宮地神仙道

「邪しき道に惑うなく わが墾道を直登双手
または 水位先生の御膝にかけて祈り奉れ。つとめよや。」(清水宗徳)

問いかけの旅

2007年02月21日 | Weblog
漫画家の浦沢直樹氏の作品の一つに、
「モンスター」という漫画があります。

冒頭から命の重みの違いという衝撃的なテーマを
突きつける構成となっており、西ドイツのアイスラー
記念病院の天才脳外科医のDr.テンマが急患の
トルコ人労働者の手術の準備に取り掛かっていた所、
院長命令で後に運ばれた有名人の緊急手術へ不本意
ながら回されるという場面から始まります。

その結果労働者は死んで、有名なオペラ歌手は
助かります。
その成り行きに疑問を抱きながら歩いていると、
トルコ人女性と子供が冷たい視線でDr.テンマを
見ているのに気づきます。

「あんた、Dr.テンマ。」
「はい、何か?…あなた、たしか先日ケガで運び
込まれたトルコの…」
「亭主を帰してよ。」
「はい?」
「ウチの主人を返してよ!あの時ウチの主人の方が、
早くかつぎこまれたんだ!!
あんなオペラ歌手なんかより先に運び込まれたんだ!!
なのに後回しにしたんだ――!!
あんた、この病院で一番腕の立つ医者だそうじゃないか!!
なんで先に運び込まれたウチの亭主を、あんたが手術
しなかったんだよ!!」

茫然自失となり、頭の中で女性の言葉が響き続ける中、
テンマの婚約者である院長の娘、エヴァは言います。
「人の命は平等じゃないのよ。」

その後頭を撃たれた少年と、その側らで発見された
外傷はないがショックで正気を失っている少年の
双子の妹が、病院に運び込まれて来ました。

少年の手術の準備をしているDr.テンマの元へ、後から
運ばれてくる有力者の手術優先の院長命令が再び来、
それでも先に運び込まれた少年を救ったDr.テンマは、
院長の手によって出世の道から外されます。

Dr.テンマは自らの将来を棒に振って救った昏酔状態の
少年の側らで、「あんな奴、死んだ方がマシだ!!」
と叫びます。

命は平等と言われながら、一方で社会の中にある、暗黙の
命の優先順位というものの存在を、この漫画の中では
端的に表現されています。
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