「この本を書くことができたはのは、自分にとって本当に良かったこと」
と著者自らがどこかで話していた本。
読了。
科学史概略(結構なボリューム)から仏教に話が及ぶ。
科学者と釈尊への「ラブレター」だとあとがきに書かれている。(この本を書くのに3か月かけたそうだがその期間が恋愛期間だったのだとか^^)
文中に何度となく著者の科学者への憧れが表出してくる。
そんなところに人間くさい佐々木先生を発見して嬉しくなる。
が、科学史概説の部分は私には難しかった。
万有引力、
相対性理論、
量子論…。
進化論はすこしわかったけど、数学史に至ってはまだチンプンカンプン。
何度も読み返す必要がありそうだ。
仏教については「釈迦の仏教」と「大乗仏教」について、それぞれ一章ずつ割いている。大乗仏教についてはかなりぶっちゃけた書きっぷりで痛快だった。
2006年の本なので先生もまだお若いのだ。
個体特性:寒さに弱い に大いに親近感。
釈迦の仏教と大乗仏教がそれぞれ優劣つけがたい(そもそもどちらが優れているなどという比較の対象にはならない)という説明に、「パターチャーラーの物語」が使われていた。この話、知らなかったけど、すごく納得だった。
釈迦の仏教と大乗仏教とは、それぞれ必要な人がいるというのは先生が色んな所で語っていることだけど、今までで一番良くわかった。
全てを失い、悲しみのどん底で物狂いのようになっていたパターチャーラーを釈迦が救い、彼女は出家して安寧を得た。
しかし・・・と先生は言う。
「もし、パターチャーラーの子供の一人が生き残っていたら?」
家も夫も両親も子供も失って悲しみのどん底にいることは変わりがないけど、一人残った子どもを育てなくてはならないなら、出家はできない。釈迦の仏教では救うことができない。彼女は在家のままこの悲しみ苦しみと対峙していかなければならない。大乗仏教の出番だ。
と、こういう話。
私はまだどちらも必要としてないから、宗教的に仏教を信じる段階ではないけど、仏教2500年の歴史には大いに興味がある。
「犀の角たち」が2013年に文庫になった。
たぶん文庫版の加筆もあるだろうから、買うならこちらかな。
アマゾンのレビュー見てると、佐々木閑先生を嫌いな人がいるんだな~と思う。なんかものすごい長文で否定してる人いるけど(レビュー欄で)なんなんだ?あの情熱は?