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画像の方は、少女雑誌「マイバースデイ」の妖精シリーズの
初期に紹介された西洋の幸運を招くタリズマンで、これらの
シンボルをコピーしてお守りにするように書かれていました。
以下、西洋に伝わる妖精の物語です。
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【コルジアンの領主】
コルジアンの領主は、エイルシャーでは代々コーの領主さまと呼ばれて、
情け深い温かい人柄である事が有名でした。
御領主さまは、毎日のように馬で領地を見回りに行くのが日課でしたから、
どの日も馬で領地を見回りに行き、住民達に優しい言葉をかける事を
忘れませんでした。
さて、領地の見回りが終わり、お城の近くまで帰ってくると、城の門の近くに、
木の大ジョッキを持った小さな男の子が立っているのが目に入りました。
男の子は、粗末な服を身にまとい、手足はまるで木の枝のように細く、貧弱な
体つきをしていましたが、目だけはキラキラと青く澄みわたり、目の中に
まるで湖の精を宿しているようでした。
コーの領主さまは、こんな所に小さな男の子が立っているのを不思議に思い、
「お前はどうしてここにいるのか?」
と馬の上から尋ねました。
すると男の子は、「年をとった病気のお母さんのために、飲み物を分けて
下さい。」
と澄んだ声で、御領主さまに頼みました。
御領主さまはその男の子を知りませんでしたが、心の優しい人だったので、
「執事の所に行って、ジョッキを一杯にしてくれるように言いなさい。」
とその男の子に言い、病気の母親の為に、遠い道をお城まで訪ねて来た
母親思いの気持ちをねぎらう事も忘れませんでした。
男の子は御領主さまの言葉を聞くと、早速執事の所に行き、木の大ジョッキを
差し出しました。
執事は口を開けてあって、まだ中身が半分ほど残っている樽が手元にあったので、
その栓をひねり、木のジョッキに飲み物を満たそうとしました。
ところが、ブドウ酒はどんどん、どんどん、ジョッキに流れるのに、ジョッキは
いつまでも半分までしか一杯になりません。
執事は心の中で、こんな小さな子供の母親なら、半分もあれば十分なのに……
と思いましたが、男の子は一杯になるまで帰ろうとしません。
そして、「御領主は、口元まで一杯にしてくれるって言ったんだ。
さあ、一杯にしておくれ。」
と、あの澄んだ声で執事に詰め寄りました。
ホトホト困り、執事は領主さまの所まで、どうしたらいいのか尋ねに行きました。
御領主さまは、「新しい樽を開けるが良い。」と言い、「わしはその子供に
入れ物を一杯にしてやると約束をしたのだ。
約束を破るわけにはいかん。」
と執事に言い渡しました。
執事は男の子の所に戻ると二つ目の樽を開け、木のジョッキに注ぎ込もうと
しました。
すると、どうでしょう。
木のジョッキはそこからただ一滴注いだだけで、一杯になったのです。
そして男の子は何度もお礼を言うと、まるでフッと消えるように、見えなく
なってしまいました。
それから何年かの後、コーの領主さまは領地争いの戦争に出陣し、囚われの人と
なってしまいました。
敵方の領主は残忍極まりない人で、コーの御領主に死刑を宣告し、領主の家族も
一人残らず探し出し、火あぶりにすると、悪魔のような言葉を投げつけて
きたのです。
しかし囚われ人のコーの御領主には、どうする事も出来ません。
そんな風にしているうちに……とうとう処刑の前の夜がやってきました。
領主は深い守りの堅い地下牢に、助かる望みもなく、横たわっていました。
すると突然、扉が勢いよく開き、サッと強い光が差し込んできたのです。
驚いた領主は顔を上げようとしましたが、強い光のために目が眩んで、何が
起こったのかを確認する事も出来ません。
でも暫くすると、ハッキリと聞き取れる声で、こう言うのが聞こえました。
「レアード・オ・コー(コーの領主よ、)起きて出よ!」
領主は立ち上がると、声の方へ近づいて行きました。
すると一年前、コルジアンの城の前で、ジョッキ一杯のブドウ酒を与えた、
あのちっちゃな男の子が立っているではありませんか。
ちっちゃな男の子は、領主の手を取ると、まるで足に羽が生えているかのような
速さで、誰にも見咎められずに、牢獄の外に出しました。
外に出ると、そのちっちゃな男の子は、領主を自分の肩に乗せました。
……と思う間に、領主は自分のお城の前立っていたのでした。
「いい事してくれたお返しだよ。母さんに親切だったお礼だよ。」
ちっちゃな男の子はそう言うと、すうっと見えなくなり、コーの御領主はもう
二度と再び、その男の子の姿を見る事が出来ませんでした。
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