真夜中だ・・・。
ボーッと眺めていては朝まで自分の順番は回ってこないだろう。
道路に出てみる。
さっきから観察していて大体のやりかたは分かった。
周りの地元の人たちは、走ってくるタクシーに手を挙げて停めて、窓越しに自分の行き先を言ってるようだ。
韓国のタクシーには相乗りという習慣があるらしい。
サラリーマンのおじさん達は空車だろうと人が乗っていようと関係なしに手を挙げて停めている。
タクシーの方も、お客を乗せてても停まっている。
行き先が同じなら乗れるということのようだ。
待ってる人も多いが、タクシーも沢山来る。
いつまでも観察ばかりしていられない。
勇気を出してタクシーを止め「シンチョン!」と叫んでみる。
何台か停めたけど、みんな「ダメダメ」というような顔をして走り去っていく。
方向が違うのかもしれないが、「わたしなにか悪いことしたかな?」と思ってしまうくらい乗せてくれない。
空車なのに走り去るタクシーもいる。
(車庫帰りの途中だったのか???)
だんだん心細くなってくる。
このまま朝になっちゃったりして・・・。
上京したての18才の頃、新宿で終電を逃した時のことを思い出した。
歌舞伎町の靖国通りで友達と2人でタクシーを拾おうとした。
空車がばしばし通るのに、私たちの前にはどれも止まってくれない。
やっと停まってくれたタクシーの運転手さんに
「誰も停まってくれなかったんですぅ」と話すと「女性客は長距離乗らないから、乗せたくない運転手が多いんだよ」との話で憤慨した。
あの頃はバブルだったから。
タクシーも強気だったらしい。
で、ソウルの真夜中である。
そんな思い出に浸ってる場合じゃない。
何としてもタクシーを止めなければ!
半ば悲しくなりながら、もう1台、手を挙げて走りよる。
空車のようだ「しんちょん!!」と叫んでみる。
「のれ」と手振りする初老の運転手さん。
「やった!!」これで帰れる~~~。
助手席に乗る。
どうして助手席に乗ったか説明すると・・・、
以前街で見かけた光景で、女性一人客はよく助手席に乗っていたようだったから。でも、そういう習慣があるのかは、ほんとのところはよく分からない。よく分からないけど、この後相乗りで酔っ払いとか乗ってきたら嫌だから、この場合はやっぱり助手席だ。
走り出してから改めて行き先を告げる。
「シンチョン」。
発音の仕方で私が韓国人でないことはばればれかもしれない。
真夜中だし、一人だし、用心にこしたことはないと思って極力黙っていた。
クールにしていた方がより安心できるような気がしたから。
しばらく走ると、「永登浦!」と叫んだおじさんが乗り込んできた。
同じ方向なのだろう。
おじさんは運転手さんといろいろ話している。
どうやら電車が無くなってまいったよ。
という様な事を話してるらしい。
運転手さんも、いい感じの人らしいが、私は言葉がよく分からないので会話には加わらない。
そうこうするうちに永登浦に着いたらしい。
おじさんが降りていった。
運転手さんは今度は私に話し掛けてくる。
「外国人ですから、韓国語はあまり話せません」
(あえて日本人とは言わなかった。まだちょっと警戒していた)
と言うと、
「ああ。そうでしたか。韓国人かと思ったけど、しゃべらないからおかしいと思ったんですよ。韓国人と日本人は似ているから区別できない。中国人なら直ぐ分かるけどね。」
とか何とか言ってた。と思う。
運転手さんは愛想がよく片言の日本語もしゃべってくれたりした。
私の緊張も少しほぐれてきた。
「行き先は新村でいいんですよね。どのあたりまでですか?」
「新村駅前でお願いします」
「新村には国鉄と地下鉄2つ駅があるけどどちらですか?」
「あ、地下鉄です」
そして私の「しんちょん」の発音がおかしかったらしく、(この韓国語は結構難しいのです。)正しい発音を教えてくれて、何度も練習させられた。
でも運転手さんの発音と自分の発音のどこが違うのかすら分からなかった・・・。
しばらくすると、若いお兄さんが3人乗り込んで来た。
ほどなくして、新村のロータリーに着いた。
お兄さんたちを残し降りる。
無事ついてよかった。
それにいい運転手さんでよかった。
韓国一人旅で寂しくなったら、タクシーに乗って運転手さんとおしゃべりすればいいな、とまで思うほどだった。
調子こいてます。
12時半をまわってたけれど、新村はまだまだ人通りも多く、明るかった。
なんだかほっとして旅館に帰ってみると、ラブホテルと化していた・・・・・。
あらあら、平和だなあ。
微笑ましくなって、その夜はぐっすり眠れた。